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体育館は、クラス対抗ロープジャンプの練習で賑やかだった。長いロープがリズムよく回り、順番にクラスメイトたちが飛んでいく。
「次は琥珀!」
その声が耳に届いた瞬間、胸が強く跳ねる。蒼真が隣でロープを回してくれているのを見て、少しだけ安心するけれど、それ以上に心臓がドキドキと激しく脈打つのを感じる。
(大丈夫……落ち着いて……)
八の字ジャンプ、練習は1回だけ。慎重に、一歩踏み出す。けれど、足元が少しふわりと浮くような感覚がして、胸が高鳴る。
「よし……行くよ。」
――飛ぶ!
軽やかに着地して、ほっと息を吐いた瞬間、周りから「上手!」という声と拍手が聞こえて、胸の奥があたたかくなる。
蒼真の微笑みが、心臓をぐっと掴んで離さない。あの優しい笑顔に、胸の奥が少しずつ溶けていく感じがする。
「いい感じだね。」
その言葉が、琥珀の顔をほんのり赤くさせる。心臓がドキドキして、顔を伏せることしかできなかったけれど、内心では嬉しさと照れくささが入り混じって、もうどうしようもないくらい胸がいっぱいになった。
そして、いよいよ本番。
体育館に響く応援の声。順番が回ってくると、胸の鼓動がさらに大きくなっていく。
(大丈夫……冷静に……)
八の字ジャンプ、本番は1回だけ。集中して踏み出す――
――飛ぶ!
しかし、着地の瞬間、バランスを崩して前に倒れそうになる。
「わっ……!」
思わず声を上げた琥珀に、女子たちが一斉に「きゃー!」と叫ぶ。その瞬間、蒼真がすばやく手を伸ばし、しっかり支えてくれる。
「大丈夫?危ないだろ。」
その手が、琥珀の腕を優しく包み込んだ瞬間、心臓が一気に高鳴る。恥ずかしさと安心感、そして少し甘い刺激が入り混じった感覚に、思わず息を呑んでしまう。
「ありがとう……」
蒼真の温かい手に支えられながら、琥珀は小さく息をつく。彼のぬくもりが、心の中までじんわりと染み込んでくる。
「怪我してない?でも、本当に可愛いな。」
その一言が、胸の奥で熱く広がる。彼の声が耳元に響くたび、琥珀の心臓はさらに速く打ち始める。
教室に戻ると、莉子と優香が駆け寄ってくる。
「琥珀、見たよ!あのずっこけ、めっちゃ可愛かった!」
「ほんと、なんであんなに可愛いの?」
琥珀は顔を手で覆いながら、もじもじと答える。「ち、違うよ……飛んだだけで……」
「いや、十分可愛いから!」
莉子が肩を軽く叩き、優香も笑いながらうなずく。
その時、蒼真が静かに琥珀を見守り、優しく言う。「見てたよ、ちゃんと。」
その言葉に、琥珀の胸がじんわりと熱くなる。顔が赤くなり、心臓の鼓動が耳元で響くのを感じながら、ただうなずくことしかできない自分がもどかしい。
授業が始まる。静かな教室、蒼真と隣同士で座っているだけで、琥珀の胸はまだドキドキしていた。
ふと、蒼真がノートを覗き込みながら、指で何かを書き込む。
「ここ、こうするとわかりやすいよ。」
手が触れるだけで、胸がぎゅっと締めつけられるような感覚。小さな声で「えっと……ありがとう……」と呟くと、蒼真はにっこりと微笑んで、何も言わずにそっと支えてくれる。そんなさりげない優しさが、琥珀の心をぐっと掴んで離さない。
その時、教室が突然揺れた。
「え?!」
最初は小さな揺れだったが、すぐに机がガタガタと音を立て、教室中がざわつく。
「地震だ!頭を守って!」
琥珀は混乱しながらも机の下に身を潜めようとする。その瞬間、蒼真がすばやく彼女を引き寄せ、背後から抱きかかえるように守ってくれた。
「落ち着いて、大丈夫だよ。」
蒼真の温かさに包まれ、胸がぎゅっと締めつけられる。恐怖よりも彼の手のひらの温もりが心に響いて、息を呑んでしまう。心臓が早鐘のように打って、すぐに耳までその音が届く。
揺れが収まり、教室が静かになった瞬間、琥珀は離れようとしたが、蒼真は優しく手を引いて止めた。
「大丈夫だった?怖かった?」
思わず顔を赤くしながら小さくうなずく。
「うん、ありがとう。」
クラスメイトたちはささやき始める。「あれ、蒼真と琥珀、すごく近かったよね?」と。偶然かもしれないけれど、二人の距離は確実に縮まっていた。
授業再開後も、胸はまだ高鳴り続けている。呼吸を整えながら机に手をつき、隣の蒼真を横目で見る。
