千冬は 、可笑しいんです 。
「千冬 。聞いてる??」
何度呼んでも 、
「おーい 。千冬 ??」
何回も呼んでも、
「千冬ってば。」
近くで呼んでも、
彼はどこか一点をずーっと見つめているだけでした。
「千冬!!!!」
ようやく聞こえたのか、彼はゆっくりと目線をこちらに戻した。
「な 、なぁ 、?最近可笑しくね??」
そう聞いても彼は口を開けることは無かった。
「俺ね 、千冬が心配なんだぜ?
最近のお前ヤバいって。
客に声掛けられても返事しないし 、
もうそろそろ辞めた方がいいんじゃねぇの、?
仕事に影響が出てるぜ、?」
「…… すみません 。」
彼は表情を変えないまま、ぼそっと小さくその言葉を口にした。
「謝るんじゃなくてさ、俺は怒ってるんじゃねぇんだよ?
心配してるだけ。少しは自分のこと気にかけろって。」
「……すみません 。」
謝ることしか出来なくなっていた。
彼の笑顔を俺は、ここ最近、いや、もう何年も、
見たことがない。ずっとこの表情。
前までは、作り笑いだけだったけど、
最近、流石におかしい。
タケミチたちにも相談したが、
「それは、あの時からですね?
突然あーなっちゃって、
でもいじめ受けてたり、虐待とかではないんですよ。
本当に突然で、でも 、その理由を昔から聞いてるんですけどねぇ、
絶対言ってくれないんですよ、
話してくれればいいんだけどなぁ、」
そう終わらされた。
俺が辞めさせなきゃ。
「千冬。」
「どうしました ?」
「…もうさ 、薬辞めなよ。 」
そう彼に伝えると、彼は目を見開いて絶望したような顔で俺を見た。
「どうしてですか、なんで、俺は、!!
あれがないと、抑えられなくなるんですよ、?
お願いですから、取り上げないでください、
奪わないで、俺から、もう嫌だ、やめてくださ、
あれがないと 、!!」
彼はパニックになって、暴れだしたから、俺は咄嗟に、
彼を押さえ込んだ 。俺だって本当はこんなことしたくはない。でも、抱きしめるんじゃダメなんだ。
ほんとうにキツく、ぐっと、重く、苦しく、
押さえ込まないとだめなんだ。本人はそう望んでる。
俺にそれを伝えた。俺はそれを聞き入れるしかない。
「千冬、!大丈夫 、!俺がいる!!」
泣き叫ぶ彼を無理やりわざと痛くするように押さえつけるのに、
自分も、此奴も、傷ついて、
あの時、場地が紹介してくれた時には、あんなに、
あんなに美しいほど綺麗な笑顔を。
無邪気な笑顔を見せてくれたじゃないか。
「千冬、また近所の人に言われちゃうよ、?
怒られちゃうよ、?
いつもの部屋に行こ??」
押さえ込むのは酷く痛く苦しくさせ、彼にかける声は優しく、暖かく。
これはこいつが言ったんじゃない。
此奴を更にパニックにさせないようにするため。
大声を出しちゃいけない。怒鳴ってもダメ。
普通の声でも、怖くなるような事を言うのも、
テレビで起きるニュースは絶対に見せちゃダメ。
物騒なことも言わない。聞かせない。
救急車の音も、パトカーも、消防車の音も聞かせちゃダメ。
大きな音は絶対にダメ。アラームもダメ。
シャワーの音でさえ、なるべく静かに。
ドアのノックは優しく。
皿を置く音も、優しく、音をあまり立てないように。
いつも彼のそばにいてあげなくちゃならない。
いつも1回は抱きしめる。頭を撫でてやる。
そうじゃないと彼は、
自分を失う。
近所の人がまた大きな音でノックを叩く。
またうるさくしてしまった。謝りに行かなければ 。
でも、千冬が。
やめてくれ。大声を出さないでくれ。
ダメだ。これ以上あいつを壊さないでくれ。
俺は千冬を押さえつけるのに必死で、近所の人の元に行けない。
こんな生活が度々来る。
それでも耐えられる。どんなに過酷でも。
千冬の傍には誰かがいてやらないといけない。
じゃなきゃこいつは死んじまう。
「一虎くん、」
唐突に話しかけられどうしたも何も言えなかった。
「…俺の事、捨ててください、」
いきなりそんなこと聞かれた。でも、俺は即答した。
「無理。」
「… もうこれ以上迷惑はかけられないです、
こんな束縛よりも最悪な状況って、
友達とも遊びに行けないだなんて、
俺大丈夫ですから、薬もありますし、」
「飲めないだろ?ひとりで。」
「飲めますよ、」
「無理だって。」
「1人でも出来ます!!」
ここから言い合いになって、今更だが、なんであんなことを言ってしまったんだろう。
あの言葉を言った時の彼の反応は今でも記憶に刻まれている。
「飲めないって。だって千冬は、
あんなことさえ言わなければ、
コメント
6件
頑張れ!一虎!それじゃあちふゆんをあげられないぞ!(?)
1コメ!! 一虎がずっと一緒に居たのかな? 一虎!ずっと千冬を守れよ!