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──何度か女性を伴い訪れたことのある、会員制ホテルへ車をまわした。
部屋に入り、目についたベッドへ座ると、
横に腰を下ろした彼女が緊張しているのが伝わってきて、「なぜ、そんなに固くなっていて?」と、尋ねた。
「こういうところは、慣れないので……」
はにかんで口にするのに、
「誰もがみな当たり前な顔をしていたのに、君は……」
言いかけてその先の言葉を呑み込むと、仄かに赤らむ彼女の頬を撫でて、その目をじっと覗き込んだ。
「誰も……?」と、上目な眼差しで瞳の奥が見つめ返されて、
「ああ…他の女性の話などをして、気を悪くされましたか?」
問いかけると、首が横に振られた。
「そうではなく、先生から私はどういう風に見られているんだろうって……。他の誰とも違うんだとしたら、どんな風にって……」
そう話す彼女に、
「……聞かせてあげましょうか? “君は……”の先の言葉を」
肩を引き寄せて距離を詰めると、
「……かわいいですよ」
感じていた一言を、耳元へ囁きかけた。
「君は、かわいくてと……そう言おうとしたんです」
驚いたように「えっ……」と口をあく顔が、たまらなく愛おしく映る。
そのまま同意もなく押し倒してしまいそうにも感じて、
「……私には、やはり敵わないとでも?」
自分の気持ちを逸らすつもりもあって、わざと少し意地悪く装うふりをした。
「そんな風に意地悪を言うなら、私にだってあなたを責めることぐらい……」
一方の彼女は負けず嫌いな気持ちが湧いたのか、そう言い出して、
「私を、君が…?」
まさかとメガネ越しに見つめると、
「それぐらい…きっと私だって……」
上目遣いの眼差しで見つめられて、
「……では、責めてみますか? 私を……」
ならば……とメガネを外し、顔をグッと迫らせた。