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海人side
「……て訳でさぁ!!ぜーんぜん気づいてくれたいのぉ!」
次の日の昼休み。
俺はジンと玄樹くんと一緒に大学名物のKP弁当を屋上で頬張りながら昨日のことを話していた。
「だって、紫耀じゃん。単刀直入に言わない海人が半分悪いよね。」
「それはそうですよ。海人さん。もぐもぐ。紫耀さんにはもっとガツンと言ってあげないと!もぐもぐ。」
そう言って玄樹くんは最後まで楽しみに残していたミニハンバーグをパクリと食べる。
ええ!いやだよぉ〜!そんなのぉ!
「じゃないと紫耀はそんな遠回しじゃあ、気づかないし……俺らの場合って二パターンあるからわかんないんだよ。」
んんんんんん……
でもそんなの帰り道とか言えないよ……
「だったら……あ!」
ジンは何か思いついたようだった。
「え、なになに!?」
「そーだよ、何思いついたの?」
俺と玄樹はジンにぐいぐいと寄る。
ジンはふふっ。と笑ってから、
「バレンタインで本命逆チョコだ!」
とドヤ顔で言った。
……誰でも考えるよ。それ。
俺と玄樹くんはガックリと肩を下ろす。
ホント…
「破廉恥侍。」
玄樹くんがボソッと言った言葉をジンはもちろん聞いていた。
「玄樹?今なんて…」
「ジンはいつもカッコいいなぁ〜って!!ね!海人さん!」
急にふられ、俺はつい「え!うん!そうだね!」と苦笑い。
「んじゃあ、バレンタインの前日、俺の家てチョコ作るぞ!」
相談する人、間違ったかもしれない…
紫耀side
昼休みにたまたま遭遇した廉と岸くんと一緒に学食でKP弁当を食べることにした。
「実は俺さ、海人のこと好きなんだよね。」
弁当のハンバーグの下にあるスパゲッティを何度なくくるくるかき混ぜながら俺が言うと、二人とも驚いて「えええー!!!」と周りの迷惑にならないぐらいの声で言った。
「え、いや、あの、え。」と廉はオドオド。岸くんは意味不明に弁当を高速で食べている。
誰と争っているんだ。君は。
「えーっといつから……なん?」オドオドしながら廉が聞く。
俺はクリスマスからと答えた。
「んー。そうやなぁ。次チャンスとしてありそうなのはバレンタインやなぁ。本命チョコあげたら?逆チョコみたいな感じで!」
逆チョコで本命ってそれアリなの!?……あ、そもそも逆チョコ自体がアリなんだからアリか。
「もちろん、手作りな。そっちの方が気持ちこもってて美味しいんやで!俺も毎日岸さんの料理食べて愛受け取っとるもん!」と廉は岸さんの肩を揺さぶる。
弁当最速食べ選手権(セルフ)をやってきた岸くんは「ングッ!」と吐き出すのを頑張って堪えている。
…家でもいちゃいちゃしてるのかよ、羨ましい。
「あ、手作りでも俺作り方知らんから岸さんに教えてもらい〜。岸さんはケーキもなんでも作れちゃうんやで!俺は試食係や!」とやる気満々。どうやら廉は家で岸くん特性ケーキでも食べたことがあるらしい。もはや岸くん、廉の家のシェフじゃん。
「うん、頑張ってみよう!ね!岸くん!」
岸くんはなにも聞いていなかったようで「へ?何?」と聞いてきた。
……まあ、なんとかなるか。
二月十三日。
バレンタインイブ!……そんなものはこの世に存在しないけど。
放課後、俺はさっそく廉、岸くんの家のキッチンを借りて海人にあげるチョコを作り始めた。
ただのチョコだとつまらないから今回はハート型のチョコクッキー。
ちなみに廉は俺たちが作り始める前に「岸さんも作ってなー。味見として俺、岸さんの分食べるねん。」とちゃっかりチョコをもらおうとしていたのだけど……とうの岸くんはそう言うことに気づかず、一言で了解していた。……まあ、いっか。公開いちゃいちゃが見れるってことで。
(レシピは作者の記憶で書いていますので実際に作りたい場合はネットなどで調べてください……)
「んじゃあ初めにチョコを溶かしましょう〜!」
二人分のチョコを溶かす。ちなみに廉はそのようすその様子を後ろからゲームをしながら見守っていた。
「きっさぁん。あとで余ったやつでチョコも作ってー。」と急に追加注文も入れた。たしかにチョコは余ってるけど。岸さんは「りょ〜」と即答。
岸くんがガチの料理好きなのか、廉のむちゃぶりがホントに通ってるのか。よくわからないカップルだなぁ。
そう話しているうちにチョコが全て溶けきった。俺はそれをチョコを溶かしている間に岸くんが混ぜておいてくれた生地の元に入れる。
岸くんが小麦粉なんかを混ぜてチョコ味の生地に仕立て上げた。
「後は、生地を伸ばして型抜きして、焼くだけだよ。」
俺は了解と板の上に小麦粉をまぶし、その上に生地を置き、綿棒で伸ばしていく。
均等に伸ばさないといけないのかまた大変な作業だ。岸くんと交代交代で伸ばしていき、ちょうど良い厚さになった。
次は型抜き。出来るだけたくさん作れるように出来るだけ間隔は狭くして切り抜いていく。もう一度こねて同じぐらいの厚さになるまで伸ばせばまたたくさんできる。
本当に余った部分はちぎって俺らの味見ようにした。あとは焼くだけ。オーブンで生地を焼いている間、俺らはゲームをしていた。廉の全勝に終わったけど。
廉、強いんだよなぁ。さすがゲーマー。
ピーピー
生地が焼けた。
俺はミトンを使い、火傷をしないように鉄板をオーブンから出す。いい感じに焼けていた。
「じゃあ、あとは包装して……」
数分後。
「「かんせーい!!」」
二人分のクッキー……て廉の分も包装しちゃってるんですけど!?
