テラーノベル
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放課後、リンクは教師の指示で寮へ案内された。校舎の裏手にある寮は、校舎と同じく無機質で整いすぎた建物だった。
廊下は静かで、足音がやけに響く。
「ここが君の部屋だ」
そう言って案内役の教師は、特に何も気にする様子もなく去っていった。
鍵は最初から開いている。
リンクは部屋に入り、すぐに中を確認する。
ベッド、机、クローゼット。隠し場所には困らない。
まず、ハイリアの盾。
布で包み、クローゼットの奥、見えない位置へ立てかける。
次に、獣神の弓と古代兵装・弓。
分解はできないが、布で覆い、ベッド下の影へ滑り込ませた。
これで、外からは分からない。
マスターソードだけは別だった。
リンクはそれをポーチの中に収めたまま、腰に残す。
理由は明確ではない。ただ、離す気になれなかった。
「……」
部屋に座り、息を整える。
ここまで来て、敵意も罠も感じない。
剣を抜く必要も、盾を構える必要もない。
――平和すぎる。
シーカーストーンが、控えめに光った。
《寮に入ったのですね》
ゼルダの確認は続く。
《周囲に異常は?》
『なし』と、リンクは返す。
《装備は隠した。今のところ安全そうだ》
しばらくして、ゼルダから返答が届く。
《引き続き注意を。原因はこの世界そのものにある可能性があります》
《無理はしないでください》
リンクは短く頷き、通信を切った。
夜。
消灯の時間が来ると、寮は一斉に静まり返った。
遠くで誰かの足音がした気もしたが、すぐに止む。
リンクはベッドに横になり、天井を見る。
異常はない。
怖さもない。
それでも、ポーチの中のマスターソードだけが、わずかに重く感じられた。
――剣は、眠らない。
リンクはその感覚を気に留めることなく、目を閉じる。
こうして、fpeでの最初の一日は終わった。
何も起こらず、何も欠けていないように見えたまま。
そして――
何も知らないまま、明日を迎える。
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