見送るのが寂しい

渡辺は、胸を舐められて感じるなんて、知らなかった。恥ずかしいけど、ちょっと気持ち良かった。

でもやっぱり、先に進むのが早い。

渡辺ーお願い、ゆっくり進んで？

目黒ー怖い？

渡辺ーん、変わってしまう。

目黒ー翔太くんは、翔太くんだよ、何も変わらない。

渡辺ーでも、嫌。気持ちが、追いつかない。

目黒ー気持ち良かったでしょ？

渡辺ーそれはっ！でもやっぱり・・。

目黒ーごめん、こうなる前みたいに、映画を観てトランプしたり、晩ご飯食べてゆっくりしようか？

渡辺ーんっ・・ごめん・・。

目黒ー謝らないで、俺が、嬉しくてガツガツしてたね。

何も知らなかったころには戻れないけど、ちょっと小休止。

ずっと一緒にいるのだから。

渡辺が怖くないよう、ゆっくり進んでいいじゃないか。

ヒートアップしていた目黒も、落ち着いてきた。

目黒ー今夜はクリニック？

渡辺ーん、最近行けてないから。

目黒ー風磨くんと、よくサウナ行ってるね。

渡辺ー何か会うんだ。で、流れで行ってる。気に入らない？

目黒ーヤキモチだから、気にしないで。

渡辺ーごめん、目黒を置き去りにしてる。

目黒ーまた、晩ご飯食べよう。

渡辺ーうん、絶対！

付き合う前に戻ってしまったかのよう。避けてるわけじゃない。

だが、怖いからと、距離を取ってしまった。渡辺の心にちょっと寂しさの風が吹く。

渡辺の家。

晩ご飯を食べている。

渡辺は、ドキドキして、美味いか分からない。

目黒ー何？

渡辺ーん？

目黒ー何か言いたい風だから。

渡辺ーあの、その、えっと・・。

目黒ーん〜。恥ずかしいこと？

渡辺ーいや、違う、んっ、キスしていい！

目黒ー無理してない？

渡辺ーしてない、それ以上は怖いけど。

目黒ーキスは気持ちいいんだ？

渡辺ーんっ・・。

目黒ー気持ちいい？

渡辺ーん。

それから、目黒が作った渡辺の家のソファ周り。

そこだけ、目黒の家みたいになって、落ち着く。晩ご飯も作るから、キッチンも、物が増えた。

寝室以外が目黒の家みたいになっている。何だか照れ臭い。

自分の家なのに、目黒の家みたいになって、それが嬉しい。

渡辺ー俺の家かなぁ。

目黒ーはぁ？

渡辺ーソファ周りも、キッチンも、目黒の家みたいになって、寝室だけが、俺の家って感じ。

目黒ー寝室は、翔太くんの城だね。触らないよ？

渡辺ーん。

目黒ー俺が来たときは、ソファにいるもんね。

渡辺ーうるさい。

抱きしめられて、キスして目黒は帰って行く。見送るのが、こんなに寂しいと、思ったのはいつからだろう。