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『痛みを負った心には愛の癒しを』〜愛情は特効薬〜
第19錠 苦い対応と甘い対応
『……。』
(無言でずっと見つめてくる…。どうすれば…。)
『…。』
(こやつは確かベリアン達が言っていた我の新しい主か。…男性恐怖症と聞いていたが…。)
『あ、えと、は、初めまして。』
『…あぁ。我の名はシロだ。馴れ合うつもりはないが、お前のことは必ず我が守る。だから安心しろ。』
『は、はいっ。』
(あれ、思ったよりいい人かな?)
『では我は別邸に戻る。』
『え、もう…?』
『自己紹介は済んだからな。これ以上の長居は無用だ。』
(他の執事と違ってすごい塩だな…でも、自分から歩み寄らなきゃだよね。)
『あ、あの!』
私はシロを引き止める。
『なんだ。』
『べ、ベレンに絵を描くのが好きだって聞いたの、もし迷惑でなければこれから一緒に絵を描かない?』
『…構わない。では庭に来い。』
『う、うん!』
シロは絵の具とその他材料を用意してくれた。
『シロは何を描くの?』
『そうだな…綺麗だと思ったものだな。』
『綺麗だと思うもの……。』
『あぁ。我はもう描き始める。お前も好きに描け。』
『は、はい!』
私はシロから少し離れた所で絵を描き始める。
そして、筆を進めた。
(シロの白い髪に…アモンの育てた薔薇園がよく映える…綺麗だな。)
私はそんなことを思いながらシロの横顔を見つめる。
『……綺麗だな。』
(お前の真剣な横顔…一体何を見て描いているのやら。だが…悪くない。)
我も筆を進めた。
数時間後――。
『描けたか?』
『あ、う、うん!』
『我が見てやろう。見せてみろ。』
『え、でも……。』
『我には見せられないのか?』
『そ、そんなこと…は、はい。』
私は絵を見せる。
『これは…我を描いたのか?』
『うん、薔薇とシロがよく映えてたから…。』
『……っ。』
シロは黙って絵を見つめた。
(お、怒らせちゃったかな。)
『はぁ、まさか同じ考えとは思わなかった。』
我は主に絵を見せる。
『嘘、私…?』
『お前の真剣な横顔が…。綺麗だと思ったから描いた。』
『っ……嬉しい。ありがとう、シロ。』
『ふ…っ。あぁ。』
(あ、笑った…。甘いなぁ…。心が満たされたような甘い感覚。)
『私今凄く幸せだと思う。』
『…案ずるな。もう……ここにお前を傷つけるものはいないからな。』
我はそう主に告げた。
『うん、私みんなと出会えて幸せ。』
『主様の笑顔が増えて良かったです。』
『ふふ、そうだね。これからもっと私たちで幸せにしよう。』
『……。』
『ミヤジ?どうしたの?』
『…いや、天気が悪くなってきたと思ってな。』
『確かに…嫌な雲だね。』
その黒い雲はまるで何かの前兆のように…
屋敷に近付いていた。
次回
最後の薬 幸せな時間を一生