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これは、阿部と目黒が家で暮らし始めて間もない頃の話。
早朝。
まだ眠っている阿部を起こさないよう、目黒は静かに家を出る。
「行ってきます。」
小さく呟いてドアを閉める。
返事はない。
それでも、寝顔を見られただけで少し安心した。
仕事へ向かう車の中。
撮影の待ち時間。
移動中。
目黒の頭の中には、ずっと阿部のことがあった。
(急に同棲することになった。)
(女の子になったばかり。)
(不安も、怖さも、全部抱えてる。)
守りたい。
誰よりも大切にしたい。
その気持ちに嘘はなかった。
でも、その隣にはもう一つの感情もあった。
(誰にも見せたくない。)
(家から出したくない。)
(鎖で繋いで。)
(俺だけのものにしたい。)
そんな自分が嫌だった。
「……重いな。」
誰にも聞こえないように呟く。
阿部にこんな気持ちを知られたくない。
怖がらせたくない。
だから目黒は、その想いを仕事で押し込めることにした。
「その仕事、俺やります。」
「映画の番宣に行きます。」
「雑誌取材も大丈夫です。」
できる仕事は全部引き受けた。
身体を動かしていれば考えなくて済む。
疲れ果てて帰れば、余計なことも考えずに眠れる。
そう思っていた。
それでも一つだけ、どうしても気掛かりなことがある。
不安定な阿部を一人にしたくない。
だから目黒は仕事の合間を縫って、メンバーに頭を下げて回った。
「お願い。」
「時間がある時だけでいい。」
「あべちゃんのところに行ってあげて。」
佐久間はすぐに頷いた。
「任せて。」
ラウールは洋服を買って行き。
康二は笑わせに行き。
佐久間はゲームに誘い。
宮舘は料理を届け。
翔太はメイクを教え。
照はストレッチを教え。
深澤は話し相手になってくれた。
みんなが自然に阿部を支えてくれている。
そのことが、目黒には本当にありがたかった。
そんな生活が何日も続いた。
睡眠時間は短くなり。
仕事は増え。
疲労は少しずつ積み重なっていく。
ある日の夜。
玄関のドアを静かに開ける。
「ただいま。」
返事はない。
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篝火

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リビングを覗くと。
ソファで、阿部が眠っていた。
勉強していたのだろう。
机には開いたままのノート。
消し忘れた照明。
目黒は思わず微笑んだ。
起こさないように近づく。
そっと前髪をよける。
穏やかな寝息。
安心しきった寝顔。
「風邪ひくよ。」
そう呟いて、ゆっくりと腕を差し入れた。
お姫様抱っこで持ち上げる。
「……軽い。」
以前より小さい身体。
慎重にベッドまで運び、布団へ寝かせる。
その瞬間だった。
不思議なくらい身体が軽くなった。
さっきまで鉛のように重かった肩が軽い。
頭もすっきりしている。
「あれ……?」
目黒は自分でも驚いた。
疲れが消えていた。
阿部を抱き上げただけなのに。
思わず苦笑する。
「何これ。」
「充電したみたい。」
その言葉に、自分で笑ってしまう。
ベッドで眠る阿部は、もちろん何も知らない。
その夜。
目黒はいつものように隣へ横になった。
少しだけ迷う。
起こしたくない。
でも、もう少しだけ温もりを感じていたい。
「少しだけ。」
小さく呟いて、眠っている阿部をそっと抱き寄せる。
阿部は目を覚まさない。
安心したように、小さく目黒の胸へ寄ってきた。
その瞬間。
また身体から疲れが抜けていくような感覚がした。
「やっぱり。」
目黒は小さく笑う。
「俺の充電器。」
その日からだった。
夜中、阿部が眠っていることを確認してから、そっと抱きしめるようになったのは。
誰にも言っていない、小さな秘密。
そして後に、メンバー全員が知ることになる「充電」という習慣の、始まり。
コメント
2件
充電☺️素敵🖤💚
読んだよ〜!!🖤💚 目黒の「誰にも見せたくない」みたいな重たい独占欲、でもそれを押し♡♡♡て仕事と阿部ちゃんの支えに必死な感じ、めっちゃ刺さった……。メンバーがそれぞれの方法で阿部ちゃんを支えてるエピソードもほっこりするし、最後の「充電器」発言がもう尊すぎて崩れた😭💕 お互いを想う気持ちがじわじわ染みるお話、ありがとうございます!続きも楽しみにしてます🌸