勢いで口に出した声は、彼を絶望に陥れた。
「ぁ、ごめん、ちがう、そうじゃなくて、千冬、
聞いて、ちふ((」
彼は頭を押さえ込んで、泣き喚き始めた。その声はまるで、なにかに怯えているように聞こえた。
「っ、千冬、!聞いて、!!俺の話を((」
「も゛う゛い゛い゛よ゛!!!でてって!!!
でてってよ゛!?!?捨ててよ゛!!!
もう嫌だぁぁぁっ !!」
また千冬を壊してしまう、また、俺が。
初めは、こんなんじゃなくて、何度も彼を泣かせてしまった。テレビ、大きな音を立てない、シャワー、
俺は分からなくて、急にパニックを起こす彼を少しづつ気づいて、気にかけていたと言うのに、
また、また俺は、彼を、苦しめてしまう。
1年前に事故にあった場地には、こんなこと言えなかった。言わなくとも、彼は千冬と昔からの仲だから、
もう誰か伝えているだろう。
「千冬、!!聞いて、!悪かった!!俺が悪いから!!千冬、!」
「ぁぁぁっ !!来ないで!!来んな!!もうやめてよ、ごめんなさ、もういいから出てってよ!!!」
そう泣き喚いて、俺を突き放そうとしても無理だよ千冬。そんな状態でお前はまともに生活も、1週間くらいは出来ないだろう?
俺はそれを知ってる。お前は、何も出来ない。
だから俺がいてやらないと。
そう思ってしまう。そんなことないのに。
彼は彼で、頑張ってるのも知ってる。
一生懸命俺のために、ひとりで家事をやろうとしてくれてるのも知ってる。練習してるのも知ってる。
ごめんな。それを毎回俺は止めたな。
お前が、苦しむ姿が見たくなくて俺はとめた。
俺は、苦しむ姿を見たくなかった。でも、
苦しませてたのは俺なのかもな。
お前は頑張ってたのに、皿を割るのが怖くて、
お前には皿洗いをやらせなかった。
料理をやろうとしたお前を辞めた。火傷も、包丁を見させるのが嫌だったから。
お前は、いつも、刃物を怖がる癖に。なんで握って、わざわざ震える手で食材を切るのか分からなくて、
俺はお前をとめた。
シャワーの音がダメだから、俺はお前をとめた。
テレビを見て、少しは社会に馴染もうとしていたお前を止めた。社会を知ってもらいたくなくて。
ニュースを見て欲しくなくて。
洗濯物をやろうとしたお前を止めた。
ベランダに言った時とかに、もしもサイレンがなったらと思ったから。
外に出すことを辞めさせた。外の恐ろしさをあまり知らせたくなかった。
仕事も、辞めさせようとしたな。
これじゃぁまるで、お前は、牢屋にいるみたいになっちまったな。
ごめん。ごめん。本当にごめん。
「千冬、」
おれは彼の名を呼び、またいつものように強く抑えようとするために、彼に近づいた。
いつもなら、お前は暴れ回るだけなのに、お前は、俺を否定した。
お前は本を俺の方に投げた。それがどうしよいもなくいらついた。
俺はいらついた。それでもお前は否定し続けて、ものを投げた。俺はお前の両手首を強く握り、
怒鳴りつけてしまった ______ 。
「 俺はお前のためを思って全部やめさせてきた。
でもお前は言うことを聞かなかった!!
それを毎回俺は慰めるなりした。
なのにお前は自分の状況も知らないで、
ずっと、ずっと、、
千冬は自分のことわかってないんだよ!?
苦しいのに!!無茶ばっかするからこうなるんだ。
自分のこと考えてから行動しろよ!?
苦しむお前を見たくなくて努力したのに!!
また言い過ぎてしまった。あぁ、何やってんだよ、
俺は。ダメだ。今の俺は千冬と一緒に居られない。
見てよ、この千冬の姿を。
怯えて震える手が止まることはなくて、何も声がなくなってしまうほどに、涙を流している。
彼は、怯えているんだ。俺に。
安心するはずだった場所が、辛い場所にしてしまった。
今の状態のこいつを1番理解してるのは、俺なのに。
「ごめん、すぐ戻るから、今は、他のやつに回すね、ごめん。」
俺はそっと手を離し、出ていった。
みんなと飲み会をして、ようやく帰ろうとひと段落ついた頃に、一虎くんから電話がかかってきた。
現在の時刻は午前2時をすぎている。こんな時間に電話だなんて、きっと千冬のことだろう。
彼はよく千冬を見てくれてて、残酷な中でも、彼のために彼のそばにいた。
「もしもし?一虎くん??」
電話口から聞こえてきたのは、すすり声だった。
何故か泣いていた。
「どうしたんです??」
「… 千冬を任せる、今の千冬に俺は近づいたら壊しちまう、
お前しかいないんだ 。ごめん。」
彼の声は、ちゃんと聞き取れた。
「何があったんです?」
しばらく沈黙が続いた。触れてはいけないところだったのだろうか。
「 あいつに強く言いすぎた、今は怯えてる。
だから、お前がそばにいてやって、」
そう伝え終わると彼は電話を切った。
さてと。
行きましょうかな、
ひとりじゃ心配だから、すぐ近くにいたマイキーくんとドラケンくんも誘って千冬の家に向かった。
コメント
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ちふゆん!!やだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! 一虎!頑張れ!
千冬ちゃァァァァん!泣 そんな事言わないでぇぇぇぇっ!泣