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「待たせたな」
「ううん。ありが……」
長谷川くんに目をやると、その両手にはダンボールの山。こんな量、一人で運べる訳なかった。
「ありがとう!」
慌ててダンボールの一つを持つけど、それは重くて、ふらついてしまう。
「お前はこれ!」
「でも」
「落としたら食材痛むだろ!」
そう言い四つあるダンボールなのに長谷川くんは三つ持ってくれ、私が持っているのは麺半分と紅生姜だけ。重いキャベツと豚肉と麺半分を、眉間にシワを寄せながら運んでくれた。
十分の距離を三十分かけて歩き、なんとか学校の冷蔵庫に入れることが出来た。
「ありがとう。ごめんね」
気付けば私は、額に浮かんだ汗をポケットから出したハンカチで拭いていた。
「べ、別に」
明らかに目を逸らしてくる姿に、私は自分のしていたことに驚き慌ててその手を引っ込める。
「か、帰ろうか。教室に鞄取りに行ってくるから休んでて」
私は思い足取りで四階の教室に行くけど、当然ながら南ちゃんも絵美ちゃんも、誰も居ない。
明日、来たくない。
完成された、模擬店を見て不意にそう思う。
「おまたせ。帰ろう」
私は長谷川くんを待たせていた家庭科室に戻る。笑わないと。だって、彼は私達のことなんか関係ないのだから。
外はオレンジ色から茜色に変わり、あと少しで日没になる。
早く、日が暮れないかな。私には眩し過ぎるよ。
珍しく私が前を歩くと、「おい」と呼び止められる。
「何?」
振り返らずに聞くと。
「喉乾いたな」
そう返事が返ってきた。
「あ、そっか。ごめんね、何か買ってくるよ! 何が良い?」
鞄から財布を出し、先程のスーパーに走ろうとする。だけど。
「お前、留守番な」
ポケットに財布を入れ、鞄を私に押し付けてきた長谷川くんは、店に入って行った。
「ん!」
すぐに戻ってきて差し出してくれたのは、売店で売ってあるのと同じカフェオレだった。
「くれるの?」
「お袋が、女子には優しくしろってうるせーから!」
「ありがとう」
少し歩くと、そこは大きな河が下に流れる橋の上。そこからの夕焼けは絶景で、日没が見れるスポットの一つだった。
歩行者用の橋の片側にはこの美しい夕日が見られるようにと簡易な休憩スペースがあり、長谷川くんはそこにドカッと座ったかと思えばペットボトルに入ったコーヒーを豪快に飲み始める。
私もそれに習って横に座り、大好きなカフェオレを吸い上げた。すると口に広がる優しい甘さに。思わず。
「お前さ、バカバカしいと思わねーのか?」
「……え?」
「あんな奴らに媚びへつらって。心読んでるんだろ? だったら浅はか過ぎる考えに、笑えてこないのかよ?」
「……笑えないよ。そんな」
そうだよ。笑えない。
人の気持ち知って嬉しかったことなんて、一度もないよ。
聞こえてくるのは、負の感情ばかりで。
嫌い。苛つく。消えろ。死ね。
そんな言葉まで聞いてしまって。
そんなこと思う人と、どうやって関係築けば良いのかとか全然分からなくて。
表ではニコニコ笑ってて。
心配する振りとかしてきて。
だから私は、聞こえない振りをしないといけなくて。
今まで我慢してきたけど、今日は人を貶める話までしてきて。
私の為だとか。
違うよね? 私と友達になったのは「利用する為」。
クラス委員とかの大変な役になりそうな時に、押し付ける相手が欲しかっただけだったんだよね?
私、本当は気付いていたよ。心なんて聞かなくても。
でも、やっぱり聞きたくなかった。
生まれてきてからずっと人の心を読んできているけど、まだ人の気持ちは分からない。
気に入らないなら、直接言えば良いじゃない? 嫌いなら、関わらなければ良いじゃない?
それなのに笑顔で近付いてきて、嫌なこといっぱい考えて。
それなら一緒に居なければ良いのに、どうして笑い合っているの?
あの二人が、互いのことも悪く思ってるのも聞こえてくるんだよ。
それなら、もう一人で居たら良いじゃない?
……あ、それは私もか……。
なんだ。私だって同じじゃない。
一人になりたいとか、正直負担とか思っていたよね? 否定出来ないよね?
そうゆうの、同じ穴の狢というんだっけ?
そっか。私も結局、同じなんだね。
「こんな力いらなかった!」
気付けば、私は大声で泣き叫んでいた。
消えて欲しいと何度も願った。
だけどそれは叶わなくて。
私のせいで、お父さんとお母さんの仲が悪くなってしまって。
私が気味悪い力を持って生まれてきたのは、お母さんのせいだと言うようになって。
そしたらお母さん帰って来なくなって。
お父さんも仕事で忙しいからって。
私が高校生になったら、全然帰ってこなくなった。
それはそうだよね。
心読んでくる娘なんて、気持ち悪いだろうから。
一緒に暮らしたくないよね。
……私が、生まれて来なければ良かった。
そしたらお父さんとお母さんは、今も。
かかお