テラーノベル
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翌朝、寮の鐘が静かに鳴った。
リンクはすぐに身支度を整え、ポーチを確かめる。
マスターソードは、そこにある。
他の装備も、昨夜隠したまま動いていない。
問題はない――そう判断して、教室へ向かった。
この日は総合テストの日だった。
ミス・サークルが問題用紙を配りながら、淡々と告げる。
「円滑に進めます。私語は禁止。実力を見せなさい」
リンクは紙に視線を落とす。
数式、図形、論理問題。
どれも、戦場で瞬時に状況を把握してきた彼にとっては、静かすぎる問いだった。
迷いなく書き進める。
筆が止まることは、一度もない。
次の教科は、ミス・ブルーミー監督の知識テスト。
「緊張してる? 大丈夫よ、深呼吸して!」
彼女は明るく言いながら、リンクの答案をちらりと見て目を丸くした。
「……え? もう全部終わってる?」
リンクは小さく頷く。
「すごいわね……。転入してすぐで、これはなかなかよ」
周囲から、ざわりとした空気が広がる。
ジップが小声で言った。
「なあリンク、お前ほんと何者だよ」
「……普通だ」
リンク自身は、本気でそう思っていた。
最後は、ミス・サヴェル。
教室全体を静かに見渡しながら、ゆっくりと言葉を落とす。
「これは理解力を見るテストだ。正解だけでなく、思考過程も重要になる」
リンクは文章を読み、問いの裏にある意図を正確に掴む。
答えは、自然と導かれた。
提出された答案を見て、ミス・サヴェルは一瞬だけ目を細めた。
「……よく読めているな」
それ以上は何も言わなかったが、その一言は評価だった。
放課後。
職員室の前で、リンクは呼び止められる。
「リンク」
ミス・サークルだった。
「全教科、満点だ。計測上の誤差もない」
「……そうか」
「謙虚だな。だが、それは事実だ」
少し離れた場所から、ミス・ブルーミーが声をかけてくる。
「これからも期待してるわよ! 無理だけはしないでね」
ミス・サヴェルは、最後に一言だけ残した。
「観察力は武器になる。使い方を誤らなければな」
リンクは意味を深く考えず、頷いた。
その日の終わり。
教室では、完全に「優等生の転入生」として認識されていた。
誰も疑問を持たない。
誰も、欠けたものに触れない。
リンク自身も同じだった。
この世界のテストは、あまりにも簡単だった。
――それが、何を測っていないのかも知らずに。
ポーチの中で、マスターソードは静かに重さを保っていた。
まるで、その時を待つかのように。
偽物の平穏編 ー完ー
実力行使編 に続く
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