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第8話
「タイムカプセル」
土を払って、俺は震える手で錆びついた蓋を開けた。
カチリ、と鈍い音が響くと同時に、あの日の空気が蘇る気がした。
中には、色あせた紙切れや小さなおもちゃ、ガラクタみたいなものがぎゅうぎゅうに詰まっていた。けれど、そのどれもが輝いて見えた。
一番上にあったのは――俺たち4人で撮った写真。
無邪気な笑顔で肩を組み合い、未来なんて何も怖くなかった頃の俺たち。
りあが小さな声をあげた。
「……これ、私が持ってきたカメラで撮ったんだ。」
写真を見つめる彼女の目には、涙が光っていた。
次に出てきたのは、小さな手紙の束だった。
俺が震える手で一枚目を広げると、拙い字でこう書かれていた。
『10年後もみんなで仲良しでいられますように。』
「……俺が書いたんだ。」
思い出す。土の匂い、笑い声、掘った穴の感触。記憶が鮮やかに戻ってきて、涙が勝手に頬を伝った。
ゆいなが別の紙を広げる。
『祐介が元気で、りあちゃんとずっと笑っていられますように。』
顔を赤くしながらも、泣き笑いで言う。
「……これ、私が書いたんだよ。バカみたいだよね。」
海斗は黙って一枚を手に取った。
そこには、力強い字でこうあった。
『俺はみんなを守れる男になる!』
「……ダセぇな。」
そう言いながら、海斗の目からは大粒の涙が零れていた。
最後にりあが開いた紙には、震えるような字で書かれていた。
『祐介と、ずっと一緒にいたい。みんなと、ずっと一緒にいたい。』
りあは読み上げながら泣き崩れた。
「……小さい頃の私、本当にそう思ってたんだ。」
俺は彼女の肩を抱き寄せた。
「……俺も。ずっと一緒にいたかった。記憶を失っても、この気持ちだけは消えなかった。」
ゆいなは涙をぬぐいながら笑った。
「なんか、私たちってほんとバカだね。こんなに回り道して……でも、結局またここに戻ってきた。」
海斗も嗚咽をこらえながら頷く。
「……でも、戻ってこれてよかった。俺ら4人で。」
夕陽が沈みかける公園で、俺たちは肩を並べて座った。
過去に埋めた宝物は、錆びても、汚れても、決して色褪せていなかった。
そして気づいた。
10年前に願った「4人で仲良くできますように」は、遠回りをしても、今こうして叶っているんだと。
俺は空を見上げながら呟いた。
「……ありがとう、みんな。俺は……やっと思い出せたよ。」
静かな風が吹き抜け、木々のざわめきが優しく背中を押した。
涙と笑顔に包まれながら、俺たちはそれぞれの未来を胸に刻んだ。
▶︎第9話へ続く