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Side:彼岸 —— 大蛇丸(おろちまる)。
かつて伝説の三忍と謳われ、世界の理とあらゆる禁術を解き明かそうとした究極の探求者。五大国の忍びたちがどれほどその名を忌み嫌おうとも、僕たち「彼岸」にとって、あの御方は唯一無二の絶対的な指標であり、到達すべき絶対の天秤だった。
だが、あのお方ですら世界に存在する全ての術、全ての世界の理を解き明かせたわけではない。
大蛇丸様が辿り着けなかった領域。
あのお方すら知り得なかった未知の忍術、そして未到達の「仙術」の亜種。
それらをこの手で暴き出し、解明し、我らの血肉とすること——それこそが、我ら「彼岸」が存在する唯一の存在理由であり、至高の教義(イデオロギー)だった。
風の国と火の国の境界に広がる、荒涼とした岩塩の洞窟。
篝火の怪しい光が照らし出す地下アジトで、僕——鏑木カムラは、粘りつくような黒い雷——『闇電』を指先に走らせながら、一枚の古い羊皮紙を眺めていた。
「あー……だりぃ。カムラぁ、またそのカビくさい紙見てんの? 立ってるだけで疲れるから、早く次の目的地教えてよ……」
岩に背をもたれかけ、欠伸を噛み殺しているのは水の国の抜け忍、蒸月(じょうげつ)だ。
全身から漂う熱い水蒸気が、洞窟の冷気をじわじわと奪っていく。
「静かにしろ、蒸月。大蛇丸様の手記と、我らが各地から集めた秘術の記録を照合しているのだ」
僕が淡々と応えると、横から派手な金属音が鳴り響いた。
「ヒャッハー! 堅苦しいこと言ってんなよカムラァ! 知識も術も、全部力づくで分捕って、グチャグチャに噛み砕けばいいだけの話だろーが!!」
イワドが爆笑しながら、手元で重力の球体を弄んでいる。奴の周囲では、巨大な岩石が重力を失ってふわふわと浮遊し、次の瞬間に激しい音を立てて粉砕されていた。土の国を追われた狂気のパリピ。奴にとって、大蛇丸様の思想すら「最高の狂乱を楽しむための最高の玩具」でしかない。
「イワドちゃん、せっかくのイケメンな俺の髪に砂埃がかかるじゃん〜? やめてよホント」
浮遊する砂鉄の波に乗って、軽体術で降り立ってきたのは風の国の抜け忍、テッサだ。
チャラチャラとした態度で前髪をかきあげながら、テッサは僕の横顔を覗き込んできた。
「で? あのたつまきの里のドラゴンちゃん——『たつまきアカネ』の件でしょ? カムラ、すっごく執着してるじゃん」
「……執着ではない。精査だ」
僕は眼鏡の奥の目を冷たく光らせた。
「あのアカネという素体が扱う『竜人化』……あれは単なる一族の血継限界でも、一般的な風遁の形態変化でもない。体内のチャクラを極限まで圧縮し、龍という『自然の概念』に無理やり己の肉体を適応させている。……即ち、あれは大蛇丸様すら未完成のまま残された『仙術(自然エネルギーの取り込み)』の、極めて特異な自然発祥の変異種だ」
その言葉に、テッサがニヤリと口角を上げた。
「へぇ〜? 大蛇丸様すら手に入れられなかった『仙術のピース』ってワケ? それは熱いねぇ」
「大蛇丸様は、龍地洞の仙術を完全に体得することができなかった。……故に、肉体を何度も乗り換える呪印という手段を取られた。だが、あのアカネというガキの体内では、自然エネルギーと本人のチャクラが、歪ではあるが『龍の肉体』として固定化されている」
僕は『闇電』を爆発させ、足元の岩を黒く焦がした。
「大蛇丸様が知り得なかった仙術の奥義……それを我らが解明し、我が物とすること。それこそがあのお方への至高の捧げ物であり、我らが大国を凌駕する唯一の道だ。あのガキの肉体とチャクラ構造……何としても手に入れる」
「あー……めんど。要するに、あの赤髪のガキを生け捕りにすればいいんでしょ?」
蒸月がダルそうに立ち上がる。
「ヒャッハー! 龍の肉体を重力でギシギシに絞り上げて、仙術のチャクラを絞り出すのか!? 楽しすぎるだろそれぇ!!」
イワドが歓喜の悲鳴をあげる。
「おっと、あの子についてる根暗な傀儡師と変態音響使いも邪魔だしね〜。ついでに木ノ葉の白眼のぼっちゃんたちもまとめて砂鉄で固めちゃおうか」
テッサが砂鉄の槍をクルリと回転させた。
「……行くぞ」
僕は暗闇の中へと歩き出した。
大蛇丸様が求め、届かなかった世界の真理。
大国が知る由もない、未知なる仙術の狂気。
たつまきアカネ——お前のその『龍の血』、骨の髄まで解剖し、我らの糧としてくれる。
漆黒の『闇電』が、暗闇の奥で不気味に蠢いていた。
コメント
1件
うわ、この「彼岸」の連中、めちゃくちゃ怖いけどカッコいいですね……! 大蛇丸様を「絶対の指標」と崇めつつ、その未到達領域を自ら切り開こうとする執念が、カムラの淡々とした口調からひしひしと伝わってきました。特に「執着ではない。精査だ」の台詞、彼の狂気じみた冷静さが滲み出ていてぞくっとしました。蒸月のダルさ、イワドの破壊衝動、テッサのチャラさ——それぞれの抜け忍たちのキャラ立ちも鮮やかで、アカネたちとの対決がどうなるのか、今から本当に楽しみです!
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琴葉つきね
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