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始業式後の放課後教室は調理実習の準備でざわざわしていた。今日のメニューは、冬らしいクッキー。生地を混ぜて、型を抜いて、オーブンで焼くだけだから、中学1年生でも簡単に作れる。
「今日、琥珀と一緒だね」蒼真の静かな声に、琥珀は思わず顔を赤くして頷いた。
「う、うん…楽しみだね」
材料をボウルに入れて混ぜるとき、自然と二人の手が重なる。琥珀は心臓が跳ねるのを感じ、思わず手をそっと引いたけれど、蒼真は優しく手を添えてくれる。
「大丈夫?」
「う、うん…」
顔を少しそらして答える琥珀。手が触れただけで、胸がじんわり熱くなる。
次は型抜きの作業。二人でテーブルを挟んで並び、クッキー生地に型を押す。小さな手の動きに合わせて、自然と顔が近づく。琥珀は思わず手を止め、蒼真の顔をちらりと見てしまった。
蒼真も少し赤くなって微笑む。その笑顔だけで、琥珀の胸はドキドキして、手元の作業が少しだけぎこちなくなる。
「…この形、可愛いね」
蒼真がさりげなく言った言葉に、琥珀は思わず顔を手で隠す。
「そ、そうかな…」
頬を赤くしながら答える琥珀。胸の中で「蒼真に褒められた…!」と嬉しくて跳ねる気持ちを抑えるのが大変だった。
オーブンに入れて焼いている間、二人は片付けをしながらふと目が合う。手が触れたり肩がかすかに当たったりするたび、胸の奥がじんわり熱くなる。
「ねえ、また一緒に作ろうね」
蒼真が小さな声で言った。
琥珀は顔を上げ、思わず微笑む。
「うん、私も!」
オーブンのタイマーが「ピピッ」と鳴ると、教室のざわめきが少し落ち着いた。
蒼真と琥珀は、そっとオーブンの扉を開ける。香ばしいクッキーの香りが、二人の鼻をくすぐる。
黄金色に焼けたクッキーが並ぶ天板を見て、琥珀は思わず「わあ…」と小さな声を漏らした。
「うん、いい感じに焼けたね」
蒼真も微笑む。目が合うと、胸の奥がじんわり温かくなる。
琥珀がひとつクッキーを手に取って口に入れる。
「…あ、あつっ!」
思わず顔を赤くして手で口を覆う。
「猫舌なんだっけ?」
蒼真が笑いながらそっと手を添えて、クッキーを冷ますように持ってくれる。
「う、うん…」
琥珀は照れながら頷き、手元のクッキーを蒼真に半分差し出す。
「じゃあ、一緒に…」
その瞬間、手が触れ、自然と顔が近づく。胸の奥がじんわり熱くなる。
二人はクッキーを一口ずつ食べる。
甘いチョコチップと香ばしい生地の味に、自然と顔が近づく。
「美味しい…」琥珀の声が小さく震える。
蒼真も頬を赤らめながら、「ほんとだ…琥珀と食べると、もっと美味しい」と返す。
クッキーの温かさと、手の触れ合い、目と目が合う時間。
教室には冬の光が差し込み、甘い香りに包まれた二人だけの世界があった。
「また、こうやって一緒に…」琥珀が呟くと、蒼真はそっと手を握る。
言葉は少なくても、気持ちは確かに伝わった瞬間だった。