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フィーサを先頭に、迷うことなく行き止まりの無い水路をしばらく進んでいると大きな橋が待ち受けていた。
「おかしいなの!!」
ミルシェとサンフィアをしり目にフィーサが突然声を張り上げる。しかし、マイペースの二人は騒ぐフィーサの元に中々近付いていかない。
「そこの二人! 早く来るなの!! 早く早くなの!」
「――全く、やかましいわね。何なのかしら?」
「ふん、我を放置したくせにすぐに頼るとは。何事だ?」
ミルシェたちは面倒くさそうにしながらフィーサに近付いた。
「この橋はおかしいなの! ここを触って欲しいなの!!」
フィーサが立っている場所は何の変哲もない橋の中央付近。どういうわけかフィーサはそこで立ち止まっているようで、ミルシェたちに手招きをしている。
「全く、何でそんな何もない所で騒いでいるというの?」
「騒がしい奴め。何だというのだ?」
「見えないけどここにあるなの!」
「む? 透明の壁か?」
「……確かに壁があるわ。もしかしてここから先には進めないということかしら?」
フィーサに従い、二人は目の前に向かって渋々腕を伸ばす。すると、フィーサの言うとおり橋の継ぎ目にしか見えない所に壁があった。
「……これは幻では無いな。だとして、どうするつもりがある?」
「確かに幻とかでは無さそうね。あたしからは何とも言えないけど、あなたなら何とか出来るのでは?」
「色々試したなの。でもでも、全く攻撃が当たらないなの。どうしようもないなの……」
フィーサは魔法はもちろんのこと、剣の形状を自在に変えられる。それでも、見えない壁に対してはどうすることも出来ず途方に暮れているようだ。
「神剣である貴様が何も出来ないのならばここは引き返すしか無いだろう。時間の無駄を過ごすつもりなど、我には無い!」
「むむぅ、仕方が無いなの。悔しいけど来た道を戻るしか無いなの」
「あら? さっきそこにルティの姿が見えた気がするんだけれど気のせい?」
「ど、どこなの!?」
ミルシェの言葉にフィーサは慌てて振り向いた――ものの、すぐに落胆してしまった。
「……気のせいだったかしらね」
「小娘のくせにお騒がせするなんてムカムカするなの!! こうなったら、思いきりぶん回してやるなの! ミルシェとサンフィアは離れていて欲しいなの」
「足掻きでも何でもやってみるのはいいことだわ」
「ふん」
フィーサは見えない壁に向かって内在している魔力と物理攻撃力の全てをぶつけ、そのまま勢いよく風属性を付与して斬り込んだ。
「やったなの!! これで何かが起きるのは間違いないなの!」
「お、おい、貴様! 何をした? 床全体が揺れているぞ?」
「これはまずいことになるんじゃないかしら……。あなた、一体何を繰り出したの?」
「何って、風を付けて《一刃の斬撃》を――えっ……!?」
見えない壁から弾かれた斬撃の威力が彼女たちの足下を激しく揺らす。
そして――。
「キャアァァァッ!! お、落ちるーー!」
「お、おのれ、小娘の分際で」
「し、失敗したなの……。せ、せめてダメージを受けないようにするから許して欲しいなのー!」
フィーサの斬撃はものの見事に床に大穴を開けていた。その結果、体力を失っていたサンフィア、そしてミルシェもろとも穴底に落としてしまった。
「イスティさま、どうかどうかわらわたちを探して欲しいなの……」