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5 - if・もし国王/みぞれが死んだら徒花は…

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19

2025年04月12日

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死ネタに動かされちゃった………


if・もし国王/みぞれが死んだら徒花は…












国王が床に伏せ、そのまま__。

そう、告げられた時の衝撃は味わった事の無いものだった。

鉄パイプ、いや、それよりもずうっと頑丈で硬いもので頭を殴られた様な衝撃がやまびこのように脳髄の深くまで広がって、崩れ落ちる事さえ出来なかった。

わかっていた、わかっていた。

覚悟はしていたつもりだった。

もう、長くは無いと理解して、それでも生きてる間でも最大限尽くせる様にしてきたはずだった。

なんとか部屋に戻って、大きく空いた何かを埋めるようにとにかく仕事をした。

一つ、紙の山を片付ければまた情報部へ行って、紙の山を一つ貰う。

それを繰り返し行っても、日付は二つか三つ進むくらいだった。

体は気怠く、瞼は重く、頭はズキズキと痛む。諭され、布団に寝かされたが一向に眠りにつく気配は無かった。

ある日、国王の部屋に行く機会が出来た。

ドアに手をかけた時、ふととある考えが過ぎった。もしかしたら、国王が床に伏せたのは単なる噂やデマで、ただの風邪かもしれない。この扉を開けたら、いつもの通り迎えてくれるかも__しれない。

あまりに夢を見すぎたこの考えを咎める脳味噌はとうに書類仕事に食われてしまったのだ。

だが、そう一抹の僅かな期待を込め扉を押し開けた。

そこに居たのは我が主君の王子_いや、現国王が、慣れない仕事を側近に教えてもらいながらたどたどしく行う光景があった。

机も椅子も観葉植物も景色も本もカーペットも何も、変わらない。

ただ変わったのはそこに居る者だけ。

大した挨拶もせず入った私を、側近は一度睨んだものの、面を上げると徒花という事に気付いたらしく、慌てて教える事に路線を戻した。

現国王は反対に、あまり恐れる事は無く、

柔らかく微笑んだ。

多分、それは国王の生前に、私とよく会って話していたからだと思う。

微笑まれた時、つい国王の笑みを思い出して、私は鼻の奥がツンと痛くなって、眼から涙が溢れ出す感覚がした。

私は国王が死んでから初めて、嗚咽を漏らした。







みぞれが戦死した。

みぞれはとある戦いで戦前に立っていた。当初は特に問題は無かった。

ただ段々と戦争は激化、互いに引き所を見落としてしまいヤケになった隊員の自爆行為も等々見られ始めた。

という情報が入ってきたのを、仕事をしながら適当に流しているラジオで聞いた。

ある機会で街を出歩く事になり、街に繰り出したが景観は然程変わりもなく、強いて言えば客引きの声が弱まったくらいだった。

ふと空を見れば我が国の航空機の青が太陽の光に晒されキラキラと反射させている。

用事も済ませ、帰る時。

死者名簿が目に入り、見る事にした。

ペラペラと捲ると、見覚えのない名前もある名前もそれぞれ載っていたが、大して関わりのない人ばかりだったから

『へぇ、そうなんだ。』

くらいの気持ちだった。

流し見していると、隣から職員が名簿に新しく名前を書き足していて、離れた後に見ると、それはそれは見覚えのある名前が、まだ乾ききっていないツヤツヤとしたインクで記されていた。


「山野神 みぞれ/戦死/××××年○月▫日」


戦死?アイツが?

とにかく、その事を事実かどうか確かめたくて、走って本部に帰った。

でもその間、夢に居るようなどこか足がつかない様なフワフワとした感覚に居て、多分夢だろうな、何かの間違いだろうか、それが本当だとはおよそ検討がつかなかった。

帰って急いでみぞれの事を調べた。もしかしたら1番手が早く動いたのはこのときだったかもしれない。

しかし何処を調べても死んだ、という情報しか出てこず、ラジオの戦死者報告のコーナーにもみぞれの名前は出てきた。

ああ、本当に死んだのか。

そう脳を納得させた時、心の喪失感が襲った。いない、みぞれは、いない。もう、会えない。そう思えば思うほど冷たい汗がジワリと吹き出してきて、手汗がやけにベタベタしてみぞれから貰った万年筆が滑って、落とした。

落ちた時、今までならすぐに取って仕事を再開するのに、そうする気にはならなくて

自分の背中よりも大きい、背もたれに寄りかかった。全ての気力が無かったかのように、手足を動かすのすら億劫に思えた。

近くの同僚にしばらく休む事を伝えて自室に戻った。落ち着かせる為に、買い溜めていた本を適当にとって広げたが、話には入り込めず、少し入り込めたとしてもサイレンがけたたましく鳴って、みぞれの死を彷彿とさせた。本を読むのさえ疲れてきて、ベッドに転がった時も息が余計苦しくなった気がして耐えられなかった。

部屋から出るのすらもう嫌になって、ただのお節介で置いていかれる水とサプリメント、あとたまの団子で命を粛々と繋いでいた。

こんなに辛いなら誰かに相談しよう、そうだ、みぞれ、は、………。

名簿を見てから今まで、グダグダと引きずってきた希望はもう少しのそよ風で消えてしまいそうなほど弱々しかった。

ふいにみぞれと写った写真が戸棚から落ちてきた。その中のみぞれは戦死とは無縁に思えるほど傷一つなく、屈託もなくわらっている。一緒に写った私は今よりも随分幼く、多分…みぞれに沢山、相談をしていた時期だと思う。あの時は、素直に頼れたのに今ではもう、どこか恥ずかしくて頼れなかった。みぞれといる時は気が抜けて、どこか安心できた。国王陛下にはしっかりしなきゃ、と念があって頼れない、私が今まで気を許せたのは…まだ、みぞれの前だけなのに。

「…私を止められるのは、お前だけなのに」

写真に水滴が落ちた。


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コメント

5

ユーザー

ダブルで殴られました(爆散) ねぇ…尊いけど重いって…

ユーザー

あっ(爆散) 可愛いね……可愛いね……

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