急に始まります……()
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自分には好きな人がいる。同性の男の人。
歳はそんなに離れていないが子供らしい無邪気な笑み 時々見せるカッコイイ姿。
そんな彼にいつの間にか惹かれていたんだ。
彼は自分が受け持つクラス生徒の保護者。保護者といっても親とかでは無く兄弟で、小さい頃に両親を亡くしてしまってるらしい。
「こんにちは 猿山先生。呂戊太はいますか?」
『あぁ 天乃さん。呂戊太なら外で希達と遊んでますよ』
「そうですか!ありがとうございます!」
にこりと俺に微笑んでくれる。太陽のような笑みでとても眩しい
「天乃さんってカッコイイよね〜!」
「分かる!刑事だし!」
そう彼は刑事という仕事柄に付いておりその腕前はお墨付きな程。その為女性にはモテて、男性には憧れを抱かれる存在
そんな人気者の彼と結ばれるなんてありえない。しかも同性
そんなことは知ってる 知ってるのに……
俺は なんとも叶わぬ恋を抱いてしまった┈┈┈┈┈┈┈┈
そしてそこから数ヶ月の月日が流れた
最初は軽く挨拶を交わす程度の関係だったが今では友人のような関係にまで発展していった
LINE交換もし、休日にはたまに一緒に出かけたり……彼と沢山の時間を過ごした。
しかしそんな幸せな時間は続かない
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11月11日 日曜日 ポッキーの日であり、自分の誕生日の日。
「らだ男!これあげる!お誕生日おめでとう!」
黒い小さな箱を目の前に差し出されその箱を取る。金色の装飾がされている蓋を開けると……
きらりと銀色に光るホイッスルが中に入っていた
『これ……』
紐を取りホイッスルを顔に近づけじっくりと見る。汚れが1つもなく、鏡のように自分の顔が映されている。
「らだ男って先生だろ?使えるかなって!」
にかっと元気な笑みを向ける絵斗。あぁ幸せ者とはまさにこの事を言うんだろう。
思わず涙をぽろぽろと流してしまう。それを見た絵斗は俺の顔に手を近づけ、頬に流れている涙を手で優しく拭ってくれた。
心配そうな顔で見つめてるので”大丈夫だよ”って声をかける。 すると絵斗はパッと顔が明るくなる。顔に出やすいんだろう
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈そして次の日
いつもは週の初めで憂鬱な気分だが、彼がくれたホイッスル首にかけると不思議と明るい気分になる。彼からのプレゼントだからだろうか
そんなことを思いながら徒歩で学校へ向かう。
正門を通り、下駄箱に自身の履物を入れる。中に入ってる白い学校用の履物を取り出すと少し違和感を持つ
『……あれ?こんなに綺麗だったっけ……』
随分使っていて汚れが結構あった靴が新品同然ような姿へと変わっていた。自分でこんなに綺麗にした覚えはない……しかも先週持ち帰るのを忘れていて普段より汚いはず
誰かが洗ってくれたんだろうか と思いながら職員室へと向かう
ガラッとドアを開けると先に来ていた職員達が次々に”お誕生日おめでとう”と言う。中にはプレゼントを持ってきた者も居たりして、職員室はまるで誕生日会のようになっていた
午前8時
校門が開き次々に子供達が学校の敷地へと入っていく。そんな光景を三階の窓からちらっと覗く
階段を一つ登り自身が担当するクラス6-1へと歩を進める。ガラッと扉を開け教室へ足を踏み入れる。
『……あ』
教卓を通りかかったと同時に”あ”っと声を漏らしてしまう。
そういえば今日やる授業の教科書を持ってくるのを忘れていた。
『急いで取りに行かなきゃ……!』
慌ただく教室から飛び出し階段を急いで駆け下り廊下を走る
廊下を歩いていた小学生達に
「猿生先生走るなよ〜w」
と笑いながら言われる。いつもはこっちが注意する側なのになぁ……なんて苦笑いを浮かべながら職員室へと入る
はぁ……はぁ…と息を切らしながら自身の机へと向かう。
その様子を見た職員達は心配の声をかけるが”大丈夫”だと伝えてお目当ての物を探す。
『……あっ…た……』
机の下にある引き出しを開けると、物凄い量の物が散らばっている。鉛筆やらシャープペンシルやら……
いい加減片付けないとなぁと思いながら隅の方に置いてあった教科書達を手に取り急いで教室へと戻った
ホイッスルはその時少しだけ黒く染っていた
「あ”あ”ぁ”ぁ”!!!」
ゆったりと6-1に向かう階段を歩いてた。あと6.7段で目的の教室に辿り着く。長かったなぁ なんて思いながら階段を登る。
すると突然馴染みのある声が耳に入り急いで階段を登り声の聞こえた方へ急ぐ
声が聞こえた方は 自身の担当する6-1
嫌な予感がし寒気が襲ってくるがお構い無しに教室の扉を思いっきり開ける
『……はっ…?』
扉を開けた瞬間思わず声を失ってしまう。
『な……んで…?』
先程までの綺麗な教室とは違い荒れた光景へと変わっていた。机や椅子は倒れ、カーテンは少し外れ掲示物も取れてしまっている。
しかし自分が一番言葉を失ったのはこの荒れた光景ではない。
壁 教卓 床等に人が倒れている。何人も 何十人も赤黒い色に染まって。
『どうして……』
一歩後ろに後退り鼻にに手を添える。さっきから生臭い匂いが教室から漂ってくる
十中八九 ”血” だろう。
そう考えているとコツコツと廊下に靴音が響き渡る。自分が立ち止まっている為靴音はしない。なら誰が?
