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木村 花



「はーい 静かにしてー」



自分の声が、思ったより明るく響いた


朝の教室はまだざわついていて、

私はいつもより少し 大きめに笑う。


学級委員は、こういう役だと思っていた。


空気を止めないこと

重くしないこと


名簿を開いて、名前を呼ぶ。


返事が返ってくるたび、

私は軽く頷いて 口角を上げる。


伊上君の席だけが 空いていた。


でも、そこを見るのは 一瞬だけ——


すぐに視線を前に戻して、

何もなかった みたいに続ける。


体育の時間


私はベンチの端で、

静かに みんなを見ていた。



「委員長ー!ちゃんと見てる?」



誰かにそう言われて、私は笑って 手を振る。


見てるよ、

ちゃんと。


海利君は今日も走っていなかった。


ストップウォッチを持って、 日陰に立っている。



「また見学か、わんちゃんサボり?笑」



誰かの声に、私は 曖昧に笑う。


本人の方を見ると、目が合いそうになって

私は先に視線を 逸らした。


心配そうな顔をするのは 簡単。


でも、それをしたら 特別 になる気がして。

私は笑ってる方が 楽だから——


教室に戻ると、修哉君が騒いでいた。


誰かを笑わせて、誰かに突っ込んで

場を回している。



「修哉君、うるさいよ笑」



そう言いながら 私は笑う


本気で止めたいわけじゃない。


あの明るさがあるから

このクラスは 崩れていない。


昼休み


トイレに入った私は、

いつもの癖で小さく息を吐いた。


一人になれる場所。


個室の鍵を 閉めた直後、隣から声がした。


ふと天井を見上げた瞬間

水の入ったバケツが 落ちる音がした。


バンッ


跳ねる音


笑い声



「古西さーん、

あんたそんなとこで弁当食べて美味しいの?笑」


「便所飯とか、マジウケるんだけど笑」



古西雛子さん…


私は、口元に手を当てた。

声が出そうになるのを 必死で抑えた。


何か言えば 止まるかもしれない

でも、そのあとが 怖かった。


私は息を潜めたまま 何も言わなかった。

足音も立てず、ただ時間が 過ぎるのを待った。


笑い声が遠ざかって、静かになる。

個室を出ると 古西さんが手を洗っていた。


髪も制服も濡れているのに、

顔だけは いつも通りで。


私は いつもの顔を作る

口角を上げて、声を明るくする。



「放課後、委員会あるからね。」



それだけ。


心配も、怒りも、全部飲み込んで——


古西さんは一瞬だけ私を見て、何も言わずに頷いた。

教室に戻る途中、胸の奥が ぎゅっとする。


それでも私は 何もなかったように席に戻る。


学級委員は、クラスを回す人で

止める人じゃない。


そう思わないと 立っていられなかった。

今日も私は笑っている。


ちゃんと見えてるのに、手は伸ばさない。


それでも、これが正しい気がして——










「苦しいなぁ…」




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