コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「それで?こっちですることってなんだ?」
マンションへと帰り、聖奈さんに聞いた。
だって、わからないんだもんっ!
「まだ先方の予定がハッキリしていないから、明日は会社だね」
先方?取引先でも出来たのか?
まぁ、仕事は聖奈さんに任せておけば問題ないからいいか。
あれ?異世界のことも任せっぱなしだよな?俺って一体……
「とりあえずしばらくはこっちにいるんだから、今日は飲みにでも行かない?」
「構わないけど、聖奈は程々にしろよ?」
この前も二日酔いになっていたし、その前は危うく既成事実を作られるところだったしな。
色々と釘を刺し、俺達は近所の居酒屋に繰り出すことにした。
「いらっしゃいませ!東雲さん、お久しぶりですね!彼女さんもお久しぶりです」
この居酒屋は近いからちょくちょく利用している。マンションから徒歩で5分くらいのところで、チェーン店ではなく個人経営のこじんまりとしたお店で客層は若くない。
名前を覚えられたな…俺は陰キャだから来なくなるぞっ!!
「とりあえずビールで、彼女にはアルコール少なめのカシスオレンジを下さい」
「ええ!普通ので良いのに!」
どの口が言う……
俺達は乾杯をして、日頃の疲れを・・・俺は疲れることをしていないな。
美味い酒が飲めたらいいんだ!
「それで?予定ってなんだ?」
「うーん。サプライズにしたかったけど、聞かれちゃ仕方ないね!
実はローカルテレビの取材が入っているの。もし受けが良かったら、全国放送の依頼もあるかもだって!」
仕事にサプライズは要りません。それよりも……
「テレビかよ…俺じゃなくて聖奈じゃダメなのか?」
「私じゃダメだよ。それにストーカーさんに職場バレしちゃうし、新たなストーカーさんを量産しても困るでしょ?」
困るのは俺じゃなくてあなたですが……
「ウチにテレビの力が必要なのか?」
「全然。むしろ今はネットの影響の方が大きいから、あんまりかな?でも、この先企業との取引が出てきたら話の種にも、ある程度の信用にも繋がるね」
テレビに信用なんてないのわかってるくせに……
目的はなんだ?まさか俺への嫌がらせじゃあるまいし。
「そこまで大きな理由はないよ?ただ、偶々取材させてって連絡があったから話を聞いただけだよ」
「そうか。まぁ、変な番組じゃなきゃ出ても良い」
ローカルテレビなんて人気じゃなきゃ視聴率一桁前半だろう?だよね…?
はぁ。気が重い…任せていた手前断れないんだよな……
「変な番組じゃないよ。地元の新しい企業を取材しているんだって!
もしかしたら全国放送の若手社長を取材してる番組に紹介してくれるかもだって!」
うん。それは是非お断りして欲しいかな!
その後は結局酔っ払った聖奈さんを抱えてマンションへと帰った。
爺さんとの修行のお陰か、素の筋力がアップしてるから、聖奈さんをおんぶしても息がきれなかった。
もちろん重そうに持ったら後が怖いからな。修行の成果で一番嬉しいかもしれない……
「「「おはようございます」」」
知らない顔がちらほらいるな。
「おはようございます。知る人ぞ知る社長の東雲です。みなさん顔を覚えてやってください」
よし!大声では笑っていないけど、口に手を当てている人がちらほらいるな!掴みは上々だぜっ!
「では皆さんいつも通りお願いしますね」
「「「はい」」」
バイトの人達が事務所から出て行ったら早速……
「もう!聖くんは変なこと言うんだから!」
「いいだろ?ウケたんだし?」
「あれは仕方なくだよ。それにそんなんじゃ世界を裏で操るフィクサーになれないよっ!」
し、仕方なくだったのか……
いや、俺は世界を裏で操らないよ?そもそも俺自身が聖奈さんに操られてんじゃん?
「それにしてもまたバイトさんが増えたな」
「うん。水都でも砂糖や胡椒を売るから増やしたのもあるんだけど、別の業務の為に増やしたの」
なんだ?また仕事を増やしたのか?自分の仕事も増えるんだぞ?
聖奈さんって、実はMなんじゃ……
「また変なこと考えてるでしょ?」
「そ、そんなことはないよ?」
なぜバレるんだ…?