そう思い右に目を向ける。今日は天気が悪いせいか辺りが暗くて良く見えない。音の正体は数分歩いたところでようやく分かった
『……は…?絵斗…?』
俺が想いを寄せている”天乃絵斗”だった。しかしいつもと姿が違う。
黄色いコートには赤い物が付着しており、スカーフは所々破れている。
最初変化してたのは服装だけかと思っていたが彼が数m近づいた時、もう1つ変化を見つけた
『絵斗……なん…で…そんなに……』
“嬉しそうなの”と彼に言う。顔は酔っ払いのように頬が赤く染り、口はにこりと可愛らしい笑みを浮かべていた。
幼い子供のように笑うその姿。普通なら癒される所だが 場所と姿によりそんな癒しは恐怖によって塗り替えられた
コツ コツ。彼の履くブーツの音が学校中に響き渡る。彼はどんどんと此方に近付き それに比例して音も大きくなる
自分の鼓動がとても煩い。もう成人した大人がこんな醜態を晒して恥ずかしいと思うが 今はそれどころではない
『逃げなきゃ……!』
そう言い立とうとするが 足が震えて思うように動かない。もたもたとしている内にも彼はポケットから拳銃を取りだし近付いてくる
あぁもうゲームオーバーなんだな と諦めてぎゅっと目を瞑る。
学校中に響き渡る足音は止んだ。もうすぐ傍まで来ているんだなと察することが出来る
カチャリ 映画やドラマでしか聞いた事の無い拳銃の金属音。もう死ぬ寸前まで来てしまった。しかし後悔はない 想い人である彼に殺されるんだから
次の人生では想いを伝えたいな
バン……玉が発泡される音が耳に届いた。…おかしい 痛みも感じないし 思考が薄れる気配もない。
そっと瞳を開けると 目の前に紙屑が落ちてきた。四角いカラフルな パーティー用の紙屑。ふと彼の拳銃に視線を映すと 銃口からは日本を表す国旗が出ていた
「お誕生日おめでとう!らっだぁ!」
「……は?」
自分でも驚く程の間抜けな声を漏らしてしまう。開いた口は閉ざすことを知らない。 これが真の開いた口が塞がらない だ。
そんな自分を他所にニコニコとしている彼。そこに殺意などは見えなくて, ただただ幸せそうな笑みを浮かべている。
「…まってまじでどういう事?」
脳は未だに理解出来ていない為か, 思わず綴ってしまう疑問の文。少しでも理解したい為に微かな情報でも求めようとする。
そんな自分を嘲笑うかのように彼は笑みを浮かべながら疑問を1つ1つ潰していく。
「1個1個説明していくね!まずはこれ, らだぁの誕生日パーティ!!」
さて, 新たな疑問が生まれてしまった訳だが。
「え?これが?」
どう見ても異常のオンパレードで包まれたこの空間を誕生日パーティーと呼ぶのは少々苦しいだろう。未熟な小学生でももう少しまともな嘘をつく。
「んー…サプライズパーティー的な?」
笑顔を崩さずに言い訳に似た言葉を綴る彼。サプライズにしては大袈裟すぎる規模。
例え誕生日という, 歳を重ねる特別な日だとしてもだ。
「……」
呆れと驚き、言葉に出来ないような感情達が我こそはと主張し始めて頭痛が走る。文面でも表すことの出来ないこの感情に, どんな対応をしてやれば良いのだろうか。
コメント
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わあああお久しぶりです;;;;;;; 語彙力とストーリーとサムネのきゃわたんな絵とect…相変わらずすちです……びっぐらぶ……
誕生日パーティのサプライズがw