バイトが終わった帰り道、私は奏斗と並んで歩いていた。
「今日もお疲れ。」
「先輩も、お疲れさまでした。」
大学生の先輩と高校1年の私。年上だからって気取らないし、いつも落ち着いていて優しい人。バイトを始めたばかりの頃、私がミスばかりして落ち込んでいたときも、「誰でも最初はそんなもんだよ」って笑ってくれた。その言葉が、すごく救いになった。
私は、いつから先輩のことを意識し始めたんだろう。
そんなことを考えていたら、不意に先輩が足を止めた。
「美桜。」
名前を呼ばれて、ドキッとする。
「えっ…?な、なんですか?」
「ちょっと、話したいことがある。」
そう言うと、先輩は少し真剣な表情になった。私はなんとなく、これから言われることを察して、心臓がドキドキし始めた。
「俺、ずっと前から美桜のことが好きだった。」
「――え?」
耳を疑った。今、なんて?
「…好き、ですか?」
「うん。美桜は優しくて、一生懸命で、話してると落ち着くし…。気づいたら、君のことばかり考えるようになってた。」
私の頭は真っ白になった。
先輩が、私のことを?
「……。」
急すぎて、言葉が出てこない。まさか、こんな風に告白されるなんて、全然思ってなかった。嬉しい、はずなのに、なんだか胸がいっぱいになって、何を言ったらいいのかわからない。
「急に言ってごめん。でも、美桜がバイトを頑張ってる姿を見て、気持ちを伝えたくなったんだ。」
先輩は静かに言葉を続ける。
「すぐに答えを出さなくてもいい。美桜の気持ちが聞きたい。」
私は、俯いて手をぎゅっと握りしめた。
「……私、こんな風に告白されるなんて思ってなくて…。本当にびっくりしてて……。」
「そっか。」
「だから、その……ちょっと、考えさせてもらってもいいですか?」
そう言うのがやっとだった。
先輩は優しく微笑んで、「もちろん。」と答えた。
家に帰ると、リビングでは萌音お姉ちゃんがくつろいでいて、ありさと大和が何か言い合っていた。
「おかえり、美桜。なんか顔赤くない?」
「え!?そ、そんなことないよ!」
「怪しい~。もしかして、バイト先で何かあった?」
萌音お姉ちゃんの勘の良さに、私は余計に慌てる。
「な、なんでもないよ!ちょっと疲れただけ!」
慌てて自分の部屋に逃げ込むと、ベッドに倒れ込んだ。
(どうしよう…。私、本当に奏斗のこと……。)
考えれば考えるほど、わからなくなる。
でも、ひとつだけわかることがある。
先輩のことを思うと、胸がドキドキする。
…この気持ち、ちゃんと整理しないと。
そう思いながら、私はそっと目を閉じた。
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