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第三話 星喰いを狩る少女
森の中に冷たい風が吹き抜ける。
レインは目の前の少女――リリアを警戒していた。
銀色の髪が風に揺れる。
その手には細身の剣。
刃には青白い光が宿っていた。
「……俺を殺しに来たって?」
レインはゆっくりと後ろへ下がる。
「理由を聞かせろ」
リリアは表情を変えなかった。
「理由?」
少女は剣を構える。
「星喰いは、過去に一つの国を消した」
「存在するだけで世界を壊す力」
「それを持つ者を放置するわけにはいかない」
レインは拳を握る。
「俺は何もしてない」
「今はね」
リリアの瞳が鋭くなる。
「でも、その力はいずれあなたを変える」
胸の黒い紋章が熱を持つ。
アークが反応した。
『警告』
『対象から高密度魔力を確認』
『戦闘能力……推定A級』
「A級……?」
レインが小さく呟く。
「何か言った?」
「いや……」
リリアが一歩踏み出す。
「最後に聞く」
「その力を捨てる気はある?」
レインは黙った。
捨てる。
そんなことができるなら、とっくにそうしている。
だが。
あの夜。
黒い月から落ちた力。
自分が選ばれた意味。
まだ何も分かっていない。
「……できない」
レインは答えた。
「この力が危険なのは分かった」
「でも、俺はまだ何も知らない」
「知らないまま消されるなんて納得できない」
リリアの目が少し揺れる。
「……あなたは」
「本当に何も知らないのね」
その瞬間だった。
森全体に低い音が響いた。
ゴゴゴゴ……。
二人の足元が揺れる。
「何?」
リリアが周囲を見る。
すると地面に黒い亀裂が走った。
そこから黒い煙が溢れ出す。
アークが警告する。
『異常反応』
『星喰い因子に反応した存在が出現』
「星喰い因子……?」
レインが聞き返す。
次の瞬間。
地面から巨大な腕が伸びた。
「っ!」
二人が飛び退く。
地面を破壊しながら現れたのは、人の形をした黒い魔物だった。
全身が影のように揺らめいている。
顔には目も口もない。
ただ胸元に、レインと同じ黒い星の紋章があった。
「……同じ紋章?」
レインが驚く。
リリアの表情が変わった。
「まさか……」
「星喰いの眷属……」
黒い魔物が声を発する。
『見つけた』
『新たなる器』
レインの背筋が凍る。
「器……?」
『我らの王が待っている』
『星を喰らう者よ』
魔物は腕を振り上げる。
瞬間。
森の木々が一瞬で黒く染まった。
「下がって!」
リリアが叫ぶ。
彼女の剣から光が溢れる。
「《聖光剣》!」
振り下ろされた一撃。
黒い魔物を切り裂く。
しかし――
「効いてない……?」
傷はすぐに塞がった。
『再生能力確認』
『通常攻撃では撃破困難』
アークが告げる。
レインは歯を食いしばる。
「じゃあ……」
右手を見る。
黒い光が集まる。
「俺の力なら……」
『推奨』
『《黒星》使用』
レインは魔物へ向かって走った。
「レイン!」
リリアが叫ぶ。
黒い腕が迫る。
避ける。
さらに近づく。
そして――
触れる。
「《黒星》!」
黒い光が魔物を包む。
すると。
『エラー』
『吸収不能』
アークの声が響いた。
「え?」
魔物は笑った。
『同じ力では喰らえない』
「同じ……?」
その瞬間。
魔物の胸の紋章が輝く。
『我らは失敗した星喰い』
『貴様は完成された器』
レインの顔が青ざめる。
「失敗した……星喰い?」
リリアが叫ぶ。
「レイン!離れて!」
しかし遅かった。
魔物の手がレインの胸へ伸びる。
黒い紋章が反応する。
激しい痛み。
「ぐっ……!」
その瞬間。
レインの中のアークが初めて焦った声を出した。
『危険』
『第二段階へ移行』
『封印解除』
「何……?」
世界が静止した。
音が消える。
時間が止まったようだった。
そしてレインの目の前に、巨大な黒い星が現れる。
そこには文字が浮かんでいた。
『第一の星喰い能力』
『解放可能』
『選択してください』
『破壊』
『吸収』
『支配』
レインは息を呑む。
これが。
星喰いの本当の力。
選択を迫られる。
破壊するのか。
奪うのか。
支配するのか。
その時。
リリアの声が聞こえた。
「レイン!」
「あなたは……怪物じゃない!」
時間が戻る。
レインは目を開く。
そして選んだ。
「俺は……」
「俺のやり方で使う!」
黒い星が砕け散る。
そして――
新たな力が目覚める。
『能力解放』
《星喰い・吸収》
黒い光が魔物を包み込む。
しかし、レインは全てを奪わなかった。
必要な分だけ。
力だけを吸収する。
魔物は消えていく。
『ありえない……』
『星喰いが……制御した……』
最後の言葉を残し、影は消滅した。
静寂。
森に再び風が戻る。
リリアは剣を下ろした。
「……」
「何だよ」
レインが聞く。
少女は小さく呟いた。
「あなた……」
「本当に違うのかもしれない」
その夜。
二人の前に、新たな敵の存在が明らかになった。
千年前に消えたはずの星喰いたち。
そして、その王。
白い仮面の男は、遠くから全てを見ていた。
「面白い」
「制御したか」
「ならば、次の試練を与えよう」
男は笑う。
「目覚めろ」
「古代星獣よ」
世界を揺るがす存在が、再び動き始める。
コメント
1件
第3話、一気に世界観が広がりましたね! レインが「俺のやり方で使う!」と選んだ瞬間、すごく胸が熱くなりました。リリアの「怪物じゃない」という言葉も、彼女の心の揺れが伝わってきてグッときました。同じ力を持つ者同士がどう向き合うのか、これからも目が離せません。次回も楽しみにしています🌷