※また更新が遅れた…
煉瓦造りの城、その最上階。そこでは一人の王が静かに佇んでいた。今日の空模様も、相変わらずの晴れ。それが、なによりの平和の証。遥か遠くまで目を凝らせば、あの島々の虹が見える。遠くの草原からは、人々の満足げな笑い声が聞こえてきそうだ。そういえば、虹よりももっと先の泉に、知り合いの妖精が遊びに来ているとの噂だ。いつか気が向いたら、会いに行ってみようか。ふと、まぶしい幻想を思い浮かべて。
――いきなり、目の前が真っ暗になった。
いや…違う。真っ暗になったのは、目の前だけじゃない。右も左も、奥も手前も。 見える世界の全てが、闇の中にあるような感じだ。まるで、あの時のような…
(…まさか)
夢の泉の効力によって、本来なら決して視るはずもなかった悪夢。一度目は本当にエラーを起こしたせいで、しばらくはないと思っていたのに。
本当にすぐ、視ることになるとは思っていなかった。しかも、近いうちに、二度も。ただ違ったのは、その内容。
…できれば思い出したくはない。まだ、“あいつ”にも言えていないことだから。
――――起きて。
誰かの声。
――――はやく。
知らない声。
――――助けて…!
最初の悪夢でも聞いた声。
遠回りな言い方で、何かを伝えている。いつも、この夢を視るときには必ず悪いことが起こる。これはきっと、予知夢めいたものなのだろう。どうして自分はそれを見れるのか、理由までは分からないけど。
――――たす、け、て…
――気配がした。ぼろぼろで、すぐに消えてしまいそうな気配。
けれど、どこか見知った気配。それがどうしても恐くて、こわくて。そっと振り向くことすら、できない。顔が、自然と傾く。
「…っ!?」
目線の先にあったのは、仲間の手。暗い中ではかなり見えにくいオレンジが、力無く伏している。…生気は、感じられなかった。
恐ろしくなって、足を下げる。けれど、やはりというか、他にもだれか、いた。ふに、という感触が、確かにしたから。目は向けられなかった。どうしても、覚められなくなりそうだったから。
(だいじょうぶ…これは夢だ…ただの…悪い…予知夢なんかじゃなくて………………………………………………………
……あれ…?)
これが良い夢じゃないのなら。泉が正常に、動いているのなら。
予知夢じゃないのなら、これは一体、なに?
(はやく…めざめ、ないと…)
気の滅入りと混乱でふらふらの頭から、意識を切り離そうとする。異変が起きているのは間違いない。だから早く、目覚めなければ。そう、分かっては、いるのだ。
足を掴まれていた。また、見たらいけないやつに掴まれているような気がした。でも、一度は見ておかなければ目覚められないように感じて、潔く足元を見る。
「…あ」
やっぱり、見なきゃよかった。
「――いおうさま、だいおうさまっ!」
「起きてください!もうお昼前ですよ!」
昼前。その単語で一気に目が覚めた。反射的にきゅう、と腹が鳴る。
「ああ、悪ぃな。…そういえば、よ…お前らは今日、なんの夢見たんだ?」
「ゆ、夢…ですか?や、普通に…日なたぼっこして寝落ちする夢でしたけど」
「ボクはお散歩してました!夢だったけど、疲れちゃいましたよ~」
「お、おう…」
やはりというか何というか。異変が生じていたのは、自分だけだったようだ。ならば余計に、あれが予知夢ではないことを切実に祈る。…全て失ってしまったら、もう誰も起ちあがれないから。
わにゃわにゃ言いながら部屋を出る二人の背中を見送りながら、さっそく今日の予定を練る。昼食をとったら、レインボーリゾートに向かおうか。きっとあいつとは入れ違いになるから、バンダナに伝言を頼んでおこう。それか逆に、城であいつを待ってみるのもいいかもしれない。リングの整備状況は、ばっちりのはずだ。
少し遅めの一日のはじまりに、心躍らせる。勢いよく羽織ったガウンが、ゆったりとした空気にはためいた。
あとがき
はい。疲れた!
ということで毎度恒例あとがきのお時間です!作者のフジミヤです!
今回はだいぶ文字数減らしてみましたがどうでしょうか?本編は1600文字程度に抑えました!ドヤァ✨
まあ実を言うと、ここからいろいろ書いたら区切りが変になるな…と思って諦めただけなのですが…
これそろそろキャラ設定とか書いてみた方がいいですかね?次々回あたりにはきっと…(不確定事項)
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!次回もお楽しみに!
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