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しろまるさん、最終話、読了しました🌙 ライとマナが辿り着いた静かな春の景色、涙が出るほど綺麗でした。 「幸せだと思っていた」って、ああいう風に言える関係って尊い……。 ロウの再登場も嬉しかったし、三人の食卓の空気に胸がギュッとなりました。 重い過去を抱えながら、それでも隣で生きていくことを選んだ二人に、ただただ「おかえり」って言いたくなりました。お疲れ様でした、素敵な終わり方をありがとうございます🥀🤍
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春の風が、柔らかく畑を揺らしていた。
小さな村。
山と川に囲まれた、隣国の端の集落。
そこで二人は暮らしていた。
「ライー! そっち苗足りてるかー?」
畑の向こうから、明るい声が飛んでくる。
ライは鍬を止め、顔を上げた。
「ああ、問題ない」
そう返しながらも、口元は少し緩んでいる。
マナは泥だらけの手で笑った。
あれから三年。
逃亡の日々は終わり、二人はこの村へ流れ着いた。
最初は何もなかった。
金も、地位も、頼れる者も。
けれど村人たちは、余所者の二人を少しずつ受け入れてくれた。
マナは畑仕事を手伝い、ライは読み書きや計算を教えるようになった。
最初は鍬すらまともに持てなかったライも、今では畑に立つ姿が随分板についている。
「休憩するか」
ライが額の汗を拭う。
マナは大きく伸びをした。
「あー疲れた!」
そのまま草の上へ倒れ込む。
子どもみたいな姿に、ライは呆れたように笑った。
「行儀が悪い」
「誰も見てねぇからいいじゃん」
「見ている」
声がして、二人は同時に振り返る。
村の子どもたちがこちらを見て笑っていた。
「またマナ兄ちゃん寝転がってる!」
「汚ぇー!」
「うるせぇ!」
マナが笑いながら小石を投げる真似をすると、子どもたちはきゃあきゃあと逃げていく。
その光景を見ながら、ライは静かに目を細めた。
平和だった。
あまりにも。
昔の自分なら、想像もしなかった暮らし。
豪華な屋敷もない。
家臣もいない。
綺麗な着物もない。
あるのは小さな家と、畑と。
隣で笑う、たった一人。
それだけだった。
「……何見てんの」
マナが不思議そうに覗き込む。
ライは少し迷ってから答えた。
「いや」
穏やかに笑う。
「幸せだと思っていた」
マナが目を丸くする。
それから顔を赤くした。
「急にそういうこと言うなよ……!」
「本当のことだ」
「うわ、真顔で言うし……」
耳まで赤くなりながら俯くマナに、ライは小さく笑った。
その時だった。
「——おーい」
聞き覚えのある声がした。
二人は同時に顔を上げる。
村の入口。
旅装束の男が、片手を上げて立っていた。
「ロウ!!」
マナが勢いよく立ち上がる。
小柳ロウは以前より少しだけ髪が伸び、相変わらず飄々と笑っていた。
「ちゃんと生き延びてんじゃん」
「お前こそ!」
マナが駆け寄る。
ライも驚いたように目を見開いていた。
ロウは二人を見比べる。
畑仕事の服。
日に焼けた肌。
穏やかな表情。
逃げていた頃とはまるで違う。
「……いい顔してる」
ぽつりと呟く。
ライは静かに頭を下げた。
「あなたのおかげです」
「やめろ、堅い」
ロウは苦笑する。
「俺は勝手に助けただけ」
マナは嬉しそうに笑った。
「今日は泊まってくだろ!?」
「飯ある?」
「ある!」
「じゃあ泊まる」
相変わらずの軽いやり取り。
その空気が懐かしくて、マナは少し泣きそうになる。
夕暮れ。
小さな家に灯りがともる。
三人で囲む食卓。
笑い声。
何気ない時間。
失ったものは、きっと多い。
戻れないものもある。
けれど。
ライは窓の外を見た。
春風が花を揺らしている。
あの日、父は言った。
“——一人の男として生きてみせろ”
ライは静かに目を伏せる。
そして隣に座るマナの手を、そっと握った。
マナが笑う。
その笑顔を見て、ライも小さく笑った。
名前も。
身分も。
もう必要なかった。
ただ、この先も隣で生きていけるなら。
それだけで、十分だった。