ベルモットは、酒井有子50周年記念パーティーはこちら↑ と書かれた看板を見下ろす。
酒井有子とは、ベルモットがシャロンのときに共演した女優だ。
しかし今回は、酒井有子の50周年を祝いに来た訳では無い。
酒井有子主演映画の監督である、武藤と金の取引をするためだ。
ベルモットは、来賓名簿に クリス・ヴィンヤードと書き、前の方に書かれた水無怜奈の名前を見つけた。
キールには取引が終了した後に武藤を殺すという役割を与えた。
会場に入り、端の方にいるキールを見つけた。
「Hey Kir! 早いのね。」
「フッ…念の為よ。」
「そう…。まぁ、時間になるまで一緒にいましょ?」
「ええ。」
ベルモットとキールは、取引の時間になるまで一緒に過ごすことにした。
「ねぇ…、あなたは新しく入ったスコッチって知ってる?」
キールが話を切り出す。
「ああ、スコッチのコードネームを襲名したっていう誰かさんの事? 」
「ジンが話していたから気になって、さっきバーボンに聞いて見たけど、何も知らないそうよ。」
「襲名?前にもスコッチがいたの? 」
「あら…知らないの?前のスコッチはネズミだったのよ。日本の公安警察からのね。」
「公安?まさか、赤井のように逃げられたの?」
「いや…スコッチはその赤井が殺したのよ。拳銃で心臓を撃ち抜いてね。NOCだと見抜いたのはあの赤井のようだし。」
「赤井が…。」
「なに?引っかかる?」
「赤井はライフルしか使えないと思っていたけど、拳銃も持っていたのね。しかも、NOCだと見抜いて…。」
「あの男…ショットガンも使えるわよ。それに、推理力も高い方だったわ。ボスも舌を巻くほどね。」
「そう…。」
「しっかし、NOCだったやつのコードネームを襲名だなんて、何を考えているのかしら。酒の名前なんて山ほどあるのに。」
キールは、赤井がスコッチをNOCだと見抜いた上で殺害した事に違和感を覚える。
(拳銃…)
自分が赤井を殺せと命令された時、ジンから拳銃を渡されたな、と港での出来事を思い出す。
(あの赤井がNOCを殺すはずがない…赤井だったらNOCだと見抜いた時点で自分たちに利益のある事に利用するはずだわ。私みたいに…)
「皆さん!今日は私の記念パーティーにご出席頂き、ありがとうございます!」
酒井有子がステージに上がり、挨拶をし始めた。
「時間ね。行ってくるわ。後始末は頼んだわよ?キール。」
「えぇ。分かってるわ。」
ベルモットは、酒井有子がステージに上がって話を始めたタイミングで取引に向かう。
キールも武藤を裏口で待ち構えるため、会場を出て裏口に向かう。
「はい、アナタが欲しがってたメモリーカード。」
「……」
ベルモットは武藤とメモリーカードとアタッシュケースの交換をした。
「ちょっと。裏口から出た方がいいわよ。」
武藤がそのまま表口に向かおうとしていたので声を掛ける。
「あ、あぁ…。」
武藤は、なぜ自分に親切にするんだ、という顔でマヌケな返事をした。
ギィィ…
裏口の錆びたドアが開く。
カチャ…
ドアの後ろに待機していたキールは、サイレンサーを着けた拳銃を構える。
パァァン!
大きい銃声が路地裏に響き渡る。
武藤の頭の右側から弾丸が入り、左側から抜けて地面に着弾した。
「は…?」
キールは、人差し指を伸ばしたままだった。