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「ここか、」
しばらく歩いていると、活気が溢れ出ている町、かぶき町へたどり着いた
現在は昼間である為か、夜の店などは閉まっており家族連れなどが目立っていた
とりあえず、売り込みしやすい場所を探してみようかな
そう思い、私が歩みを進めた瞬間
「このガキ!」
「?」
とある路地裏からそんな怒号が聞こえ、私は足を止めた
視線を裏路地の奥へ向けると、何やら大男と少女、そして巨大な犬のような生物がいた
男は何やら少女に怒鳴り散らしているようで少女は特に物怖じしていない様子だった
流石というべきだろうか。江戸の中でも治安の悪い町、かぶき町
私は静かに見つめたのち、裏路地へ足を進めた
_____
「テメェ!俺の一張羅に何しゃがんだ!」
定春の散歩をしていると、とある男が私達の前へ立ちはだかった
どうやらカツアゲのようで、立ちはだかると金を出せと脅してきた
そうしてしばらく言い争っていると、定春が男の服に尿を掛けたという事だ
「黙れヨクソジジィ。生理現象なんだから大目にみろヨ」
「何それ!?何で開き直ってんの!?」
男がそう言うと、このガキ!と拳を振り上げていた
私がその拳を避けようとした瞬間
「そこまでだよ」
「なっ?!」
「!」
男の身体が、浮いたのだ
私は何もやっていない、となると残るは先程の声の主だろう
後ろを振り返ると、そこには人差し指を男へ向けている少女がいた
「な、なんだよこれ!」
男がそう叫んだ瞬間、男の身体は地面へ落とされた
「大丈夫、かな?」
「死んだアルカ?」
ピクリとも動かない男に少女が近寄り、私は少女にそう問いかけた
「、いや。気絶しているだけみたいだね」
安否を確認すると、少女は私達の方へ歩み寄った
「怪我はない?」
「大丈夫ネ!それより、さっきのやつお前がやったアルカ?」
良かったと安堵する少女に、私は先程の出来事について問いかけた
「そうだよ。ちょっとした特技みたいなものだよ」
そう言うと、今度は道端にあった石ころを浮かせていた
「凄いアル!お前、魔法使いか何かアルカ?」
「ただのカラクリ人形だよ。これくらい、カラクリなら誰でも出来る」
「カラクリ?」
カラクリ、つまりタマのような状態だろうか
しかし、この少女はタマのようなカラクリという雰囲気はなく普通の少女のようだった
少女が石を地面に落とすと、それに呼応するように空から水滴が落ちてきた
「!雨、」
その後、雨が強くなっていき私達は近くの茶屋へ移動した
_____
激しく打ちつけられる雨音を聞きながら、愛用のトランクバックから手拭いを取り出した
「これ、良かったら使って」
「!ありがとうネ!」
先程ここへ来る途中でかなり濡れてしまい、私はカラクリだから大丈夫だが、
この少女は人間みたいだし、しかも犬も連れている。 風邪を引かれてしまっては大変だ
少女は手拭いを受け取ると、服や髪などを拭き始めた
「なぁ、ちょっと聞いても良いアルカ?」
「良いよ」
私はトランクバックから本を取り出し、ページをめくりながらそう答えた
「お前、本当に何者アルカ?ただのカラクリ人形じゃないネ」
チラリと少女の方へ視線へ移すと、そこには警戒の眼差しを送る少女がいた
なるほど、この少女は”敵を見る目”がある
きっとこれまで、様々な戦場を潜ってきたのだろう
「、そうだね。私の身体は今、5割がカラクリだ」
「5割?って事は、」
「察しが良いね。私は元人間、実験で内臓なんかは全部カラクリで構成されている」
「さっきのは、男が着ている着物を浮かせただけ。アイツ自身が浮いた訳じゃない」
そう、この能力も追い出された原因の一つだ
成功したカラクリ人形は基本、人体の電波を利用して浮かせたり、自在に操れたりする
しかし、残念ながら私はその電波を操れず、かろうじて出来るのは原子の理を利用して物体を浮かせたり、頭が良くなった程度
しかし物体を浮かせるにも時間制限があり、30秒が限界
所謂、欠陥品という訳だ
「、苦しくないアルカ?」
「なんで?」
「さっきの話を聞いた限り、お前は進んで実験に参加した訳じゃないアル」
「そんな身体で、生きづらくないアルカ?」
先程より勢いが弱まった雨音を聞きながら、私は本を閉じた
「、確かに、私は望んでなんていない。苦しいし、生きづらいよ」
「けど、後悔はしていない」
だって、大切なあの子を守れたんだから
静かに流れる雨水を眺めながら、私は口を開いた
どうせもう会わないのだ。少しくらい、弱音を吐いたって良いだろう
「昔、まだ私が人間だった頃。私の村に奴隷市場の役人の人が来てね」
「その人達は私の友達を買い取りたいって言ったの」
今でも覚えている。夜中にコソコソと話すあの子の両親と薄汚い役人
その子の両親は金に目が眩み、すぐさま自分の子供を差し出したのだ
「だから、必死に役人に頼み込んであの子の代わりに私が買い取られた」
「、その子はどうなったアル?」
「、分からない。いや、私には知る資格もないよ」
「別れる前、沢山酷いこと言っちゃったし。きっと私の事恨んでいるよ」
少しずつ笑うようになったあの子から再び、笑顔を奪ってしまった
それがどうしようもなく、自分を情けなく思ってしまう
「会いたいなんて烏滸がましいけど、もし、また会えるなら」
「一目だけで良いから、あの子の笑顔が見たい」
私がそう呟くと、私の手に温もりが走った
「?どうしたの?」
「、私の家、万事屋やってるアル」
少女の声は震えており、手には力が込められていた
「私達が見つけるアル!絶対見つけて、」
少女がそこまで言いかけた瞬間
「あっ、いたいた。おーい!神楽ちゃーん!」
「ったく、傘持ってけつっただろうがよ」
横から二つの声が聞こえ、振り向くとそこには
「、!」
懐かしいふわふわの銀髪、ルビーのように紅い瞳
息が止まり、今はもうないはずの鼓動が聞こえ、私は思わず立ち上がった
間違いない、あの子だ
「!、お前、」
あの子も私に気づいたのか目を見開いており、私は鞄を持って走り出した
「えっちょ、どうしたアルか!?」
少女のそんな声が聞こえたが、私は無視してその場を後にした