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赤い瞳から黒い瞳に変わった赫愧は夜の事を
思い出しながら街の中を歩いていた。
昼間は別人のように不安そうな顔。
「また僕はやってしまったのか。僕は殺人を
毎晩毎晩繰り返している。でも、どうやって
自分を止めていいのか分からない。怖い。」
心の中でそんな自己嫌悪を
繰り返しながら歩いてきたのは、
街の中心にある喫茶店BLUEMOON。
そこは赫愧の行きつけで学校の帰りに
必ず行く程の常連だ。
一旦落ち着こうと喫茶店に入ると、
いつも座っている席に座り注文をしようと
店員に声をかけた。
すると店員が元気よく駆けつけ、
「いらっしゃいませ♪
いつもありがとうございます!
ご注文はコーヒーでよろしいですか?」
と赫愧に笑顔で尋ねる。
「はい。それで大丈夫ですありがとう。」
と赫愧がこたえると、
「かしこまりました♪」
と走ってオーナーに注文を届けに行った。
ここの店員は双子で、
名前が蘭(らん)と僯(りん)。
聞くところによるとオーナーが
ボロボロで震えながら
道端に座っていた双子を連れてきたらしい。
それからというもの双子は店員として働き、
オーナーの手伝いをしている。
「オーナー!コーヒー1つお願いします♪」
「おぉ蘭。分かった、すぐに作るな。
あと僯が休憩から戻ってこねぇから様子みて
来てくれると助かる。」
「またですか??もう僯たら!分かりました!」
そう言ってSTAFFONLYと書かれている扉を
開き店員が入っていった。
僕はそんなオーナーと蘭を
ぼーっと見ながら待つ。
「はぁ…。」1つため息をついているところに
オーナーがコーヒーを持ってきてくれた。
「お待たせしました。いつもありがとう。」
「あっ…こちらこそありがとうございます。」
お礼を言って1口コーヒーを喉に流し込む。
オーナーはキッチンに戻り、
他のお客の対応に行った。
そして僕はこの喫茶店に
初めて来た日のことを思い出す。
それは丁度この席に座って
オーナーが今日と同じように
コーヒーを持ってきてくれた日のこと。
「何かに悩まれているのですか?
浮かない顔をしてますね?」
と僕の顔を見て話しかけてきたオーナーに
僕は戸惑いながら少し聞いてみた。
「オーナーさん、もしも自分が
自分じゃなくなったらどうしますか?」
そんな質問に対してオーナーは驚きながら
「んーそうですね…。私もそういった
悩み昔はありましたが、ちょっとした拍子に
そんな悩みを吹っ切れる日がきましたよ。
まぁ今は思い詰めなくてもいいと思いますがね。」
と赫愧に向かって言った。
赫愧はその言葉を聞いても
よく分からなかったが、
僕は何故か思い切って聞いてみたくなった。
「僕は夜になると人格が変わったようになって
何人も何人も殺したいような気持ちになるんです。
それが嫌で嫌で恐怖で不安なんです。」
下を向きながらオーナーに伝えると、
オーナーは少し笑みを浮かべながら
赫愧の肩に手を置き、
「そうなんですね…。
では夜にまたこの喫茶店に来てください。
そこでお話しましょう。あなたの
知りたい事が知れるかもしれない。」
と話した。
「えっ?分かりました。ありがとうございます。」
赫愧は戸惑いながら夜に来る事を承諾した。
ふと思い出した喫茶店での初めての出来事。
そう、この会話をしたところから
今が始まったんだよな。
振り返っていたところに突然STAFFONLYの中に
入っていった蘭と、
休憩から戻ってこなかった僯が
蘭に引っ張られながら飛び出してきた。
「ちょっとちょっと!!!オーナー!!!
僯ったら爆睡してて全く起きてくれずに
挙句の果てには寝ぼけて
花瓶を落としたんですよ!!」
「だって…。頭回ってないのに蘭が
急に僕を振り回すからいけないんだよ…!」
2人はオーナーに向かって必死に伝えている。
「2人とも分かった分かった!
怪我はしなかったかい?」
と優しく言いながらオーナーは笑って
話を聞いていた。
そして僕はあの日の夜のことも思い出していた。
そう。これが僕が変わった日。
あの夜オーナーから話された話は僕の人生を
変える話だったんだ。
第3話に続く…