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第7話
「再会、そして――」
海斗がスマホを握りしめていた。
「……よし、連絡ついた。りあ、来てくれるってさ。」
短く言うその声の裏に、どれほどの努力が隠されているのか、俺には伝わっていた。海斗は、りあとも深い縁がある。だからこそ、きっと言葉を尽くしてくれたのだろう。
俺とゆいなは黙ってうなずき、緊張しながら公園の入り口を見つめた。
――そして。
夕暮れの光に照らされながら、一人の女性が現れた。
「……祐介?」
その声を聞いた瞬間、胸が震えた。
りあだ。懐かしくて、愛おしくて、何年も探し続けた夢の中の存在が目の前にいた。
俺は立ち尽くしたまま、言葉が出なかった。
けれど次の瞬間、頭の奥に閉ざされていた扉が一気に開く。
小学校の校庭、夏祭りの夜、雨の帰り道。りあと過ごした記憶が鮮やかに蘇っていく。
「……っ、りあ!」
俺は駆け寄っていた。
りあも涙を浮かべながら、笑顔で迎えた。
「やっと、会えたね。」
その瞬間、俺ははっきりと気づいた。
俺は――りあが好きなんだ。ずっと、昔から。記憶を失っても、この気持ちだけは消えなかったんだ。
俺は震える声で言った。
「俺……りあのことが好きだ。やっぱり、ずっと。」
りあは頬を赤らめ、泣き笑いの顔で小さくうなずいた。
「私も。ずっと祐介が好きだった。記憶が戻らなくても、心だけは覚えてるって、信じてた。」
俺の心臓が大きく跳ねた。
――その時、ゆいなが突然笑い出した。
「なーんだ、結局みんな独身かよ!」
海斗も苦笑しながら肩をすくめる。
「確かにな。俺も、ゆいなも。祐介とりあも。……結局、全部繋がってたんだな。」
その言葉に、場の空気が一気に和んだ。みんな笑い合う。
記憶の穴があっても、今ここにある絆がそれを埋めてくれる。
そして、俺たちは自然とあの日の約束のことを思い出した。
「……なぁ、開けるか。」
俺が言うと、みんながうなずく。
土の匂いが残る場所に戻り、俺たちは膝をついてタイムカプセルを前に座った。
指先が震える。ここには、俺たちの過去と未来が詰まっている。
「よし……」
蓋に手をかける。
次の瞬間、空気が張り詰めた。
俺たち4人の視線が、一つに集まった。
――タイムカプセルを開ける、その直前。
▶︎第8話へ続く
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