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15話 かつての友人



⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯



的場「 その面を少し見せて頂けませんか?」

私「 ….お断りします 」



彼、的場静司との距離 およそ十五センチ

私の両側に手を付き、覆い被さるような体勢で彼は私と話している。

日が落ちるのが遅いこの時期

静かな客間には沈みかけている夕日の色が満ちていた。







事の発端は2時間前__



⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯



私「 よし、そろそろだね 」


私はお面を被り、儀式へ備える


私「 今日は熊本県か、近くで助かった 」

朱楽「 雨の心配もないな 」

私「 うん、早く終わらせて帰ろう 」





私「 スッ / 陣の上に立つ 」

私「 我を迎え入れる者、門を開き給え 」



⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯



熊本県𓏸𓏸神社 前


私「 ….!」


的場「 お待ちしておりました 」

的場「 どうぞ お上がり下さい、我らが神ワタリ様よ 」






















私( せ、いじ….?)


的場「 ? 」


私( しまった、呆けてた….!)

私「 …. / ペコリ 」





的場「 神ワタリ様、百年前の血を返上します 」

的場「 そして どうか、今世紀も我らの生命をお守り下さい 」

私「 ….お守りします、必ずや 」

私「 さぁ血を差し上げましょう 」



⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯



私( 黒髪の長髪、眼帯 )

私( でも、顔は静司にそっくり…. )


的場「 ? ….私の顔に何か?」

私「 ….いえ 」

私「 儀式は終わったので私は失礼します 」


的場「 お待ちを、神ワタリ様 / パシッ 」





ズキン ッ!




私「 い”っ!! 」


彼が私の左腕を掴んだ瞬間、激痛が走った


私「 離して!」

的場「 おっと ….申し訳ありません、いきなり触れるのは不敬でしたね 」

私「 はぁ ッ、はぁ ッ 」


止まっていた呪いの進行が押し寄せるかのように身体が重くなり、私の視界は揺れ始めた


私「 すみません、急ぐので…. ッ 」

的場「 その呪いは即効性なので今すぐに解呪することをお勧めしますよ 」

私「 ! 」

私( この呪いを知っている?….儀式の最中に見られたのか )

的場「 この様子からして2日は経っていますね 」

的場「 それでも尚、呪いを持っているということは解呪できる祓い人の当てが無いのでは?」

私「 …. 」

的場「 私でよろしければ解呪しましょうか? 」

的場「 神ワタリ様 / ニコッ 」

私「 ….名も知らぬ祓い屋に用はありません 」

私「 あまり馴染みのない地なので余計に。」

的場「 成程、そうでしたか 」


的場「 私は的場一門頭首、的場静司と申します


的場「 以後、お見知り置きを。」

私「 …. 」

私( 的場、誠司…. )