ふと、教室の隅からいたずらっ子の声が。
「ねえ、琥珀ー、ちょっと押してみよっか?」
「えっ、ちょっ……!」
前に転びそうになった琥珀の体は、ふわりと蒼真の肩にぶつかる。
「わっ……!」
顔が真っ赤になり、心臓が地震の時より速く打ち始める。蒼真も一瞬驚くが、すぐに両手で背中を支えてくれる。
「大丈夫?怪我してない?」
「う、うん……ごめんなさい……」
「謝らなくていいよ。」
肩に触れたまま支えてくれる蒼真。その温かさが、琥珀の胸を熱くし、息を呑むほどに強く感じられる。周囲のざわつきも、今はどうでもよかった。
琥珀の心の中で、小さく呟く。
「地震も怖かったけど……今の方がドキドキする。」
「やっと帰れる……!」
琥珀は机に背をもたれさせ、ふぅっと息をつく。心臓はまだドキドキしている。地震、ぶつかり事件……今日一日で何度も胸を打たれたせいだ。
「琥珀、荷物一緒に持っていく?」
蒼真が静かに声をかける
えっ、う、うん……」
声が小さくなる。胸が高鳴りすぎて、言葉を選ぶ余裕がない。蒼真の近くにいるだけで、心臓がどんどん速く打っている。
廊下に出ると、クラスメイトたちが次々と教室を出ていく。琥珀は少し遅れて歩き出すと、運悪く足元の小さな水たまりにつまずきそうになる。
「わっ……!」
――その瞬間、蒼真がすぐ隣にいて、手を伸ばしてくれる。
「大丈夫?」
琥珀の体はふわっと支えられ、自然と蒼真の腕に触れる形になる。その感覚に、胸が激しく跳ね、息が少し乱れそうになる。蒼真の手が、琥珀の腕を優しく包み込むと、彼の温かさが全身を駆け巡り、心臓がさらに高鳴る。
「う、うん……」
顔が熱くなり、呼吸も少し浅くなる。蒼真の手のひらの温もりが、まるで自分の中に溶けていくような感覚に包まれる。
思わず、琥珀は少し手を握り返してしまう。だが、すぐに驚いて顔を赤くする。「ご、ごめんなさい……」と呟くけれど、蒼真は笑って、「謝らなくていいよ。」と優しく言ってくれる。
その温かい声と手のひらに、胸の奥がドキドキと痛くなるほど強く反応してしまう。周囲のクラスメイトのざわめきも、今はどうでもよくなった。二人の世界が、まるで他の音をすべて遮ってしまっているみたいに、静かなものに感じられる。
廊下を歩きながら、蒼真は何も言わず、でも常にそっと隣にいてくれる。その優しさが、琥珀の心に深く沁み渡り、胸の中で小さな火花が散るような感覚が続いている。
二人は無言のまま、校門前まで歩いてきた。夕日のオレンジ色の光が二人を包み、心地よい風が吹き抜ける。琥珀がぽつりと呟く。
「今日は、なんだか……色々あったね。」
その言葉に、蒼真は軽く笑って頷く。「そうだね。でも、無事でよかった。」
「うん……ありがとう、蒼真。」
琥珀は思わず目をそらす。胸が熱くて、心臓がまだバクバクしているのを感じて、顔を見られなかった。
その時、少し風が吹き、琥珀の髪が顔にかかる。「……あ、髪、邪魔だったら取ろうか?」
蒼真の手がそっと琥珀の頬に触れ、髪をかき上げてくれる。その距離感に、琥珀は動けなくなる。彼の指先が頬をかすめるたびに、心臓が高鳴り、身体の中で何かが弾けそうになる。
その温かな指のひとさし指が、髪を整える度に琥珀の体がふわりと浮くような気がして、思わず胸の中で息を呑んでしまう。
「は、はい……ありがとう……」
声が震えるのを自分でも感じる。目を合わせることができず、少し下を向いてしまうけれど、蒼真は何も言わず、ただ微笑む。無言でも、琥珀には十分だった。彼の微笑みだけで、心があたたかく、そしてどこか不安定になる。
その目と目が合った瞬間、琥珀の胸の奥がしびれるように強く脈打つ。時間が一瞬止まったかのような感覚に包まれ、琥珀は少しふらふらしながらも、ゆっくりと歩き出す。
校門を出ると、それぞれの帰り道に向かうことになる。しかし、琥珀は思わず振り返り、蒼真の後ろ姿を追ってしまう。
今日一日、あまりにも多くの小さな出来事が重なって、二人の距離が少しずつ縮まったことを、琥珀は心の奥でしっかり感じている。
「明日も……会えるといいな。」
小さく、心の中でつぶやく琥珀。夕焼けに染まる道、風に揺れる髪、そして蒼真の優しさ。すべてが琥珀の胸に小さな火花を散らしていた。
そして、彼女の心臓はまだ、止まることなくドキドキし続けていた。