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学校に着いてみれば、やはり人は少なくて、居ても高橋と森沢を含め、五、六人程度だった。
「人、全く居ないですね」
「そりゃあ、こんな早くについたんじゃ居るやつは少ないだろ」
歩きながらチラリと森沢を見る。 少しボサッとした髪型や雑に結ばれたネクタイ、優しそうな垂れ目とキラリと光る眼鏡。 まるで同級生と登校してるみたいだ。と高橋は静かに思っていた。
「それじゃ、俺は職員室に行くから、お前も早く……とは言わねぇけど、ちゃんと教室に行くように」
「はい、また後ほど」
下駄箱で森沢先生と別れを告げ、高橋は話す相手がいなくなったことを少し寂しく思いながら、教室に向かった。
教室に入るとそこには誰も居なくて、一番乗りだ、と少し嬉しく思った。でも、教室には本当に誰一人居なくて、さっきまで居た森沢先生も居なくて、
「なんだか、世界から俺以外が消えたみたいだな」
なんて、そんなことあるわけがないのに、まるで、本当に皆が自分の世界から消えてしまったような気がして、少し、ほんの少しだけ、高橋は怖くなった。
すると、廊下の方から誰かが吹き出す声が聞こえた。誰か、と言っても、高橋にはこれが誰の声かがすぐに分かった。
「おい、そこに居るだろ」
よーちゃん。
そう言うと彼はすぐに姿を出した。
「いや、だって、翔が面白いこと言ってるから」
笑いを堪えながら言うよーちゃんに腹が立つ。ムッと顔を顰めて、いかにも不機嫌です、という感情を出すが、よーちゃんという人物はそれすらも笑っていた。
高橋の前で腹を抱えて笑っているのは村雨 陽太、太陽と雨、二つの天気が入った少し変わった名前の同級生であり、高橋が夢で話しかけた友達でもあった。