『痛みを負った心には愛の癒しを』〜愛情は特効薬〜
第18錠 甘やかしてこのまま
『もぐもぐ。美味しい…ベレン、凄く美味しいよ。』
『ふふっ。喜んでもらえてよかった。』
ここは食堂。今日はロノが依頼でいないので
ベレンがピザを作ってくれると朝言われた。
数時間前。
『初めまして、主様。俺はベレン。別邸2階の執事だよ。』
『初めまして。』
『早速だけど、主様の好きなピザの具はあるかな?』
『私?うーん…。バジルとか好きかな。後はトマトたっぷりで、あとチーズも好きだよ。』
『なるほど。了解。食堂で待っててね。』
『うん。』
(バジルのいい香り……。)
そして、今に至る。
『あ、口元ケチャップ付いてる。』
俺は主様の口元に触れる。
『あ、ありがと。』
『…もう慣れたみたいだね。触れられるのも。』
『え?あ、うん。みんなが優しい人って分かったから。私のことを傷つける人はここにはいないから。安心するんだ、凄く。』
『そっか。そう思えてもらって嬉しいよ。それに俺も主様と会えてこうして話せて嬉しいんだ。これからもっと沢山話そうね。』
『うん!』
(ベレン、お兄さんみたいだな。優しくて頼りになるし。一緒にいると凄く安心する。)
『ご馳走様でした。凄く美味しかった。』
『それは良かった。あ、そしたら俺のカクテルも是非飲んで欲しいな。』
『ベレン、カクテルも作れるの?』
『うん。みんなにも好評なんだよ。主様にも飲んで欲しいな。』
『うん!是非飲みたい!』
『ふふ、分かった。じゃあ今夜、別邸2階で。』
『楽しみにしてるね!』
私はニコッと微笑み食堂を後にする。
『ふふっ。最近主様笑顔が増えたね。』
『えぇ。とても嬉しいですね。』
『最初は警戒されてたっすけど…今は普通に話してくれるっすし。』
『うん!もっと仲良くなりたいな!』
(俺の抱えていた子供の時の暗い過去も……いつか貴方に話せるかもしれません。)
(誰かに愛される喜びは…私の知らないものです。)
(俺と貴方は同じ自傷行為をして自分を戒める癖がある。貴方の痛み。俺には分かるっす。)
(捨てられたくない思いも僕の気持ちも…主様ならきっと……。)
その日の夜。
『出来たよ。』
『綺麗な色…。』
『ブルドッグ。ウォッカベースでグレープフルーツジュースを加えて作るんだ。』
『強いお酒私好きなんだ。嫌なこと全て忘れられそうでさ。』
『……。カクテル言葉もじゃあ知ってる?』
『え?』
『守る。ブルドッグはカクテル言葉で守る。意味するんだ。』
『守る…。』
『もちろん、主様のことをだよ。』
『ベレン……。』
『これから先もずっと守りたい。ずっと俺の傍にいて欲しい。そしたらずっと甘やかしてあげるから。 』
ベレンは私に微笑んだ。
『ベレン…。うん。ありがとう。』
次回
第19錠 苦い対応と甘い対応