「はい。廉。」
さっそく岸さんが廉にチョコクッキーを渡す。
「廉…欲しかったんだよね?……って言いたいところなんだけど…ちょっと待ってて。」と岸くんは冷蔵庫の中をゴソゴソと何かを探す。取り出したのはチョコカップケーキ。しかも手作り……まさか!
「昨日、廉が寝た後こっそり作ったんだ。ちょっと早いけど、本命チョコ!」
廉は「岸さぁん!!大好きいいい」とケーキとクッキーを割らないように気をつけながら岸くんに抱きついた。めっちゃ喜んでる。
公開いちゃいちゃ、ありがとうございます。
海人side
その頃。
俺はジンの家で玄樹とジンに教えてもらいながらチョコを作っていた、あ、可愛いアルミカップに入れるだけのタイプね。
チョコをカップに流し込み、チョコスプレーなんかを入れて飾り付けをし、それを浅いトレーに入れて冷蔵庫で冷やせば、初心者にはうってつけの定番チョコの完成だ。
「じゃー味見ね。玄樹、はい。本命チョコだよ〜!」
「ありがと〜!じゃあジンにもこれあげるぅ〜!」
二人は俺の前で公開いちゃいちゃしている。
くううう。紫耀とやってみたいいい!!
玄樹とジンがもらったチョコを食べる。
「美味しい〜!さすがジン!」
「ホント?ありがと〜!」
………いや、それ作ったの俺なんですけど。
とりあえず、味は大丈夫そうだね。
俺はチョコを何個か袋に入れ、丁寧に包装していく。
よし!明日、頑張るぞっ!!
と気合を入れたその日の夜。
めずらしく紫耀からメールが来た。
『明日の放課後、学校の屋上来れる?』とのことだった。なんで急に呼び出しなんて……??まあ、呼ぶ手間が省けて良かった。
俺はメールに『大丈夫だよ!』と返した。
紫耀side
次の日。
俺はリュックの中で一番割れなそうなところにハンカチ二枚で丁寧に袋ごと包んだクッキーを入れ、いつも通り学校に登校した。ハンカチ二枚も使って耐震構造にしたんだから、余程なことがない限り割れないだろうなー。
その日の授業を右から左に聞き流し、放課後を待つ。俺は放課後になった瞬間、屋上に向かって走り出した。
屋上に着くともう海人がいた。俺はクッキーを海人に見られない位置に隠し、早すぎーと軽く会話をする。
……しばらくの沈黙。
あーどうしよ。心臓がバクバクいってる。でも言わなくちゃいけない。俺は口を開いた。
「「俺と、付き合ってくださいっ!!」」
テレビでよく見る本命チョコを渡すシーンと同じように俺は告白した……けど同時に海人からも同じセリフが。
どうゆうこと……??
顔を上げると海人も俺に本命チョコ……??を俺に渡してきていた。
……え????
海人side
紫耀、今…『俺と付き合ってください』って言った……??
え、どうゆうこと、この状況……。
そう思っていた時。屋上のドアが開いた。
出てきたのは廉とジン。あとから玄樹と岸くんも来た。
「なーんや。俺らがいないとダメやと思ったったのに〜。」
廉が少し悔しそうな目でいう。
え、どうゆうこと……??
「ほら二人とも返事言わないとダメでしょ?」
ジンに言われてやっと何が起きているのか分かった。
俺……紫耀に告白されたんだ。
何年も続いた俺の片思いが遂に終わりを告げた。
自然と俺の目から涙がこぼれる。
「しょおおおお!!!」
俺は無意識に紫耀に抱きついていた。
紫耀は「おい!ちょっ!びっくりするからやめろってっ!!」とびっくりしている。
でもそんなの関係ない。
約半年前のあの悲劇が嘘のように思えるくらい、俺は今人生で一番幸せだった。
気がつけば紫耀に頭を撫でられていた。
「ごめんな、全然、海人の気持ちに気づかなくて。俺も……正直、怖かったんだ。変な奴って思われるかなって。」
「しょお……」
「ずっと……自分の本当の気持ちに嘘ついてた。ホントごめん、ホント鈍感で。」
「紫耀……鈍感すぎっ。」
よく見たら紫耀は涙目になっていた。
廉とジン、玄樹それから岸くんは黙って俺らの会話を聞いていた。
俺は涙を拭いた。
「……紫耀、大好き。」
紫耀はニコッと笑った。
「俺も大好きだよ。海人。」