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「は…?」


キールは後ろを振り返る。


しかし、暗闇が広がっているだけで人の気配は無い。


(まさか、上…!?)


随分遠くにビルが1つ建っているが、キールの目では人影を視認することが出来ない。


ピリリ、ピリリリ、ピリリリ…


少し遅れて着信音に気づき、携帯を手に取ると画面に〈Gin〉の文字が表示されている。


「もしもし…」


「キール。今撃ったのはスコッチだ。そこから見えるビルの屋上から狙撃させた。」


ジンが淡々と話す。


「狙撃させた?どういうこと?」


「スコッチの腕を試した。明日から任務に当たってもらうためにな。」


「貴方がそんな事をするなんて、意外ね。」


「ラムからの命令だからだ。分かったらさっさとズラかれ。」


「了解。」


キールはビルを背にして走り出した。


少し前に停まっている緑のジープにはベルモットと、運転席にはウォッカが見える。


「遅かったわね。何かトラブルでも起きた? 」


「ええ。私が武藤を撃つはずだったけれど、ジンがスコッチを使って狙撃したわ。その連絡で少しね。」


「ったく、ジンまで計画に無い行動をするようになったわけ?これじゃあどこかの誰かさんと一緒じゃない…。」


ウォッカは申し訳なさそうにしている。


「そういえば、前のスコッチもスナイパーだったらしいわ。私は撃っているところを見た事は無いけど。 」


「そう…でもかなりの腕前ね。500メートルくらい離れた位置から頭を撃ち抜いたんだもの。ジンの隣で。 」


「アハハッ。それは期待出来そうね。ジンの隣ならあの赤井もまともに撃てなさそうだもの。」


10分程かけて、ベルモット達は組織が拠点にしている建物に到着した。


「ハァ…疲れたわ。私帰ろうかしら。」


「べ、ベルモット…それは待ってくだせぇ…」


「え?まだ何かあるわけ?」


ベルモット達がドアを開けて中に入ると、そこにはジンと、もう1人誰かが待っていた。


「ベルモット、キール。」


「こいつが新しく幹部になった、スコッチだ。」


「え…?ちょっと待って、ジン…」


ベルモットは、存在しないものを見ているかのように驚いている。


「何…どうかした?」


「アハッ、私以外にもこんな事出来る人間がいたのね…」


ベルモットは、スコッチの首を触る。


しかしさらに焦り、動揺している。


「ベルモット。これは変装ではない…」


「こいつは組織が前のスコッチそっくりに整形したものだ。」


「整形!?なんでそんな事するのよ!私が変装させればそれで良いじゃない!」


ベルモットは、自分の顔を老けメイクで偽り続ける事が苦痛だと感じていたため、スコッチに同情してしまう。


「悪いが、これはラムからの命令だ。なぜこうしたか、おまえにはまだ言えない。キールにもな。」


「あらジン。貴方…私のような秘密主義者を嫌っていたんじゃなくって?」


「あ、兄貴は自分の好みと仕事は切り離すタイプですぜ…」


「…スコッチ、私があなたの元の顔に変装させてあげるわ。写真持ってきていらっしゃい…!」


「おいベルモット。そんな事をしたらどうなるか分かっているんだろうな?」


「…分かってるわよ。」


「でも、声はどうするの?いくら顔を前のスコッチそっくりにしたって、声が違ったら意味無いんじゃない?」


「そう心配するな、キール。声は元々似ている人間を選定した。自己紹介してみろ。」


「新しく幹部になりました、スコッチです…よろしくお願いします。」


声はもちろん、前のスコッチ特有の礼儀正しさやあどけなさも、スコッチそのものだった。


「今日はもう遅い。スコッチも明日から任務に当たるんだ。これで解散させてもらうぜ。」

「夜更かしは肌に悪いんだろう?なあ、ベルモット。」


「あら、レディの事よく分かってるじゃない?さっ、キール。帰りましょ。」


ベルモットとキールは部屋を出た。


「たくラムの奴。兄貴の仕事増やしやがって…」


「まぁ良いじゃねぇか。俺も気にはなっていた事だ。ラムからの命令というのは癪だがな…。」


ーーーーーー


ベルモットとキールは自分の家へ帰るため、建物を出たところで別れた。


キールはシトロエンに乗り、夜の道路を走りながらベルモットがスコッチについて言っていたことを思い出す。


(NOCでは無いことを証明するために誰かを殺害させるのが組織のやり方だとしたら…赤井もNOCでは無いことを証明するためにスコッチを…? でもあの赤井が人殺しをするなんて思えない…)


(それに赤井なら、組織がスコッチにそっくりな人間を作り何をしようとしているのか、分かるかもしれない…)


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