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「但し、条件がある」
レナードの意外な言葉にオリヴィアやアンナリーナは目を見開いた。
「妃教育を10日、耐えることが出来たら……正式にアンナリーナ嬢を僕の婚約者としよう」
「あら、そんな事で宜んですか?」
アンナリーナは余裕そうに、くすりと笑う。
「まあ、アンナリーナなら余裕ですわ」
この親にしてこの子ありとは良くいったもので、オリヴィアも余裕の表情で快諾した。
あの後の事はよく覚えていない。どうやって屋敷に帰ったのかすら、分からない。気付いたら、ベッドの上にいた。
忘れなくちゃ、忘れなくちゃ……大丈夫、私は大丈夫、だ。
いや、そもそも忘れるも何も、本当は舞踏会などに行ってなくてアレは全て夢だったのかも知れない。レナードがこの部屋を訪れた時からきっと、長い夢でも見ていた……ただ、それだけ…………。
ヴィオラは込み上げる熱いものを耐えた。泣きたくない。泣いたら、虚しいだけだ。
レナード、様……。
結局、レナードも家族と同じだった。歩く事の出来ない自分をいとも簡単に見捨てた。どうせ、自分はレナードにとってはタダの暇つぶしに過ぎなかったのだ。
「……」
ヴィオラは、レナードから贈られた髪飾りを手にすると、手が震えた。そして唇をキツく噛む。
「嘘、吐き……」
我慢していた言葉が洩れると共に涙が溢れ、髪留めを濡らした。
「好きだって、言ったのにっ……」
それからヴィオラはふと舞踏会の事を思い出しては、毎日の様に枕に顔を埋め涙を流した。
どれくらい経っただろうか。分からない。
そんな時、不意に部屋の扉が開いた。デラが戻って来たのだろう。ヴィオラは手で涙を拭うと顔を上げた。
「アンナリーナ……どうして……」
だが扉を開けたのはデラではなく、妹のアンナリーナだった。意外過ぎる人物の登場にヴィオラは驚き固まってしまう。
「……お姉様」
ヴィオラはそう呼ばれるとハッとし、我に帰る。あれからまだ数日しか経っていない筈だ。何故アンナリーナが此処に。妃教育はどうしたのだろうか……。
「おかしいわ……こんなの、あり得ない。私じゃない。違う。私じゃない」
「アンナ、リーナ?」
アンナリーナは、独り言を呟き続けている。まるで、壊れた人形の様に同じ事を何度も何度も……。
「お姉様の所為よ……こんな筈じゃなかった。こんなの!現実なんかじゃないっ。これは、夢なのよっ‼︎そうじゃなきゃおかしい‼︎夢よ、夢、夢、夢……」
意味の分からない奇声の様な声を上げるアンナリーナに、ヴィオラは息を呑んだ。よく見ると、アンナリーナは上から下までボロボロだった。一体何があったというのか……。
「私だけこんなの、赦さないっ‼︎絶対っ赦さないんだからっ‼︎‼︎‼︎」
アンナリーナは後ろ手に隠し持っていたナイフを、ヴィオラへと向けた。