テラーノベル
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朝、教室のドアを開けると少し遅れて
ざわめきが広がる。
それに合わせるみたいに 俺は声を出す。
「おはよー、今日小テストやばくね?」
誰かが 適当に返して、笑いが起きる。
狙ったわけでもない。
ただ、そうなることを 知ってるだけ。
席に座る前に 二、三言やり取りして 鞄を置く。
黒板の前では まだ先生が準備している。
その隙に、後ろの席のやつが 消しゴムを落として
それを拾って 渡す
「さんきゅー」
「どいたまー」
それだけ。
授業が始まると、教室は 一気に静かになる。
ノートを取って、当てられたら答えて——
外したときは笑えばいい
空気はそれで流れる。
昼休み
机を寄せて誰かが話し始める。
俺は机の端に腰かけて、話を聞きながら相槌を打つ
話題はころころ変わる
昨日のテレビ、部活の愚痴、誰かの失敗——
笑うところでは笑って 突っ込むところでは突っ込む。
みんなが俺を見る。
その視線が集まる感じに、特別な意味は感じてない。
ただ、いつも こうなだけ。
体育のあと、廊下を歩きながら
誰かが肩を 叩いてくる。
「さっきのやつ面白かったわ笑」
「やろ?笑」
笑って返す。
それで終わりなんだ。
放課後、チャイムが鳴る
教室がほどける。
「じゃあな」って言い合って
校門に 向かう。
家に帰ると、靴を揃えて玄関を上がる。
「ただいま」
「おかえり」
リビングに行くと、母が 夕飯の準備をしてる。
テレビの音が 小さく流れてる。
「学校どうだった?」
「…楽しかったよ」
それだけで、会話は十分みたいに終わる。
余計なことを聞かれないのは 嫌いじゃない。
ご飯を食べて、食器を下げて
部屋に 戻る。
ドアを閉めると 外の音が遠くなる。
ベッドに座って、スマホを 開く
通知はいくつかある。
既読をつけて 短く返す
画面を伏せて 天井を見る。
昼間の教室が、少し遅れて頭に浮かぶ。
笑ってた顔
話してた声
近くにいた人達——
その中に、なんとなく
視線を 合わせたくない顔が混じる。
理由は考えない
考えたところで、名前が つくだけ。
胸の奥が、ほんの少し ざらつく。
でも それを外に出すほどのものでもない。
布団に横になって、目を 閉じる。
暗くなると 昼間の音が嘘みたいに消える。
明日も、同じ時間に 教室に入る。
同じように声を出す
同じように笑う
それでいい。
それが一番、簡単なんだ——
「嫌い。」
コメント
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毎度ある最後の「」の中の言葉がすごく気になって眠れません。次が読みたいとすごく思える書き方をしていて尊敬です✨