テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
706
⭐︎
1,620
ろと。
13,917
kurara
1,236
地下室の扉は、廊下の突き当たりにあった。
古びた木製の扉。
その上から、何重もの鉄鎖。
錆びた南京錠。
まるで“開けられないように”ではなく、“出てこないように”封じているみたいだった。
ヒロトの猫耳がぺたりと伏せる。
「……なに、あれ」
モトキも表情を消していた。
狼の本能が警告している。
危険だ、と。
地下から、微かな音が響く。
……ガリ。
何かを引っ掻くような音。
涼架の顔から血の気が引いていた。
「……ありえない」
掠れた声。
「ここは、ただの避難小屋だったはずなのに……」
モトキが涼架を見る。
「涼ちゃん、知ってるの?」
涼架はゆっくり頷いた。
「…この家、昔は施設の関係者が使ってた…」
ヒロトが息を呑む。
「逃亡用の拠点の一つ」
「じゃあ……」
「うん」
涼架の目が暗く沈む。
ドン
また音がした。
今度は少し強い。
鎖が、かちゃりと揺れる。
ヒロトが反射的に後退る。
「っ……!」
モトキはゆっくり前へ出た。
鼻を働かす。
臭いを探る。
そして。
顔をしかめた。
「……血の臭い」
涼架の背筋が凍る。
古くてかすれた鉄の匂い。
でも確かに残っている。
「涼ちゃん」
モトキの声が低くなる。
「これ、中にいる」
ヒロトの呼吸が止まりそうになる。
「う、そ……」
すると。
地下から、微かに声がした。
『……あ……』
全員が硬直する。
人の声。
若いけど。
掠れている。
『……だれ……』
ヒロトが震えた。
モトキも目を見開く。
だが。
涼架だけが動けなかった。
その声を知っている。
忘れるわけがない。
十六歳の頃。
モニター越しに、毎日聞いていた声。
『いたい』
『ころして』
『もうやだ』
涼架の唇が震える。
「……零号体」
その瞬間。
地下から、“笑い声”がした。
ぞわり、と空気が粟立つ。
低く。
壊れた笑い声。
『あは』
鎖が鳴る。
ガシャッ!!
ヒロトが悲鳴を呑み込む。
扉が、内側から歪んだ。
ありえない力。
モトキが即座に前へ出る。
「ヒロト、下がって!」
狼耳が逆立つ。
爪が伸びる。
涼架は青ざめたまま呟く。
「ダメだ……」
「涼ちゃん!」
「逃げなきゃ」
その声は、本気で怯えていた。
「アレは、モトキ達と違う……!」
ガンッ!!
再び衝撃。
南京錠に亀裂が入る。
ヒロトが震える声を漏らす。
「な、なんで生きて……」
涼架は掠れた声で答えた。
「……生かされてたんだ」
研究のために。
観察のために。
化け物として。
地下から、また声がする。
『……りょー、か』
涼架の瞳が揺れた。
呼ばれた。
名前を。
十五年前のままの声で。
『りょうかぁ』
鎖が引きちぎられる。
バキンッ!!
鉄が飛んだ。
次の瞬間。
扉が、内側から吹き飛ぶ。
轟音。
埃。
暗闇。
その奥で。
“何か”が立っていた。
人型だった。
痩せ細った裸足の少年。
長い白髪。
異様に白い肌。
そして。
頭には、獣とも違う黒い角のような突起。
腕には無数の傷。
縫合痕。
薬液の痕。
だが。
一番異様なのは目だった。
右目が、真っ赤に光っている。
少年はゆっくり首を傾げた。
骨が鳴る。
ぎし、ぎし、と。
『……みつけた』
その瞬間。
モトキの本能が叫ぶ。
逃げろ、と。
だが遅かった。
零号体が消える。
次の瞬間には。
涼架の目の前にいた。
「っ!!」
誰も反応できなかった。
速すぎる。
零号体は涼架の髪を一束掴む。
そして。
嬉しそうに笑った。
『ずっと、まってた』
コメント
2件
続きがめちゃくちゃ気になります✨ 毎回楽しみにしています✨ ありがとうございます💕
うわ、第6話めっちゃ重かった……💧 地下室の扉、鎖、そして「零号体」——涼架だけが知ってるあの声。呼ばれた瞬間の涼架の揺れ方が切なくて、読んでるこっちも息止まった。 「生かされてたんだ」って台詞、すごく刺さったよ。研究のために閉じ込められてたんだね……。 最後の『みつけた』が、めっちゃゾッとしたけど、同時に涼架への執着を感じて鳥肌立った🖤 続き、めっちゃ気になるよ……