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「……やっべ、送っちゃった。」
俺はスマホの画面を見つめながら、手が止まった。さっき送ったメッセージには「千秋、俺、お前のこと……嫌いだから。」って書いてある。冗談のつもりだったんだけど、これってやりすぎか?
いや、でもあいつ、どうせすぐ気づくだろ。今までだって、俺が何か変なこと言っても、無視するか軽く「うわっ」とか「ゲッ」とか言ってスルーしてきたしな。少し驚かせるくらいがちょうどいいだろうって思って、つい送っちゃった。
だけど…さっきから返事がこない。千秋にしては珍しいな。いつもなら適当にスルーするだけなのに、今回は返事すらないってどういうことだ?俺、さすがに言いすぎたか?
「……いやいや、冗談だって分かるだろ。」俺は自分にそう言い聞かせて、もう一度メッセージを見直した。確かに、「嫌い」って言葉は少し強かったかもしれない。でも、すぐにフォローすれば問題ないはずだ。
「おい、神風、あいつ何て言ってくると思う?」と自分に問いかけてみる。返事がないことに少し不安になりながらも、すぐにメッセージを打ち直した。
「嘘だよ!びっくりした?冗談だってばー!」
送信ボタンを押すと、ちょっと気が楽になった。これで大丈夫だろう。あいつも「バカじゃないの?」とか言ってくるはずだ。それに、俺が本当に千秋を嫌いになるわけがない。誰があんなに面白い反応してくれる奴を嫌うんだよ。
でも、心のどこかでモヤモヤが残る。何かが違うんだ。最近の千秋、前より反応が冷たい気がする。俺が話しかけても、前ほど振り向いてくれない。無視されることも増えてきたし、今日も最初のメッセージには「今日は無理」って返されただけだった。
「……もしかして、俺、本当に嫌われてんのか?」
そんなわけないって、自分に言い聞かせるけど、不安が消えない。俺はいつも通り、明るく振る舞ってるつもりだけど、千秋にはどう見えてるんだろう。あいつは本当に俺のことをどう思ってるんだ?
「あー、考えすぎだ、俺!」頭を軽く振って、自分を励ます。こんなことで落ち込んでどうするんだよ。俺は俺らしく、しつこく絡んでいけばいいんだ。千秋に「嫌い」なんて言われたとしても、俺は絶対にあきらめない。
けど、その日の昼、何度もスマホをチェックしても、千秋からの返事は一向に来なかった。いつも通りの冗談だって思ってもらえなかったのかなって、だんだんと心配になってくる。
「マジで…やっちまったか?」
一人で部屋に座りながら、俺はスマホを手にしばらく黙り込んだ。千秋がこんなにも静かなのは、俺のせいかもしれない。俺の冗談が思った以上に彼女を傷つけたのかもしれない。そう思うと、何をする気にもなれなくて、ただ部屋の天井を見上げたまま、時間だけが過ぎていった。