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未だに名前を呟くだけで苦しくなる。
泣きそうな顔をしていると、めっちゃいい顔、そそられる、と博人が鋭い目をして笑った。
あぁ……博人のその顔、好き。サディスティックで、狂気的で、見るもの全てを射殺してしまうような――
「博人」
彼の名を呟いて、自分から口づけた。
貪るようにキスを交わして、彼の胸に飛び込んだ。「博人、して?」
「だったら自分で脱げ。旦那にバレた時、律一人だけ言い逃れはさせへん。証拠物件、いつも通り撮らせてもらう。地獄へ堕ちる時は一緒やで。連れてくから」
博人にスマートフォンを向けられた。見覚えのある、黒い本革のケースに包まれた彼のものだ。「門外不出になるかどうかは、律次第やで」
あなたに触れられる悦びが、もう既に私の正常な思考を犯し尽くしていて、勝っているから抗えない。
絶 対 服 従 ――
私はもう、光貴に申し訳ないと思う事すら出来なくなってしまった。
何の迷いも無く、博人の手を取ってしまう。
その瞬間、録画ボタンが押された。既に乱された衣類を纏いながら、今、博人の向けた画面に映っているのは、言い逃れは一切出来ないオンナの顔をした私。
行為に及ぶ時、博人は何時も私を撮影する。
私が求めるまで、カメラを向けて意地悪をするのだ。
「博人……好きっ。ぁ、地獄でもどこでも一緒に行く。連れてって……っ! あ、ぁああっ……――」
乱れた着衣のボタンを外そうとしていた私の指に、博人の指が絡められ、更に服の上から敏感な先を捕らえられると、吐息が甘くなった。
「いい声やん」
カメラの向こうでサディスティックに笑う博人。彼のその姿に心が締め付けられる。
スマホのカメラを向けながら器用に私を弄ぶ博人は、狂気的な笑顔を湛えて私の言葉を待っている。
「もっと俺の為に歌え」
「あ……お願いっ、博人、早く来て! っ……もうっ、我慢できない……っ!」
光貴が見たら絶望と殺意を持つような台詞に違いない。でも、自分からは止める事はできなかった。
光貴を傷つけたくないのに。今でも光貴は大切なパートナーなのに――私が博人を愛してしまったから、光貴を裏切る事しかできない。光貴に悪いと思いつつも、この人を求めてしまう。
結婚してマイホームまで建てておいて、光貴とどうやったら上手く離婚できるのか――我ながら最低な事を考えた。
ここまで来て、もう引き返せない。第一、どう光貴に伝えるつもり?
『好きな男ができたから、別れて欲しい』――そんな事、言えるはずがない。
ただ、このまま光貴を裏切り続けて、博人との関係を続けるのはもう限界だった。どうしたらいい? どうしたら……。
罪の歌を歌いながら、私の目から涙が零れた。
私に泣く資格なんか、どこにもないのに。
「俺以外の男のこと、今は考えるな」
怒った博人は乱れた衣類を上手く掻き分け、敏感な先を弄り始めた。乱暴に甘噛みされて、思わず悲鳴のような声が漏れた。
博人は、野獣。まるで獰猛で、私を喰い殺してしまいそうな程の熱で、愛してくれる――
「なんでっ……結婚してんねん。お前は、俺が好きなんやろ……裏切者…………っ」
博人にしたら、珍しくぼそぼそとした声で呟いた。低くてもよく通る声ではっきり喋るのに、今の声はあまりに低く、自分の甲高い嬌声のせいで全然聞こえなかった。
「ぅんっ……? なに……聞こえなっ……ぃっ! ああぁっ、はぁっ、んっ……」
「なんでもない」
その途端攻めが激しくなった。力が抜けて崩れ落ちそうになるのを、しっかり抱き留められた。
「俺の事好きやったら、もっと乱れて歌え」
「あぁあっ――……!!」
新築でお気に入りの空間の
昨日届いたばかりのお気に入りの赤いソファーの上で
私は
旦那ではない男に、甘く激しく乱され
奪われ、貫かれる――……