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いまこの瞬間まで俺は喰らう側では無く、貪り喰われる側の人間だった。目の前に広がる光景に嫌気が差し、今すぐにでも役目を放棄して逃げ出したかった。
「そうやってまた、逃げて隠れて何一つ成し遂げる事無く、無様に消え行く結末を選ぶのですか?」
事の始まりから終盤まで人を小馬鹿にするのが得意だった彼女は、俺の顔を見て真剣な眼差しを向ける。
あぁ、そうだ。その通りだ。全て彼女の言う通り。俺は負け犬だった、嫌な事から逃げて隠れてまた後悔する。
何度も頭を抱えて「あの時こうすれば」を繰り返し続けた。過去に戻れればと考えた時期は両手だけでは数え切れないほどにある。
「悔しい、今ここで変わりたい。そう願うなら、カードを取るべきなのでは?私は貴方の選択を尊重しますよ」
残された一枚のカード、それを手に取るのは自殺行為に等しい。だが大逆転の一手の可能性も残されている。
ここでもし引かずに顔を背ければ、また俺は後悔するかもしれない。俺は、俺はもう一度。
「やってやるよ、お前が言う運命様に抗う事なんてこのふざけたゲームが始まる前から決めてたんだ!!」
「………へぇ、挑戦者と呼べる顔つきになってきましたね〜!?このまま負けを認めるか、勝利の一手か分からないカードを取るか。その選択を迫られた貴方の答えを!!私は!!知りたいのです!!」
俺はこのゲームで沢山の敗北を味わった。その度に無駄な殺生が行われ、俺は心が荒んでしまった。―――それを終わらせる。この狂ったゲームを終結へと導く。
指先がカードに触れ、俺は勢い良くカードを引いて机上へと叩き付ける。
先程も述べたが、いまこの瞬間まで俺は貪り喰われる側の人間だった。この一手が、俺の勝敗を分ける。
「なら特等席でじっくり見せてやるよ。 チェックメイトだ、バニーガール」
会場に居る人間全員の生死を委ねられ、主催者との一騎打ちを任せられた、たった一人の男。
これは互いに互いを騙し合い、時には絆を深め、時には殺し合う『ゲーム』の盤面で繰り広げられる壮絶な戦いを描いた物語。
その最後を見届ける瞬間は、今では無い。
サムネでお借りしたイラスト
・立ち絵制作 いざあく(https://isaac-0666.booth.pm/) 様