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「空」
明るい声が後ろからして俺は振り返った。
振り返ってもその先は真っ暗なのは相変わらずで。だけどきっと目の前にいる彼女は優しい表情を向けているのだろう。
見えなくてもそう分かった。
再び彼女の声を聞いたのはつい最近だ。その声は数年前と同じで、なにも変わってないその声に俺は目元が熱くなったのを今でも覚えている。
俺を呼ぶ声にハッとした。
「考え事?」
「うん、彩のことを考えてた」
「…そう」
彼女の表情はきっと顔を赤くしてるのだろうな。見えなくてもそれだけは分かった。
待っててと手の平で書いてくれた彼女は約束通り声を出せれるようになっていた。
きっと必死に頑張ってくれたのだと思う。俺の為にここまでしてくれるのかと驚いたけどそれでも嬉しかった。
「空」
「はいはい、どうした?」
「私と___」
その言葉に俺は目の前にいるであろう彩に飛びついた。
答えはこれで充分だった。
景色が見えなくても大切な人が教えてくれる。
声が出なくても大切な人が呼んでくれる。
きっとそれで俺達は十分だったのだ。