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「あの、あなた……一堂 彩葉さん?」
「えっ、あっ、はい。あ……あなたは?」
「私は藤間 マリエ(とうま まりえ)と申します」
大型ショッピングモールに雪都と来ていた私の前に、1人の女性が突然現れた。
「藤間……さん?」
全く知らない人だ。
「ごめんなさい、急に。その子……あなたのお子さん? 可愛いですね」
その女性は、モールの一角にある小さな屋内の公園で遊ぶ雪都を見ながら言った。
「あっ、ありがとうございます。すみません、あの……」
私と同じくらいの年齢かな?
165cmの私より少しだけ低いくらいの背丈。
髪質がとっても綺麗で、前髪がしっかり整った黒髪ロングの見た目が印象深い女性。
目が大きいせいで、とても惹き付けられる。
「ごちゃごちゃ言っても仕方ないので、ハッキリ言います。あなたには慶都さんから離れていただきたいの」
「えっ……?」
いきなり過ぎて話が見えない。
丁寧な話し方なんだけど、言ってることはかなり強引。
「あの、どういうことでしょうか?」
とにかく冷静を心掛けて質問した。
「言葉通りです」
「藤間さん、意味がわからないんですが……」
「藤間フーズという会社を営む私の父と、慶都さんのお父様は、仕事の関係で昔から仲が良いんです」
藤間フーズといえば食品関係のかなり大手だ。
身につけているものは高そうな物ばかりだし、お上品でおしとやかな雰囲気だから、どこかのお嬢様なんだと想像はできたけど……
「私は藤間フーズの一人娘として、ずっと以前から慶都さんと仲良くしていただいてました」
仲良くって……いったいどういう関係なの?
「つまり、私は慶都さんのことが好きなんです」
えっ、す、好き!?
ちょっと、そんな大切なことを私にカミングアウトされても困るよ。
私、それを聞いてどんな顔すればいいの?
ハッキリ状況が飲み込めなくて、私は藤間さんに質問をした。
「あ、あの、藤間さん。もしかして……慶都さんとお付き合いされてたってことですか?」
「お付き合いということではないです。でも、私にはわかってました。彼が私を……愛してくれてることを」
「あ、愛してくれてる?」
あまりにも確信に満ち溢れた言葉に、一瞬、舞台のお芝居を見ているような感覚に陥った。
「ええ。でも、5歳年上で兄のようにも慕っていた慶都さんは、私を好きなはずなのに、なぜかitidou化粧品のご令嬢、麗華さんとお見合いをされたんです。本当にひどい話です。私という女性がありながら……」
藤間さんは、ため息をつきながら空を見上げた。
遠い目をして、まるで自分の世界に入り込んでしまったみたいに体が固まってる。
藤間さんの舞台を終わらせ、こちらに呼び戻さなければ話が進まない。
「あの……だ、大丈夫ですか?」