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『星喰いのアーク』
第二話 黒星の力
目を覚ました時、レインは見知らぬ場所にいた。
冷たい地面。
湿った空気。
そして、聞こえるはずのない音。
――鼓動。
自分の心臓の音ではない。
身体の奥底から、もう一つの命が動いているような感覚だった。
「……ここは……?」
ゆっくりと体を起こす。
周囲を見渡すと、そこは先ほどまでいた森の中だった。
しかし、何かがおかしい。
木々は枯れていない。
地面も崩れていない。
だが、森全体が静まり返っていた。
まるで、この場所だけ世界から切り離されているようだった。
「夢……じゃないよな」
レインは自分の胸を見る。
そこには黒い星のような紋章が浮かんでいた。
触れた瞬間。
頭の中に声が響いた。
『起動確認』
「……誰だ?」
『第一段階、継承完了』
『星喰い能力、一部解放』
レインは周囲を見る。
誰もいない。
だが、声は確かに聞こえている。
「俺の中にいるのか……?」
数秒の沈黙。
そして返答。
『正確には、あなたと融合した存在』
『私は《アーク》』
「アーク……?」
『かつて世界を救い、そして世界に恐れられた力』
レインは眉をひそめた。
「世界を救った力なのに、なんで恐れられるんだよ」
するとアークは静かに答えた。
『星を喰らう力だから』
その言葉を聞いた瞬間。
背筋に冷たいものが走った。
「星を……喰らう?」
『星とは、ただ空に浮かぶ物ではない』
『生命、魔力、文明、記憶……世界を構成する全て』
『それらを吸収し、自らの力へ変える能力』
レインは言葉を失う。
そんな力が自分の中にある。
信じられなかった。
「そんなもの……俺が使えるわけないだろ」
『使用者の意思によって制御される』
『あなたが望まなければ発動しない』
「……本当に?」
『ただし』
アークの声が少し低くなる。
『力には必ず代償がある』
「代償?」
『星喰いは、力を求めるほど世界との繋がりを失う』
『使い続ければ、いずれ人間ではなくなる』
レインは拳を握った。
怖かった。
自分が自分ではなくなる可能性。
だが――
村のことが頭に浮かぶ。
母の笑顔。
いつも変わらない日常。
それを守れる力なら。
「……俺は使う」
『……』
「怖いけど、それでも必要なら」
アークはしばらく沈黙した。
そして。
『適合者として認定』
『第一能力を解放します』
瞬間。
レインの右手に黒い光が集まった。
炎でもない。
闇でもない。
星空そのものを閉じ込めたような光。
「これは……」
『《黒星》』
『触れた対象の魔力を吸収し、一時的に自身の力へ変換する』
レインが手を握ると、黒い光は消えた。
「魔力を吸収……」
その時だった。
森の奥から、大きな音が響いた。
ドン。
ドン。
何かが近づいてくる。
木々をなぎ倒しながら現れたのは、巨大な魔獣だった。
灰色の皮膚。
鋭い爪。
額には一本の角。
レインは知らない存在だった。
だがアークが告げる。
『危険度B』
『名称:グラウンドベア』
「B……?」
村の狩人でも滅多に戦わない魔物。
普通なら逃げるべき相手。
しかし、レインは動かなかった。
恐怖はある。
足も震えている。
それでも。
「試すしかないよな……」
グラウンドベアが咆哮する。
地面が揺れる。
巨大な爪が振り下ろされた。
「っ!」
レインは横へ飛ぶ。
間一髪で避ける。
「速い……!」
次の攻撃が来る。
避ける。
また避ける。
しかし、いつまでも続かない。
「くそ……!」
追い詰められる。
その瞬間。
レインの胸の紋章が輝いた。
『使用許可』
『《黒星》発動』
レインは魔獣の腕に触れる。
すると――
黒い光が広がった。
「グオオオ!?」
グラウンドベアが苦しそうに叫ぶ。
その身体から青白い光が抜け出し、レインへ吸収されていく。
力が流れ込む。
身体が軽くなる。
視界が広がる。
「これが……星喰い……」
だが次の瞬間。
レインは異変に気づいた。
魔獣の目から、恐怖が消えていた。
ただの敵ではない。
生きるために戦っていた存在。
レインは手を止める。
「……」
アークが問いかける。
『なぜ止める』
「俺は……全部を奪いたいわけじゃない」
『……』
「必要な時だけ使う」
レインは魔獣から手を離した。
すると弱ったグラウンドベアは、ゆっくりと森の奥へ消えていった。
『理解不能』
アークが呟く。
『星喰いの力を持ちながら、奪うことを拒否する』
『あなたは過去の適合者とは違う』
「過去にもいたのか?」
レインが聞いた瞬間。
アークは答えなかった。
代わりに。
『警告』
『新たな存在を確認』
『こちらへ接近中』
レインの表情が変わる。
「敵か?」
『不明』
『ただし、相手はあなたを知っている』
森の奥。
白い霧の中から、一人の少女が姿を現した。
銀色の髪。
青い瞳。
そして、レインの胸の紋章を見るなり呟いた。
「……本当にいた」
「千年前に消えたはずの力」
少女は剣を抜く。
「あなたが……星喰いなのね」
レインは身構える。
「誰だ、お前」
少女は静かに答えた。
「私はリリア」
「星喰いを監視する一族の最後の生き残り」
そして――
「あなたを殺しに来た」
新たな運命が動き始める。
コメント
1件
みぅ🤍🥀です レインの覚悟と迷いのバランス、すごく好きでした。「全部を奪いたくない」って力を使いながらも線引きするところ、ちゃんと人間らしくて…。アークの淡々とした声と、リリアが突然現れて「♡♡♡に来た」って言い放つラスト、痺れた🖤 次が気になりすぎる…!