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「……大丈夫だ、なつ。」
いるまはそっとなつの肩を抱き寄せ、震える手を包み込んだ。
けれど、なつは首を横に振る。
「大丈夫じゃない……俺、もう……全部なくなっちゃえばいいのにって、思ったんだ……」
その言葉に、いるまの眉がきゅっと寄る。
「バカ言うな。お前がいなくなったら、俺が困る。」
「……ほんとに?」
涙で赤くなった目で、なつは疑うように見上げる。
「ほんとだ。なつがいないと、俺は毎日つまんねぇ。」
そう言って、いるまはなつの頭をくしゃっと撫でた。
「……やめろよ、子ども扱いすんな……」
口では反発しつつも、頬は少し赤い。
「子ども扱いじゃねぇよ。可愛いから撫でてんだよ。」
「か、可愛いとか言うな!」
「言う。めっちゃ可愛い。」
思わず耳まで真っ赤になったなつに、いるまは小さく笑った。
でもその手は離さない。
「なつ、俺から逃げんなよ。ちゃんと隣にいろ。」
そう言いながら、そっと指を絡めて手を握る。
なつの心臓が跳ねた。
「……いるま、近すぎ……」
「まだ震えてんだから、これくらいしてもいいだろ。」
ふてくされたように顔を背けるなつを、いるまはそのまま引き寄せる。
「俺だけは、お前を信じる。……だから、安心しろ。」
胸に響くその低い声に、なつはもう何も言えなくなっていた。
ただ、繋がれた手の温もりが——暗闇の中で唯一の光だった。