テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
時は放課後。今日も嫌々トイレ掃除をし、花子に用事があるからと女子トイレを離れた。 行先は、理科準備室。そう。土籠に零のことを聞きに行くのだ。もちろん、本も読んだ。が、寝落ちした。途中から本を開くのも面倒臭いので聞いてしまう方が楽だと判断した。
「土籠先生いらっしゃいますか?」
「ん?おお、お前か。入れ」
「あれ、先輩?!」
「え、光くんもいたの?!」
まさかの先客に驚く寧々。担任と言えど放課後に用事だなんて珍しいとでも思ったのだろう。
「先輩はなんでここに?」
「それはね、零さんについてちょっと聞きたいことがあって…」
「零さん…って、七不思議、零番目のことっスよね」
「そうそう。逆に光くんは何の用事で?」
「オレはその零の姉について蜘蛛野郎に…」
「“土籠先生”と言いなさい。はあ…二人揃って立花姉妹のことか。ま、いい。いちいち説明する回数を増やさなくて済む」
───────────
「────それで、具体的にどんな話だ?」
「えっと、零さんが、…光神さんが生前のときの話で…」
「それなら昨日渡した本に全部書かれてるじゃねェか」
「んー…それそうなんですけど…あ、昨日、花子くんに零さんについて何か知ってるんじゃないかって聞いたんですけど……上手くはぐらかされました」
あははー…と苦虫を噛み潰したように言った。それを聞いた土籠は「なるほどねェー……」と呟いた。
「……ま、いいだろう。
───立花光神、影神は元俺の教え子だ。と言っても中等部の間だけだったがな。んでもって、立花の姉の方は生徒会長だった。妹は副会長。ちょうど高等部にいたときに柚木が中等部に。もちろん、関わりなんてなかったはずなんだが……まあ、色々あって知り合い程度までには達した。このまま続けば良かったんだが─────」
突然、口を噤んだ。恐らく、光神、影神、普が死んだのだろう。
「俺が語れるのはここまでだ。これ以上話すと零番と七番サマに何されるか解ったもんじゃない。あと、詳しく知りてェなら、その本を読みな。瞳についても載ってる。影神についての本は貸してやれねェ。…明日には返してもらうぞ」
影神の本もあるがあれはあまりにも残酷すぎる。いくら高等部だと言えど土籠にしてみればまだまだ子供…。大人、怪異である土籠が読んだときはもう二度と手にすることはないだろうと思ったほどのショッキングな文だ。それを寧々や光が読んだときトラウマになりかねないだろう。まだ、光神の方がマシだ。
「分かりました!それでは、失礼しました!」
光も同じように言い、準備室を出た。
***
「─────にしても、驚きですね。蜘蛛野郎が立花姉妹の元教え子だったなんて」
「そうね…もしかしたらこれも定められてた運命だったのかも」
運命というものは変わらない。元から定められていたもので曲げられることがない。否、曲げられない。
「────……いつかは、会えなくなるのかな…」
「先輩?」
「ああ、いや。なんでもないのよ!」
きっと、花子とも別れる頃が訪れるのだろう。それは定められた運命で。
「……だから、あの時“立花先輩”なんて言ったのね」
この世界に私たちは抗うことが出来ない──……
──────────
「櫟零光、先生…?なんで?」
「源の次男に私たちの本名が知られてしまったんですよ。これが長男に渡ると面倒なことになるので。それを避けるためにね」
ふーん……とやはりどこか納得してないような相槌を返す。彼的には、それでも見回りを続けてくれるんだからいいか。などと思っている。
「ちなみに。姉の方は椿澪影です覚えておいてくださいね」
(……零と澪なのは変わらないの……)
と、やはりどこかツッコミをしてしまう花子。が、笑い事では無い。名前だけ本名という訳にもいかないのだろう。
そもそも立花家は特殊な名前が多い。輝に関しては影神何度か任務に出たことがあるのだ。顔が割ているし名前も。それに妹である光神も会ったことがある。名前を変えなければ直ぐにバレてしまう。いや、とうに状況は悪くなっている。あの頭のキレる彼だ。そういう選択肢はあるだろう。
「判ったよ。さて、話は終わりかな?」
「……ええ。そうね。終わりよ」
一瞬の間に少々疑問が浮かんだが彼女自身が終わりと言うのだから何も無いだろうと口を噤んだ。
すると、零の背後に怪異が現れた。気配に気付いていない零に声をかける。
「先輩!!」
「え?……っと」
すんでのところで避ける零。どうやら何らかの方法で零の境界に侵入したそうだ。侵入した点からかなり強力な怪異と思える。
「…どうやら、殺るしかなさそうね」
「ああ。上級霊と見て良さそうだ」
零は水晶神を片手に、花子は包丁を。二人揃い臨戦態勢に入る。
***
「───これで、始末はできたかしら」
「……うん。そうだね」
以外に手強き相手だったが戦闘能力高めの二人がいたのでそれもあっさり片付けられた。
「…あ、そうだ。七番様。……“先輩”って呼ぶのもほどほどに」
昔の癖が抜けないのは判りますが。と付け足して言った。
「ああ。そうだね。まだ、ヤシロにも少年にも話してないようだし」
「ええ。でも、察するに五番が話してる可能性が高いですけど」
ただの偏見に過ぎないため苦笑するが零の勘は当たっていて。
「まあ、確かに土籠の性格上、大事なところ以外は言ってるかもね。案外、優しかったりするし」
ですよね。と思わず苦笑するしかなかった。バレるのも時間の問題。だからこそ自分の口から明かさなきゃいけない。でなければ、また罪を重ねる。
────ホントウハ。