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決して穏やかな方法だったとは言えず褒められた手段ではなかったが、警戒と共に正気を取り戻したギレスラに成竜は語り掛けた、これまでと違って厳格な声で、である。
『周りを見てみなさい、ここにいる竜の亡骸は全て、坊やの家族なんだよ! そして全員がアンタを守る為に必死に頑張っていたんだ…… 鱗が大きく膨らんでいるのが判るだろう? あれは魔力を吸い続けていた証なんだ…… あんな風になっちまったら普通は正気を失って邪竜になるんだよ…… でも、全員頭が無くなっているだろう? あれは自分のブレスを口の中で破裂させたからなんだよ! 意思無き邪(よこしま)な蜥蜴(とかげ)に堕ちる事を良しとせず自ら命を絶ったんだ、皆…… ニーズヘッグもヨルムンガンドもドロウシープもヴンゴレイもね! 坊や、アンタは優しく誇り高い家族の姿を目に焼き付けて置かなくちゃいけないんじゃないのかい? そして、その姿を忘れずに、いつかここで身罷(みまか)った家族のように、強く優しく気高くならなくちゃ、そうじゃないかい?』
『………………グガァ!』
『良し! じゃあしっかり掴まっていなさい! 落ちるんじゃないわよ!』
『グガァッ!』
大きな翼を羽ばたかせて大空へ舞い上がった成竜の背、鋭く立ち上がった燃え盛る炎色の背鰭(せびれ)状な鱗に掴まったままでギレスラは聞く。
『アレア? カリイァ?』
成竜は飛びながら答えた。
『あたし? あたしの名前はジグエラ、アラスカンファイヤーバックの最後の一頭さ! 生き残り同士仲良くやろうね坊や、そうか、あんた名前は?』
『ギィアレィスラァ』
『ギレスラか、いい名前じゃないの』
その後、魔術師バストロに引き合わされ、自分と同じく救助されたレイブと共に、北の魔術師の弟子となったギレスラであった。
気楽な足取りで自分の前を歩くレイブの背を追いながら、ギレスラは七年前に会えなくなってしまった自分の師匠ジグエラや、失ってしまった竜の里と、そこで共に暮らした仲間達の事に思いを馳せたのである。
僅(わず)か二年ほどの間だけの師弟関係であったが、ジグエラだけで無くバストロやヴノからも多くの事を教えられ育てられた、何よりも、全てを失ったと思っていた自分に対して、皆、新たな家族として接してくれた、非常に暖かな経験であった。
同じ境遇だったレイブと、一年遅れで合流したペトラは、今や彼にとって掛け替えの無い兄妹となっている。
ギレスラは強く思う。
――――あの子供たちもラマスと同じ様に行く末に不安を感じている事であろう、いいや、あの日の我と同じ、そう言った方が良いかな…… 良し! ならば是非も無い、今度は我があの子供たちの家族、いいや家となろうではないか! 無論、あの子達の獣奴と闘竜に対しても同様だ! 特に竜達には兄として、父として接してやらねばなるまい! 時に厳しく、又ある時は優しく…… そうだ、我ギレスラが育てあげて見せるのだっ! 長老たち、皆、それにジグエラ、我に力を!
「お、ギレスラ来たぞ」
『む? ああカタボラか』
熟考していると前を歩いていたレイブが声を掛けてきた。
顔を上げたギレスラの視界に、まだ小さな翼をパタパタと動かして、自分に向かい一直線に近付いてくる真っ白な雉竜の姿が映る。
息を荒げた稚竜は体をよろめかせながらも、ヒッシとギレスラの顔を掴んで着地を決め誇らしげに言う。
『グガァ、飛べタァ~! 新キ録ダァ~! ギレスラ、褒めテェ~♪』
『ははは、良いぞカタボラ、良くやったな! じゃあ早く背中に移るのだ、前が見えぬでは無いか』
『キャハハ、りョ!』
無邪気な喜びの声を聞いたギレスラは再び思った。
――――カタボラにはスリーマンセル以外には我しか居らん、これから合流する竜達にとってもそうだろう…… こんな時代だ、護ってやるとは軽々しく言う訳にはいかないが、せめて、自分とスリーマンセルを護れるかもしれない手段と覚悟だけでも伝えねばなるまい……
と。