的場「 ….大丈夫ですか?」

私「 え?」

的場「 貴方、泣いていますよ 」

私「 …. / 頬に触れる 」

私「 失礼、お気になさらず 」

私「 ご察しの通り、解呪のできる祓い人を探していました。」

私「 的場様、解呪をお願いしても宜しいでしょうか?」

私「 勿論、報酬はお渡しします 」

的場「 分かりました。では車を用意します 」

私「 ここで行うのでは….?」

的場「 陣が必要のないモノもありますが、その呪いは少々厄介でして / クスッ 」

的場「 近くに的場の別邸があります、一度そちらまで来ていただいても宜しいですか?」

私「 ….分かりました 」

的場「 ありがとうございます、ではこちらで少々お待ちを。」





私「 …. / ドサ ッ 」


朱楽「 大丈夫か?伊吹 」


私「 朱楽、今から私の家に帰るまで出てくるのを禁じます 」

朱楽「 何故?」

私「 静司って人を覚えている?貴方を封印から解いた時に一緒に居た…. 」

朱楽「 あぁ、覚えている 」

私「 きっと静司も貴方が私の式だと覚えている 」

私「 だから、貴方が出てきたら私が伊吹だとバレてしまうの 」

私「 私が神ワタリ様だと他の者に知られてはいけない 」

朱楽「 ….しかし 」

私「 命令だよ、朱楽 」

朱楽「 …. 」

朱楽「 分かった、気を抜くなよ 」

私「 うん 」

朱楽「 的場一門には気をつけろ 」

私「 ….うん?」

朱楽「 妖たちに話を聞いている時、的場一門の名をよく聞いた 」

朱楽「 己の式を餌にしたり、厄介な術を使うとな 」

私「 ….大丈夫、妖たちのことだからきっと勘違いがあるんだよ 」

朱楽「 …. 」

私「 さぁ、戻りなさい 」

朱楽「 あぁ 」












的場「 車の用意ができました 」

的場「 移動 ….できますか?」


私「 ….はい 」

私( 身体動かない ….何だか頭痛くなってきた )



今の私は “ 神ワタリ様 “

多少の無理をしてでも品格を下げる訳にはいかない。

私は身体を立ち上がらせようと力を込めた



私「 …. ッ 」

的場「 フム ….少し失礼します 」

私「 え 」


フワッ


的場「 無礼をお許し下さい 」

私「 …. / 驚 」



⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯



的場一門 別邸


的場「 神ワタリ様、降りれそうですか?」

私「 …. はい」



車で運ばれたのは儀式を行った神社から30分程離れた古い屋敷 。

外には彼を迎える為に待っていた人間が数人、そして式のような妖怪がいた

皆、共通して黒を基調としている

そんな色系の中からただ一点、薄紫の色が見えた

その一点も懐かしき人__、七瀬だった



私( 七瀬、さん….?)

七瀬「 的場、いきなり解呪の準備とはどういうことだ?」

的場「 追って話します 」

七瀬「 !….その人はまさか 」

的場「 えぇ、神ワタリ様です 」

的場「 儀式は無事終えました 」

七瀬「 神に背く行為はしないんじゃなかったのか….!? 」

的場「 まだ背いてません 」

七瀬「 …. 」

的場「 どうぞ、中へ 」

私「 はい 」



⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯



薄暗く、長い廊下を案内されるがまま歩く

前に静司、後ろに七瀬さんと部下のような人達が数人並んでいる


私( 本当に頭首になったんだ )







的場「 こちらの部屋です 」

私「 ….!」


部屋の中心には大量の半紙と墨で書かれた陣があった


的場「 あの中心へ 」

私「 …. / 座る 」

的場「 では解呪を始めます、少々手荒になるかもしれませんがお任せ下さい 」

私「 ….はい 」



的場「 始めるぞ 」

七瀬・部下 「 はい 」





的場「 ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯…. 」

的場「 逢魔ヶ刻、送を返とし主へ還られよ 」


私「 ! / ドクンッ 」










七瀬「 ふぅ 」

的場「 どうやら、解呪できたようですね 」

的場「 お前たちは下がっていいぞ 」

部下「 はい 」

七瀬「 …. ん?」

的場「 ? 」


七瀬が見つめる先には陣の上に座っていた彼が倒れていた


的場「 大丈夫ですか?」

私「 ….ッ 」

的場「 少し首を触りますよ 」

的場「 ….!」

的場「 七瀬、客室に彼を運びます 」

七瀬「 呪いの反響かい?」

的場「 恐らく、ただ酷い熱だ 」

七瀬「 ….随分、世話を焼くようだな 」

的場「 恩を仇で返すような輩ではないでしょう 」

的場「 神の使者は丁重にもてなさなければ / ニコ 」

七瀬「 ….仕事は回すんだよ 」

的場「 分かっています 」



⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯



一時間後


私「 …. / パチッ 」

私( ここは?)


