テラーノベル
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「だいっ、きらいだぁ……っ!」「……大嫌いです、あなたなんか」
照明が戻り、すっかり明るくなった廊下で、フランスは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしたまま、子供のように床を叩いて叫んだ。対するイギリスも、アメリカの胸に預けていた身体を少し起こし、近視の目を細めながら、いつもの冷ややかな声音で、けれどどこかホッとしたように言い返す。
「ぶりがずううう……っ、う、うう……」
「……泣きすぎて名前が噛んでますよ、フラカス」
「うわぁぁぁん! 君の分まで、泣くのおおお……っ!!」
フランスはもう、ベレー帽もオッドアイの秘密もどうでもよくなったのか、両手で顔を覆ってさらに声を張り上げた。
何百年経っても、この頑固者が心を殺して笑うなら、自分がその仮面を涙でふやけて剥がれるまで泣き喚いてやる。それが自分の役目だと言わんばかりの、全力の大号泣。
そのあまりにも必死で、あまりにも自分勝手な優しさに、イギリスの口元から、ふっと張り詰めていた緊張が完全に消え去った。
「……ふふっ。頼んで、いません」
それは先ほどの張り付いた笑顔ではない、声から漏れ出た、心からの小さな、愛おしそうな苦笑だった。
「うるさぁぁぁい!!! 頼まれてなくても泣くの!!! ううう、ブリカス、ばか……っ!」
フランスが耳を真っ赤にして叫び返すと、イギリスは呆れたように片眉を上げ、そっと目を閉じた。
(……本当に、うるさい男です)
心の中でそう毒づきながらも、イギリスの胸の奥は、懐かしい温かさで満たされていた。
差し出された手を、フランスは「Ju(僕)」の恐怖に怯えながらも、最後には自分の右手でしっかりと掴んでくれた。
「……おいおい、感動の再会か? 喧嘩か? どっちかにしてくれよ」
アメリカがポケットからイギリスのモノクルを取り出し、「ほら、親父」と手渡す。イギリスはそれを受け取ると、普段の左手で慣れた手つきで右目に嵌め直した。薔薇と長方形の飾りが、定位置に戻って小さく揺れる。
「……国連が来る。ここでの醜態は、あいつには見せない方がいいな」
ソ連が自分の冬のオーバーコートをバサリと翻し、立ち上がるフランスとイギリスの背中を、背後から見えないように大きな体で隠した。両利きの手をそれぞれ二人の背中に添え、優しく会議室の方へと促す。
「フランス」
イギリスは隣を歩くフランスを、モノクルの奥の蒼い瞳で見つめた。
「……会議室に戻ったら、あの、ゲーム……もう一度やらせなさい。今度は完璧に叩いてみせます」
「はぁ!? 君、まだそんなこと言ってるの!? まずは寝なよ! ほら、僕のジーパンのポケットに林檎飴とか蜂蜜とか入ってないかチェックして……あ、アレルギーだからダメじゃん!」
「……やはり、あなたはバカですね」
「なんだとフラカス!!」
「ブリカスです、フラカス」
まだ涙の跡が残るオッドアイを怒らせるフランスと、少しだけ自信を取り戻して、いつものように指示を出し始めるイギリス。
二人の、いつもの、けれど誰にも踏み込めない特別な距離の喧嘩の声が、明るくなった廊下にいつまでも響いていた。
コメント
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ううっ……第14話、すごく良かったです……!フランスの「だいっきらい」からの大号泣、心臓がぎゅってなりました。イギリスの「頼んでいません」って言いながらも、あの張り付いた笑顔じゃない、心からの苦笑……あれがね、本当に特別な距離感で。ソ連が二人の背中を隠してくれた描写も優しくて泣けました。ブリカス呼びの掛け合い、懐かしさと温かさが戻ってきて……「おかえり」ってタイトル、まさにこれだなって。さかなさんの描く執着系の優しさ、大好きです🥀
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