テラーノベル
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帰り道、花斗から今日あったことを聞きながら家に帰った。
「それでね、ぼく、オムツもっていってあげたんだよ!」
「それは、きっと先生も助かったね」
だが、花斗の顔はなぜか浮かない。
「あかちゃんってかわいい。ぼくももっと、せんせいみたいに、おせわできたらいいのに」
言いながら、花斗は唇を尖らせた。
「大丈夫だよ、保育士さんになったら、たっくさんお世話してあげられるよ」
「そうかな……?」
花斗がこちらを見上げる。
「保育士さんって、素晴らしいお仕事だよ。ママも、花斗が小さい時にたっくさん助けてもらった。ママひとりじゃ乗り越えられなかったこともたくさんある」
言いながら、懐かしい気持ちになる。
シングルマザーというだけで、惨めだった。
片親というだけで浴びる、周りからの偏見の視線。いつもそばにいてくれた花斗、忘れられなかった壱月。
何度もつらくなって、何度も悲しくなって。
その度に、姉をはじめ園の先生方には、本当にお世話になったな、と改めて思う。
「優しい花斗は、きっとすてきな保育士さんになれるね」
そう言うと、花斗がニコリと笑う。
その頬は、ほんのり赤く染まっている。
「じゃあ、ぼくはえもじょうずになって、おりがみもじょうずになって、それからえほんもじょうずによめるようにならなきゃ!」
急にやる気スイッチの入った花斗に、ふふっと笑みがもれる。
「それから、あかちゃんのおむつもかえられるようになって、いろんなあそびもしってたほうがいいね。それから――」
まだあるのか、と花斗の言葉にじっくり耳を傾ける。
「ピアノもひけるようにならないと!」
「ピアノ、かぁ……」
姉はピアノが上手で、よくお帰りの歌を弾いたりしているらしい。
私自身も、高校まではピアノを習っていたなと思い出す。
「ピアノ、習いたい?」
「うん、ならいたい!」
花斗が即答する。
それに複雑な笑みを浮かべながら、私は壱月が帰ってきたら話してみようと思った。
コメント
1件
うわ、このエピソード、めっちゃ心があったかくなったわ……。花斗くんが「オムツ持っていってあげた」ってエピソードから、保育士さんになりたいって真剣に考えてるの、尊すぎる。シングルマザーとしての過去のつらさと、園の先生たちへの感謝がリアルで刺さった。ピアノの話も、母親としての愛情がにじんでて泣ける。朝永ゆうりさんのこういう日常の温度感、めちゃくちゃ好きだわ。次も楽しみにしてる🔥