木目の天井 。

差し込む光の奥は日が沈みかけている最中だ

ふと横に目をやると机に向かって綺麗な姿勢を保っている まだ見慣れない姿の静司がいた。


的場「 目が覚めましたか?」

私「 ….呪いは? 」

的場「 解呪できましたよ ….ですが、呪いの反響のせいか身体に影響があったそうです 」

的場「 気分はどうです?」

私「 あまり良いとは言えません ….ゴホッゴホ 」

的場「 私はまだ仕事があるのでここに居ます。夜食は食べれる時に仰ってください 」

私「 ….いえ、もう帰ります 」

私「 これ以上の長居はできませんので 」


私は身体を起こし、首に置かれたタオルを取る


私「 …. 」

私( そういえば、面は….?)


私は急いで自分の顔を触って確かめる


私( 取られてない? ….でも何故?)

的場「 神ワタリ様は中の顔を他者に知られてはいけないのでしょう? 」

的場「 儀式用の書類に載っていました 」

私「 私の弱みを握れると考えなかったのですか?」

的場「 心外ですね、的場一門の頭首でも人道は弁えてはいるんですよ 」

的場「 ただ、その面にはとても興味がある 」

私「 …. 」

的場「 そう身構えないで下さい、無理に取ろうとは思っていませんので 」

私「 では、同意があれば取ると?」

的場「 ….えぇ、同意があれば / ニコッ 」

私「 帰ります 」

的場「 まだ報酬を貰っていませんよ 」

私「 …. 」

的場「 そうですねぇ、報酬というより…. 」


彼はそう話しながら、一歩一歩と近づいてくる

私は彼が近づく度に身構えた。

何を言うのかが分かりきっていたからだ



的場「 神ワタリ様 / 顔を近づける 」

的場「 その面を少し見せて頂けませんか?」



私「 ….お断りします 」

的場「 おや、それは残念 」

私「 それに先程申していた話と矛盾していますよね 」

的場「 好奇心が抑えられないもので / ニコッ 」

私「 はぁ ….面に関する質問ならお答えします 」

私「 気が済むまでで付き合いますので、それを報酬としてくれませんか?」

的場「 ….気が済むまで、ですか 」

私「 はい 」

的場「 …. / 首に触れる 」

私「 冷たっ 」

的場「 まだ熱がありますね、病人の答えは信憑性が低いので夜食の後にしましょう 」

的場「 新しいタオルを持ってきます。大人しく横になっていて下さい 」

私「 …. 」

私( あ、危なかった )

私( 咄嗟に出た代替作で納得して貰えた…. )


静司が触れた首筋にもう一度触れてみる


私( ….熱い )





私「 …. / スースー 」

的場「 お待たせしました 」

的場( ? ….寝ているのか )


的場( ” あべこべの面 “ は性別や容姿が反転し、他者にその姿を見せる力を持っている )

的場( 俺の目に見えている神ワタリ様は ” 男 “ )

的場( となれば、本体は女性か )

的場( 年齢は言葉遣いから考えて恐らく10代半ばから後半 )

的場( 神に使者を任されるほどの実力の持ち主か、妖力の強い者 )

的場「 …. 」

的場( いや、そんな事はあるはずない )

的場( もう3年間探しているというのに…. )

私「 ….ぇじ 」

的場「 ? 」






















私「 せい、じ 」








的場「 …. 」



ダメだ、抑えろ

今は 的場一門の頭首 だ 。

友人 の的場静司ではないのだから 。


抑えろ 、抑えろ 、出てくるな

勝手に流れるな



的場「 …. / ポタッ 」



爪が皮膚に食い込む痛みを感じながら、俺は拳を力強く握った 。

痛みで緩くなった力もまた、握り直す

少しも緩ませてはいけない


頬を伝うこの生温かいモノが消えるまで__











⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯





無意識に呼んでしまった古き友人の名


思わぬ形で再開してしまった2人


誰かを想い 、人知れず流れてしまった涙は

彼をどう変えていくのか__

















神社 : 残り5つ

儀式終了 : 残り1ヶ月半



next*

妖 ト 人間__。

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