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コメント
5件
イ ッ キ 読 み し ま し た‼️ 感 動 す る し 切 な い 感 じ が ほ ん と 大 好 き 💝🥹
ほんとにこれ好きすぎる🥹💗🫶🏻 めっちゃ切ないしet彡のこの取り繕ってる感じの表現上手すぎた😭💖
朝から雨の音がしていた。
窓の外では、灰色の雲が低く垂れこめていて、街全体が水の膜に包まれているように見えた。
少し肌寒くて、カーテンの隙間から差し込む光も薄い。
まるで、世界が息を潜めているようだった。
今日は、うりの誕生日だった。
et「 これ、渡したら喜んでくれるかな 。
小さく呟いて、紙袋の中身を見つめた。
うりが前に「欲しい」と言っていた腕時計。
仕事の合間に、何度もネットで調べて、
悩んで、やっと選んだもの。
et「 サプライズにしよう 。
そう決めて、私は小さな決意を胸に、傘を差した。
雨は止みそうで止まない。
アスファルトには無数の水溜まりができて、
車のタイヤが通るたび、波紋が広がっていく。
駅前のショーウィンドウには、青いワンピースが飾られていた。
その鮮やかさに、無意識に足が止まる。
et「 …… 青い、ワンピース …….
唇が、ひとりでに動いた。
心の奥に沈めたはずの言葉が、雨音に溶けて蘇る。
胸の奥が、ぎゅうっと締めつけられた。
紙袋の取っ手をぎゅっと握りしめて、私は足を速めた。
うりが仕事を終える時間を狙って、うりの会社の近くのカフェで時間を潰していた。
外の雨は強くなり、ガラスを叩く音が、心臓の鼓動みたいに響く。
テーブルの上の時計の針が、ゆっくりと進んでいく。
et「 そろそろ、うり来るかな …….
独り言みたいに呟いて席を立つ。
ガラス越しに見える街の明かりが、雨で滲んでぼやけていた。
店を出て、傘を広げた瞬間だった。
視界の端に、見覚えのある後ろ姿が映った。
et「 ….. うり ?
傘の持ち手を握る指先が冷たくなった。
距離は少し離れていた。街灯の下で、彼が立っている。
その隣に、ひとりの女の子。
青いワンピースを着た、小柄な子。
二人は、並んで歩いていた。
雨の中、ひとつの傘の下で。
うりの肩にかかる水滴を、彼女がそっと拭う。
その仕草があまりにも自然で、優しくて、見慣れた光景に見えた。
胸の奥が、音を立てて崩れていく。
何かが砕けて、広がって、消えていく。
et「 ….. あぁ 、
声が漏れた。
傘を持つ手が震え、紙袋の中のプレゼントが揺れた。
私の知らないurが、そこにいた。
いつも一緒に笑っていた彼の横に、知らない笑顔の彼がいた。
それが現実だと気づいた瞬間、足元から世界が歪んだ。
雨音が遠のいて、代わりに耳の中に自分の呼吸音だけが響いた。
吸って、吐いて、吸って。
でも、息が苦しかった。
私は、声をかけなかった。
できなかった。
ただ、傘を差したまま、彼らが見えなくなるまで立ち尽くしていた。
白いサンダルの足元に、雨水が跳ねて冷たい。
だけど、その冷たさの方が、今は心地よかった。
et「 はっぴい ばぁすでい 。
誰にも届かない声で慣れない英語を呟いた。
プレゼントの包み紙が、しっとりと濡れていく。
まるで、贈る前から、終わりを告げられているみたいだった。
帰り道、電車の窓に映る自分の顔は、ひどくぼやけていた。
何度拭っても涙が止まらない。
それでも、心のどこかではまだ信じたかった。
「きっと何かの勘違いだ」って。
「私が見たのは、似ている誰かだ」って。
家に着くと、リビングの灯りがついていた。
urの靴が玄関にある。
いつもと同じ匂いがして、同じ空気が流れている。
ur「 おかえり、えとさん 。
その声が、あまりにも優しくて。
胸の奥がひどく痛かった。
et「 ただいまっ !
笑顔を作るのに、全身の力を使った。
プレゼントの袋は、濡れたままテーブルの上に置いた。
et「 お風呂入ってくるね 。
目の周りが赤いのをうりから隠して、私はシャワーの音に逃げ込む。
お湯が肌を伝って流れていく。
けれど、どんなに洗っても、心についた痛みは落ちなかった。
et「 ねぇ、うり 。
誰にも聞こえない声で呟く。
et「 どうして あんなに優しく笑えるの 、
鏡に映る自分の目が赤い。
それでも、明日もまたうりの隣で笑ってしまうんだろうな。
壊れていくことが怖いから。
愛しているから。
夜、寝室に戻ると、うりはスマホを見ながら寝っ転がっていた。
少しだけ覗く横顔が、やっぱり綺麗で、好きで、憎らしかった。
ur「 おやすみえとさん 。
私の気配に気づいたのか、スマホを置き、枕に頭を載せる。
et「 おやすみ 。
この日は数年ぶりに向かい合わせで二人はベットに入った。
うりの瞳が輝いている。でも昔の面影はない。
そっと、彼の大きい手に手を伸ばす。
ほんの少し触れただけで、涙が溢れた。
ur「 どうしたの 、
うりは驚いて私の手を握りしめる。
何年ぶりなんだろうか。手を握るのも。
二人で駅前のパン屋に行ったきりかな。
いや、前に出掛けに行ったぶりか。
et「 うり、あのさ 、
声にならない声が喉を震わせる。
et「 私のこと、好き ?
ur「 ……. 好きだよ 。
そう、少し空白を入れてからそう言った。
et「 私も 。
うりの瞼がだんだんと落ちてゆく。
私も彼の呼吸の音に耳を澄ませながら、目を閉じた。
雨音がまだ、遠くで続いている。
そして心の中で、何度も何度も願った。
――どうか、夢でありますように。