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「この間の返事だけどさ、いいよ」
緊張で青白くさえなっていた彼のぱぁっと花が咲いたような笑顔を生涯忘れることはないんだろうなとその時思った。
「本当ですか?!本当に?嬉しいです!!」
こっちの気も知らないで振り回してばっかりのくせに。
そう思うのに、顔は綻んでしまって。
あぁ、もう一生かなわないんだろうなと思ってしまった。
自分の心の整理がついてから彼に自分は記憶をなくす以前の知り合いで、それなりに仲が良かった事を伝えた。
以前の彼に好意を抱いていたことは苦い思い出のまま記憶に保存されているのと単純に恥ずかしいから伝えなかった。
「どうしたんだよ」
事後、突然泣き出した星導の頬を撫でる。
心当たりは、なくはない。ただ、余りにも唐突で困惑した。
グスッ…
綺麗な顔が涙で濡れて、鼻をすする。普段大人びている印象なのにこう泣かれると表情の幼さが目立つ。
連想するのは子供の夜泣きだ。
「なんでもない……から」
「何かあるから泣いたんでしょ」
「んん……小柳、俺のことちゃんと見てよ」
「え?」
頭をよしよししていれば突拍子のないことを言われて困惑する。
「なんか…さぁ、たまに俺と……誰か重ねて見てない……?」
「誰か………?」
「今のさぁ…ヒック…」
「ゆっくりでいいよ」
「うん……。何か、懐かしそう顔がさぁ……そう見えて……」
「うん、うん……」
しゃくり上げながら言葉を発する彼に相槌をうちながらふと考えつく。
「あ……記憶あった頃の過去のお前だよ」
「へ……?」
「学生だった頃の仕草、たまにやってたりするんだよお前。無意識だから気づいてないんだろうけど」
彼はぽかんとした後。ぐい、とガサツに涙を腕で拭った。
泣いて赤くなった目が動揺で揺れている。
「え……前の俺?」
「そ」
数秒フリーズしてからガバッと抱きついてきた。
「ちょっと、何?!痛い、痛い」
「何でもない」
「過去の自分に嫉妬したってこと……?」
「うるさい!言うな!」
彼にホールドされたまま、ハグされた状態でゴロゴロ転がった。話をしようと口を開けば眼前に彼の目が。
時間差でキスされている事に気がついた。
角度を変えて何度も触れるだけのキスをした。口を塞ぐにしては明らかに柔いやり方。
「……もうそれ以上言わないで」
「分かった」
顔を真っ赤にした彼にそう言われた。これじゃあ数分前までどっちが抱かれていたかなんて分からない。
「はぁー……安心した」
枕を抱きしめながらドサリ横になって彼はそう呟いた。