「すぐ顔に出るんだから。そんな聖くんには教えてあげなーいっていいたいところだけど、どうせすぐにバレるから言うね」
「教えてくれるんだな。なんだ?」
相変わらず女性ばかりの職場だから力仕事ではないのだろうけど。
新しいバイトさんは2人いた。もはや特徴も覚えられなかった。まぁ、先の4人と似たような感じだ。
「向こうに商会を開くの。正確には店舗を構えるんだよ」
「店を?でも、働く人も売る物もないぞ?」
砂糖は折角組合が上手いこと売ってくれているから値崩れ起こさせたくないしな。
ちなみに商人ランクは国王と取引(酒)したことを今のセイレーン商人組合組合長が知って、ランク4に上がっているから店はどこにでも出せる。
その辺の貴族や豪商と問題を起こしても、このカードを見せればどこかの国の王族と仲のいい商人ということで返り討ち、もしくは無かったことになるレベルだ。
「売るものは聖くんが好きなものだよ。わかるでしょ?」
俺の好きなモノ?異世界?…美女?
まさか…娼館?入り浸っちゃうよ?
「わかったよね。向こうの人の趣味に合う物をピックアップして欲しいの。私は門外漢だから」
「向こうの趣味?むしろ俺の趣味になっちゃうぞ?」
「それでもいいよ。趣味は疑ってないから」
「ほ、ホントか?」
そんなヤバい店をしなきゃいけないくらい、お金が必要なのか?!
俺はウェルカムだけど!!
「うん!じゃあ早速会社のパソコンでピックアップしてくれるかな?」
えっ?こっちで?なんか間違ってないか?
「ち、ちなみになんて検索したらいいんだ?」
「?そんなのお洒落なお酒とかでいいんじゃない?」
酒かぁ…確かに俺が好きな物だわ・・・
おかしいと思ったぜ…聖奈さんがそんな店を出すはずがないだろ!!馬鹿か俺は!!
「どんな物でもいいのか?」
「うーん。出来たら瓶限定にして欲しいかな。ラベルを剥がすだけでいいしね」
確かに。パックや缶だと入れ替え作業が加わるのか。
それより……
「店を構えて、向こうでは大丈夫なのか?」
「何が大丈夫かはわからないけど、エリーちゃんが車を発表した段階で、向こうにいるかもしれない転生転移の人達にはバレるでしょうね。
もう一つの聖くんの懸念は力のある向こうの人に狙われることでしょ?
それも大丈夫だと思うよ。だって聖くん強くなったでしょ?」
そうだな。何の為の修行かといえばハーレムの為だけど、ついでに仲間を守る力でもあるからな。
貴族達はやはり横暴そうで嫌だけど、それも……
「なんといっても王様に好かれているのがいいよね!」
「そうだな。それに魔導王国には貴族はいないしな」
魔導士協会の人達には車の件というかエリーの件で嫌われているかもしれないが、元々仲良くするつもりのない組織だったから、遅いか早いかの違いでしかない。
「うん。魔導士協会のお偉いさんの中にも聖くんのお酒の虜になる人がいればさらに安全になるしね!」
「わかった。良いものを選べるように頑張るよ」
売れるかどうかは俺の腕に…いや、舌にかかっているからな!
売れなきゃ王様に買い取ってもらおう!
「そういえば…向こうでお金を稼いでどうするんだ?」
「あれ?気付いちゃった?実は向こうで国でも買おうかと」
「いや、ギャグはええねん」
いきなり国持ちとかどんなサクセスストーリーや。
「あながち冗談でもないけどね。でも、今回の売り上げはこっちで売るものを仕入れる費用に全て回す予定だよ」
「何を仕入れるんだ?」
「貴金属だよ。もちろん並行して家具の職人さんもリゴルドーに誘致していくつもりだよ」
多分ちまちま宝石買取店に持っていくってことじゃないんだよな?
「そうか。商売で大きく動くってことだな」
「うん!人もたくさん増やして、私達がいなくても回るくらいには、地球も異世界も大きくしたいよね!」
俺は今のままでもいい。なんて、頑張ってる人には言えないよなぁ。
しゃーない。付き合いますよ。
また冒険が遠のいたけど、どっちにしても冬の間は動かない予定だったしいいか。
俺は早速机(ほぼ新品)に向かい、お酒をピックアップしていく。
あれ?好きなものを調べていると仕事なのに苦痛じゃない……
ついに俺にも天職が!かなりニッチな職種だけど。
俺は聖奈さんに騙されてこの日は仕事を頑張ることが出来た。
何を騙されたかというと、試飲してもいいって言ってたのに、結局無しになったことだ!
許さんぞ!!!酒の恨みは怖いからなっ!!
〓〓〓〓〓〓〓〓小話〓〓〓〓〓〓〓〓
聖(騙された…こうなったら何としてでも飲んでやる!)
聖奈「じゃじゃあーん!これ聖くんが飲みたがっていたレアものの日本酒!ちゃんと仕事してくれたからご褒美だよ!」
聖「聖奈…いや聖奈様。一生ついていきやす!」
聖奈「…」(チョロい…)