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[偽りの練習]
涼架side
放課後、私は指定された体育館へ向かった。
いじめグループのリーダーから『シンデレラの練習するから、体育館に来て』とメッセージが来ていたからだ。
私は不安を感じながらも、劇の成功のためだと自分に言い聞かせ、体育館の扉を開けた
しかし、そこにいたのはいじめグループの女子たちだけで、劇の練習をするような雰囲気でらなかった
彼女たちは、私を見ると嘲笑を浮かべる
「おっ、シンデレラのお出ましだ」
その言葉に、涼架は小さく肩をすくめた
やはり、練習は口実だったのだ。
彼女たちたちは、私を体育館の真ん中へと促し、円になるように囲んだ。
「 ねぇ、シンデレラってさ、義理の姉たちに意地悪されて、汚い服着て、使用人みたいに扱われるんだよね?」
涼架は黙って頷いた。
その瞬間、いじめグループの一人が手に持っていた、食べかけの焼きそばを夢主の頭上から一気にかけた。
麺が髪にからみつき、ソースが制服に飛び散る
「きゃっ…」
思わず声が漏れた私は、ただ立ち尽くすことしかできない。
いじめっ子たちの笑い声が、体育館に響き渡る
「ほら、シンデレラ、これくらいで泣いちゃ
ダメじゃん。汚れた服で、掃除する練習だよ!」
「そうそう!ほら、シンデレラってこういう役だしさぁ、練習しなきゃね!」
彼女たちは、楽しそうに笑いながら、焼きそばが散乱した床を指差した
私の顔は、ソースと涙でぐちゃぐちゃになっていた
私の心は、また音を立てて崩れ落ちていく
シンデレラの役を引き受けたのは自分を変えるためだったのに、結局、この子たちに利用されて、また弱い自分に戻ってしまったのだ
「もう…やめて…」
小さな声でそう呟いたが、彼女たちの耳には届かない
その時体育館の扉が勢いよく開いた
そこに立っていたのは、練習着に着替え、ギターを抱えた若井君だった
彼の表情は、見たこともないほど怒りに満ちていた
体育館の扉が勢いよく開けた瞬間、若井の怒りの満ちた表情が目に入り、いじめっ子たちの笑い声がぴたりと止まった。
彼女たちは、まさか若井君がいるとは思って居なかったのだろう
若井は、床に散らばった焼きそばと、ソースまみれで立ち尽くす涼架を見て、眉間に深い皺を寄せた
「何やってんの」
若井君の声は、怒りをはらみながらも、静かに低かった。
その声に、いじめっ子たちは一瞬ひるむ
すると、リーダー格の女子が、すぐにいつもの愛想笑いを浮かべて若井に話しかけた
「あ、若井君!びっくりさせちゃった?見ての通りだよ。ほら、シンデレラの劇の練習!」
彼女は、まるで当然のことのようにそう言い、嘲るような視線を私に向けた。
その目には、『そう言えよ』という強い圧力が含まれていた
私は、その視線ひ背筋が凍りつき、反射的にいつもの笑顔で取り繕うとする
「うん…そう、そうなんだ…劇の練習…だよ…」
私は、震える声でそう言うのが精一杯だった
若井side
彼女は、再び笑顔の仮面を被ることで、この場をやり過ごそうとしたのだ
若井は涼架の言葉を聞き、彼女の顔を見た
彼女の引きつった笑顔と、潤んだ瞳
それが、彼女がどれほど追い詰められているのかを物語っていた
俺は、いじめっ子たちを睨みつけると、その場に一歩踏み出した。
「ふざけんな」
俺の口から出た言葉に、いじめっ子たちの顔から笑みが消えた。
「これは劇の練習なんかじゃない。お前らがやってるのは、ただのいじめだ」
俺は、はっきり言った。
涼架side
私は、若井君が自分のために怒ってくれたことに驚き、ただただ立ち尽くした
彼の言葉は、私の壊れかけた心に、再び光を灯してくれたようだった。
次回予告
[砕け散った心]
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コメント
4件
若井さんんん!!途中から 「若井さん来てええ!たのむ!!」とか言ってたら来て大興奮です (?)
涼ちゃんがまた隠して嫌な思いをするんじゃなくて、若井がしっかり助けてくれて涼ちゃんも自分を変えようとして、2人とも頑張った!
よく言った!若井!!!お前がシンデレラをやるんだ!(?)