玄関の鍵がカチャリと音を立てて回る。
ひまなつが合鍵で扉を開け、その後ろからいるまも心配そうな顔でついてきた。
「みこと、入るよ——」
声をかけながらリビングに踏み込んだ瞬間、 ひまなつは息を呑んだ。
ソファの下、柔らかなカーペットの上で——
みことがぐったり倒れ込むように座り込み、 胸の中では幼い姿のすちが泣きじゃくっていた。
「っ……すち!? お前、なんで小さく……!?」
いるまが目を見開く。
「いるま! とりあえずみことを……!」
ひまなつは駆け寄り、震えながらすちを抱き上げた。
すちは腕を伸ばし、涙で濡れた目でみことを見つめながら泣いている。
「みこちゃ……!みこちゃぁ……っ!」
その背中を、ひまなつは包み込むように優しく撫でた。
「大丈夫、大丈夫だよ……すち。今みことも運ぶからね。」
いるまはみことの身体を抱え、寝室へ運んだ。
「ほら、行くぞ。ベッドで寝ろ。」
みことは熱で真っ赤な頬を濡らしたまま、 震える手でいるまの服の裾を掴む。
「……ごめん……うまく……できなくて…… すちのこと……ちゃんと……できなくて…………」
「謝るな。お前、熱で倒れたんだぞ。普通に無理だろ」
いるまは語気を強めながらも、額に触れる手は驚くほど丁寧だ。
「……でも……でも、すちが……泣いて……」
「心配すんな。なつが面倒見てる」
その言葉にみことの肩が少し揺れ、涙がまたこぼれる。
「今は休め。後のことは全部俺らがやる。」
いるまはぐしゃぐしゃの髪をそっと撫で、落ち着いた声で言い聞かせるように囁いた。
ひまなつはリビングでまだ泣き続けるすちを抱きしめていた。
「すち、大丈夫だよ。みこと、すぐ良くなるからね」
すちはぐすぐすと鼻を鳴らし、震える声で問う。
「ひまちゃ……こわい……みこちゃ……しんじゃうの……?」
ひまなつは痛む胸を抑えながら、すちの背中をとんとんと叩いた。
「大丈夫。絶対そんなことになんてなんないよ。俺も、いるまも……みことのこと守るから」
その言葉に、すちはきゅっと小さな指でひまなつの服を握りしめた。
寝室でみことを寝かせ終わったいるまは、ひまなつの元へ戻る。
「なつ、看病グッズが足りねぇ。 氷枕と飲み物、他にも色々。なんか必要になるかもしんねぇ」
ひまなつはすちを抱いたまま頷く。
「らん達に頼もう。あいつらならゴソッと持ってこれるだろ」
いるまはスマホを取り出し、通話ボタンを押した。
「……らん?悪い、今みことの家。来れるか? すちが——幼児化しててな。みことも熱でダウンしてるから色々持ってきて 」
電話口の向こうで、らんが驚きの声を上げるのが聞こえた。
『は?すちが幼児化?……分かった、すぐ行く』
いるまは電話を切り、ひまなつと小さなすちを見やる。
すちはまだ泣き止まず、ひまなつの胸に顔を押し付けている。
「……とりあえず、俺らでなんとか持たせるぞ」
ひまなつは小さく頷き、 抱きしめるすちの背をまた優しく撫で続けた。
コメント
1件
みこちゃんそんなに風邪重いの!?大丈夫かな?今日も最高です☺️