テラーノベル
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数日後。
目黒は仕事を終え、静かにベッドへ入った。
隣では阿部が規則正しい寝息を立てている。
起こさないように、そっと腕を伸ばす。
優しく抱き寄せる。
「……充電。」
誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。
阿部の体温が伝わる。
不思議なくらい、それだけで今日一日の疲れが少しずつほどけていく。
(やっぱり落ち着く。)
目黒は安心したように目を閉じた。
しばらくして。
ふと違和感を覚える。
(……あれ?)
いつも聞こえてくる、小さく穏やかな寝息が聞こえない。
目黒は一気に目を開いた。
(まさか。)
(苦しかった?)
(俺、強く抱きしめすぎた?)
(壊しちゃった……?)
血の気が引く。
慌てて腕の力を緩め、阿部の顔を覗き込む。
「……あ。」
目が合った。
阿部は少し眠そうな顔で、じっと目黒を見ていた。
「ご、ごめん!」
目黒は飛び起きる。
「起こしちゃったよね!」
「苦しかった?」
「どこか痛くない?」
矢継ぎ早に聞く目黒を見て、阿部はくすっと笑った。
「大丈夫。」
目黒は胸を撫で下ろした。
「よかった……。」
その安心した表情があまりにも素直で、阿部は少しだけ笑みを深める。
「めめ。」
「ん?」
「最近。」
「毎日こうしてるよね。」
目黒は少し固まった。
「……バレてた?」
「なんとなく。」
「朝起きると抱きしめられてるから。」
目黒は恥ずかしそうに視線を逸らす。
「ごめん。」
「勝手に。」
「嫌だった?」
阿部は首を横に振る。
「嫌じゃないよ。」
その言葉に、目黒は少しだけ安心した。
「実は。」
目黒は照れくさそうに笑う。
「変な話なんだけど。」
「うん。」
「ハグすると。」
「充電されたみたいに元気になる。」
阿部は目をぱちぱちさせる。
「充電?」
「うん。」
「仕事でどんなに疲れてても。」
「こうすると。」
「疲れがなくなる。」
「本当に。」
「自分でも意味分からないけど。」
「だから。」
「つい。」
阿部は静かに話を聞いていた。
目黒は少し申し訳なさそうに続ける。
「勝手に利用してるみたいで。」
「ごめん。」
しばらく沈黙が流れる。
そのあと阿部は優しく微笑んだ。
「だったら。」
「これからも充電していいよ。」
目黒は驚いたように顔を上げる。
「いいの?」
「うん。」
「めめが元気になるなら。」
「いくらでも。」
その笑顔に、目黒の胸がじんわりと温かくなる。
「ありがとう。」
そう言って、今度は起きている阿部をそっと抱きしめた。
腕の中の温もりは、やっぱり安心できる。
でも。
抱きしめ返してくれる阿部の腕は、少しだけ力が強かった。
その小さな変化に、目黒は気づく。
(……あ。)
阿部は何も言わない。
「寂しい」なんて、一言も口にしない。
けれど。
自分は仕事ばかり。
会えるのは夜だけ。
(もしかしたら。)
(少し寂しかったのかもしれない。)
そう思った瞬間、胸が締めつけられた。
自分は「守りたい」と言いながら、一番そばにいてほしい時にそばにいられていなかった。
目黒は阿部の髪を優しく撫でる。
(仕事。)
(少し減らそう。)
(もっと一緒にいる時間を作ろう。)
その決意は、誰にも言わなかった。
ただ心の中で静かに誓う。
「おやすみ。」
小さく囁くと、阿部も目を閉じたまま微笑む。
「おやすみ、めめ。」
今夜の充電は、いつもより少しだけ長かった。
けれどそれは、疲れを癒やすためだけではなく、お互いの寂しさを埋めるための、優しく温かな時間になっていた。
kaede🍁
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#💛💜
みら

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コメント
3件
読了しました。この「充電」という言葉の使い方が本当に心地よくて、目黒さんの「バレてた?」の恥ずかしそうな反応に思わず頬が緩みました。そして何より、阿部さんが抱きしめ返す腕の力が少し強かったという描写…あの一瞬で、言葉にしない寂しさが全部伝わってきて胸が締めつけられました。お互いを思いやりながら、静かに距離を縮めていく空気感がとても美しかったです🌷